街イマゼン、到着。
予想通り1時間後、俺は無事に街へと到着していた。
「マジでRPGだな」
そう言いながら俺はたどり着いた街を見る。
周囲に広がっている風景は、ファンタジー系のゲームなどでよく見かける、いわゆる中世風の街並みだった。
青空を流れる白い雲の上に、煉瓦でできたビルが幾つかそびえ立ち、大通りでも古めかしいコンクリートで舗装されている。
街を取り巻いているのは、おそらく高さが20メートルありそうな門。
そしてその門には『イマゼン』と大きな文字で書かれている街の名前が見える。
……ってすでに読めるか、異世界語?
と言っても、この街に来る前に恐らくこの世界であろう本をたくさん読んでいたなぁ。
一見して日本語じゃないということがわかるけど、日本語で書かれたように普通に読むことが出来た。
ってことは、会話するのもそんな感じか。
異世界語で話しているが、俺だけが日本語に聞こえるという。
そう、考え事に耽っていると、話しかけられた。
話しかけてきたのは、やや若い男。
見た目は……やっぱファンタジーゲームや小説に出てくる冒険者というのがピッタリ。
「見たことのねぇ顔だな、お前さん。もしかしてここに来るのはじめて?」
この世界に来るのはじめてなんですけど?
「ああ。初めてだな。ついさっき到着したとこ」
相手はタメ口で話しかけてきたからタメ口で返すことにした。
「さっき? ……よくこの時に、イマゼンまで無事にたどり着いたな……。最近、この辺でドラゴンが出現し始めててな」
あれ?
じゃあ森の中のあのドラゴンって、もしかしてあれか。
そう考えると、目の前の冒険者は言う。
「おっと、自己紹介が遅れたな。俺はアレンだ。この街で剣士をしている」
「俺は楓だ。職業は………大賢者」
しばらく考えると、俺は返す。
龍の末裔はさすがに言えないよな。
自分だって龍の末裔について詳しく知らないし。
「大賢者?」
すると俺の職業を聞いて、難しそうな顔をするアレン。
「……大賢者って、聞いたことのない職業だな」
おいマジ?
知らんのか、大賢者って?
それはちょっと、意外だな。
こりゃ、どうしょかな。
大賢者を知らないっていうのはさすがに不都合だ。
まあ、大賢者は俗に言うと魔法使いっていうんだから魔法使いにしようか。
「大賢者は…魔法使いってこと。俺の故郷でな、そう呼ばれている」
俺はそう言うとアレン納得しそうな顔をしながら頷く。
「あ、そういうことか。もしかして、お前さんって冒険者やってる?」
「いや……」
と、そこで俺は口を閉じる。
そうか。
良く考えれば、これからこの世界でいきていくのならば安定した収入源が必要だな。
まあ、別に冒険者になってもいいかな。
MAXじゃないが、割とレベルが高いから何とかなるでしょ。
「ううん、俺の故郷には冒険者ギルドがないからここに来た。故郷はただの農村だから」
俺がそういうと、なるほどなるほど、と言わんばかりの顔でアレンは頷く。
「まあ、そりゃそうだなぁ。お前さんみたいなやつらが結構冒険者になる為にここに来るなぁ。うん、じゃあこれ、あげる」
アレンが言うと、腰を巻き付けるポーチに手を入れてしばらく探ってから何か脆そうなもの取り出して俺に手渡した。
俺はそれを受け取ると、見る。
「これがこの街のマップだ。ここにはじめて来る者にマップを渡すのも俺の仕事の1部だから受け取ってくれ」
そう言うと、歯を見せながら眩しい笑みを浮かべる。
なんといい人だな。
マップは要らないけど、まあ、受け取ってこようかな。
「ありがとう、アレンさん」
そう礼を言うと、アレンは不機嫌そうな顔をする。
「いいって。あとさんは付けなくてもいいよ」
あ、そういうことか。
あんまりそういうことが好きじゃないな。
じゃあ、お言葉に甘えて。
「あ、はい。わかった」
そう言うと、後ろから誰かの声が聞こえた。
「おい! アレン! お前なにやってんの? サボってんじゃねぇ早く仕事に戻れ!」
おっと。怒られちゃった。
そりゃすまねぇ。
「うっせ、リン! お前と違って俺ちゃんと仕事してんだから首突っ込むんじゃねぇ」
なんだ。
友達か。
と、そんなことを思うとまたアレンか何を言っていることに気づいた。
「じゃあ、俺、仕事に戻るからお前さん門を通してもいいよ」
アレンがそう言う。
「あ、はい。いろいろありがとうな」
そして俺はまた礼を言った。
「いいって。仕事なんだから。お前の健闘を祈るぜ」
そう言うとアレンは、どこかへと走っていった。
すると取り残された俺は、ため息をつく。
そうか。冒険者か……
やっぱり結局冒険者になるんだな。
まあでも、そりゃそれで別にいいけど。
思うと、俺は門を潜って街に入った。
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