冒険者ギルド!

「ここが冒険者ギルドか?」


しばらく大通りを歩いて、やっと冒険者ギルドにたどり着いた。


ギルドは街の中央近くに建ってる。 見た目は三階建ての建物だ。


煉瓦と材木でできてて、けっこうがっしりした作りに見える。


両開きの扉をくぐると、お酒の匂いが鼻に入ってくる。 人間、エルフ、獣人など、いろんな種族が集まって、楽しそうに笑いながら他愛のない話をしてる。


なんか恐ろしい。


しばらくギルド内を見てたら、ようやく冒険者登録の窓口らしきカウンターを見つけた。 俺はそこへ向かう。


近づいたらカウンターの向こうに俺と同い年くらいに見える若い受付嬢が一人いて、何か書き物をしてた。


そんな受付嬢は俺がいるのに気づいて書くのをやめて顔を上げて、眩しい笑顔を見せてきた。


「こんにちは。初めてのお方ですか?」


満面の笑顔で聞いてきた。


なかなか魅力的だ。


「あぁ、冒険者登録したいんだけど…」


「はい! かしこまりました。じゃあこちらにおいで。まずはこの用紙を記入してくださいね」


「はい」


彼女はそう言って、俺にインクのついた羽ペンと用紙を一枚渡した。 それを手に取って、俺は名前や年齢など、必要事項を記入して返した。


「これで大丈夫ですか?」


受付嬢は用紙に一通り目を通した。 すると確認し終わると満足気に頷いた。


「はい、必要事項の記入はバッチリです。名前はカエデ、種族は人間。年齢は18歳。職業は魔法使い。合ってますか?」


その受付嬢の確認に、俺はうなずく。


それを見て微笑む受付嬢。


「それではカエデさん。冒険者に適しているかどうかを確認するために、ちょっとした試験を受けてもらいますね」


おっと。 これは初耳だ。 冒険者になるために試験を受けなきゃいけないの? アレンさん、なんで何も言ってくれなかったんだ。


「わかりました。えっと、何の試験ですか?」


俺がそう聞くと、受付嬢さんは微笑んだ。


「はい! 冒険者申込書によるとカエデさんは【魔法使い】ですよね? 魔法使いですから、魔力の密度を判定する試験を受けてまらいます」


「魔力の密度を判定する試験?」


なにそれ? なんでそんなことをやらなきゃいけないの? そのまま受付嬢に聞くと、受付嬢は答えてくれた。


「魔法使いや魔法を使う職業は自分の魔力の密度を知った方が大事ですよ? 魔力の密度によって使う魔法やその威力、消費量、強化効果などが変わりますから。自らの限界を知るのがいいと思いますよ。そのための魔力判定試験です」


だったら俺の魔力量は7890だよ? 自分に言わせれば結構高い数字だと思うけど、まあいいや。


「はい、わかりました」


俺が言うと、受付嬢は満足気な顔をして話を続ける。


「その後は戦闘力を確かめるための模擬戦ですね」


魔力判定試験に模擬戦か? ってことはあれか? もし俺が剣士だったら、魔力判定試験を受けずに模擬戦だけやって冒険者になれたの?


今更職業を剣士に変えてもいいのかな? いや、ダメだ。 別に、魔力判定試験を受けるのが嫌だというわけじゃないし。


ただ俺はもう自分の魔力量を知ってるから必要ないんだよな、って思ってただけ。 まあでも、試験は試験だし。 さっさと終わらせようか。


「ちなみに受付嬢さん…」 俺が躊躇いながらも聞くと、受付嬢さんはその裏のメッセージを理解したのか、「あ、やばい!」と言わんばかりの顔をして言った。


「あ、自己紹介が遅れましたね。申し訳ありませんでした。私はエレンと申します」


「はい、エレンさん。ちなみに、エレンさん……」


「はい、なんでしょう?」


「この試験、いつ受けられるんですか?」


俺が聞くと、エレンと呼ばれている、なかなか可愛い受付嬢が答えてくれた。


「はい!受験料さえあれば 試験はいつでも受けられますよ」


受・験・料?


俺の全財産がたった1000Eだけど?


「えっと……」


そう、戸惑いながら言い始める。


「ちなみに、受験料は…おいくらですか?」


その質問を聞いてエレンが眩しい笑顔を見せながら答える。


「15000Eです!」


…………そんなお金持ってないんだけど?


「高いな」 そう苦笑しながら言う俺。 いやとんでもない金額だ。 これは困ったな。 冒険者試験を受けるために15000Eを払わなきゃいけない。 でもそんなとんでもない金額を払っても冒険者になるのが確定じゃない。


どうしよう? 諦めて農家になる? とは言っても土地を買うお金がないんだ。 冒険者になるためのお金もない。


ってことは、お金を稼がなきゃいけないわけ…か。


えっと……お金を稼ぐ方法は?


ちょっと待ってぇ。考えろ、自分。 確かゲームで魔物を倒したらお金をもらえたよな。


記憶が正しければな。


……たしか、街付近には草原があったな。


あそこに行って魔物を倒しまくってお金を稼ぐのはどうだろう。 それはさすがに時間がかかるけど、他にやれることはないかも。


「えっと、すみません。複雑そうな顔をしてますけど、大丈夫ですか?」


受付嬢に話しかけられると、我に返った。


「あ、はい。大丈夫です。ただ……今ちょっとそんな大金を持ってないんですが」


俺が真実を言うと、エレンさんは頷いた。


「なるほど。じゃ、どうします? 冒険者申込書を没にしますか?」


エレンが聞くと、俺は慌てて首を振って断った。


「いやいや。えっと、ちょっと今から魔物を狩りに行ってくるかなって思ってまして。必要なお金を稼いだらまた戻ります」


俺の言葉に、エレンの表情が一気に明るくなった。 なんだ? その反応は?


「あ、そうなんですね」


「うん、大丈夫、かな?」


この世界のルールはまだイマイチわからないな。 冒険者でもない俺でも魔物を狩ってもいいのかなって。


それを確認するためにエレンに聞いた。


「うんうん、全然大丈夫ですよ!」


でも杞憂だったみたい。


それにしてもテンション高いな、エレンさん。 まあでも、別にいいか。


「恐らく1時間で戻ると思います。待ってて、エレンさん」


「はい。お待ちしております!」 と、そんなやり取りをすると、俺はギルドを後にした。 さて、魔物を狩りに行ってくるか。

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