ここは森ですけど?
さて、なんか食いもん探そうか。
建物を出ると、はじめて目にしたのは森の風景だった。
日差しは葉の茂った木々により遮られているが、見るところ日が沈むまでまだ時間がたっぷりありそうだ。
それにしても………
グルル………グルル。
めっちゃ腹が鳴ってる。早くなにか食い物を見つけないと死にそうなくらい腹が減ってるんだ。とりあえず街に行こうか。 ……幸いなことに、インベントリには【世界地図】というものが入っているからそれを見て一番近い街までの方角を見ることができる。
と言っても、どうやって地図を見れるんだろう。ポケットに何も入っていない。
ってことは、
ふと、 試しに頭の中で【世界地図】を言ってみる。すると目の前には半透明な地図が現れる。
やっぱり。まじでゲームみたいだな、この世界。 さてさて。 地図によると、一番近い街は……どうやら【イマゼン】と呼ばれるところみたい。 このまま道なりに進めば森を抜けることができる。
そうするとさらに道なりに右へと進むと到着。 いまから歩き始めたらおよそ1時間かかるだろう。
うん、確かに【イマゼン】っていうところは一番近い街だな。 だけど1時間もかかるなんて、ちょっと気に食わないなぁ。 だって、こっちはものすごく腹が減ってる。 この空腹を耐えられる自信がないんだ。
「はぁ〜」 と、ため息をつく俺。
しかたない。狩ろうか。
どこかで木の実とかが落ちていないかな。 とはいえ、やっぱり肉が欲しい。 前世ではやったことないが、ネットを使って一応狩りについていろんなことを学んでいたんだ。
子供のときから物覚えがかなりよかったので、きっちりとその情報がまだ記憶に残ってる。 ハンティングナイフや弓矢がないっていうのはちょっとアレなんだけど、獲物を魔法で仕留めてもいいから狩ることができる。 問題は獲物を仕留めたあとの解体。
ナイフがないから解体はできないんだが。 ………まあ、魔法をいっぱい覚えてるからなんとかなるだろう。
そう、思った瞬間だった。 風が一気に強くなり、近くにあった木々がまとめて吹き飛ばされる。 そして俺も一緒に吹き飛ばされる。
「は……?」
風圧に潰され、一瞬息ができなくなる。 そしてほぼ水平に吹き飛ばされた俺は、木に衝突して止まる。
視線が暗転し、頭がくるくるする。 それに加え、背中を痛みが走る。 幸いなことに、俺はまだ生きているんだ。
アリアが与えてくれた命をこんな序盤に落とすわけにはいかない。 と、そんな思考を遮って、俺を吹き飛ばした存在が、破壊し尽くされた森から姿を現した。
──ドラゴンだ。
真っ赤な鱗が太陽の光に包まれてきらきらと輝いている。
それに、さすがはドラゴンだけあってそのサイズも大きい。 おそらく体長は10メートルありそうだ。
「嘘……だろ」
なんでこいつがここにいるんだ?
確かドラゴンは普段、山の奥深くに籠城しているはずだが。 ここは森だよ? 山じゃないよ? なんでお前が森の中にいるんだ? そう不思議そうに思いながら俺は立ち上がる。
ドラゴンはしばらく森全体にその大きな目を走らせると、やっと俺に止まった。 明らかに敵視してるな。
「まあいい。こうなったら戦うしかないんだ」 ついでに美味い肉もゲットしよう。 自信を持つのはいいことだけど、自分の力を過信すると痛い目に遭う未来しか見えない。 今の俺のレベルは99。
鑑定というスキルを使ってドラゴンのレベルは80だとわかった。 レベル的には俺の方が勝てるけど、ドラゴンは神に匹敵する力を持っていると言われている。
と言っても、さっき“読んだ”本によると、ドラゴンの種類はいくつか存在する。
見るところ、今目の前にいるドラゴンはそんなに強くなさそうに見える。 おそらく下位龍だろう。
下位龍だからこそもちろんその力もそんな大したものじゃない。 だったらこれ、勝てるよな? 充分な威力を持っている魔法を使ったら勝てると思う。
もちろん、戦闘中に魔法の画面を開くことができない。 幸いなことに、覚えている魔法の大半をもう暗記してる。
一番威力が高そうな魔法だと言うと、やっぱり「あの」魔法だろ? 問題は魔力消費。 もし1発でこいつを仕留めないと、大変なことになるだろう。
まあでも、しかたない。 体内を流れる魔力に集中すると、俺は息を整える。
すると「あの」魔法を使うための魔力量を体外に引っ張り出して、その魔力を手のひらに流通させる。
全身が痛みに襲われているが、それを無視して魔力を練ることに集中する。 溢れ出る、圧倒的な魔力。
やはりこれ程の魔力を制御するのは難しい。 正直に言うと、かなり危ないと思う。 しかしここまで来たからには、死にたくないという気持ちが強く意志を強化している。
それは例えドラゴンが相手だとしても、与えられたばかりの命を落とすわけにはいかない。
ドラゴン目掛けて手を伸ばすと、1点に集中させた魔力を大きな爆発にして放つ。 「全てを焼き尽くせ、【殲滅の猛火】!」 と、俺がそう唱えた瞬間………視界が、白く染まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます