言ノ葉彩り

おるだ

第1話

『ねぇ知ってる?3年C組の魔女の話。』


秋澄あきすみ先輩の事だよね。でもなんで魔女って言われてるかは知らない』


『他の先輩達が見たんだって、学校帰りに秋澄先輩が何かと喋ってたって…』




一魔女、それが私のあだ名だ。

暗くて、薄気味うすきみ悪くて、いつも自信が無い…。

いつも行く学校へ行く道。

毎日凝りもせず私をつけ回して楽しむ人達がやってくる。

『…5秒後には後ろから思い切りカバンで叩かれる。』

バシッ!!

思い切り後ろか背中を叩かれよろめいてしまう。


「おっはよぉ魔女今日もくらいねぇ!」

「…お、おはよう」


同じクラスの女子達が私を囲む。


「はっ!魔女ごときが私に挨拶するなんて…」


がっと顔を捕まれ顔を近ずけて来る。


「アンタと私は同等じゃないのよ。玩具おもちゃは玩具らしくビクビクしてなさい。」


女リーダー初め私を見てケラケラ笑う。


「それじゃあ学校でね。早く来なさいよ?私達喉乾いてるからちゃんと飲み物も買ってくるのよ?」


笑いながらその場を去っていく。

こんな場面でも何一つ言い返せない…。

学校に行けばあの女子達に会う、魔女魔女と言って必要に追いかけ回しお金や私の私物を持っていく。殴られたり蹴られたりもしょっちゅうあるけど私が我慢すればいいだけ。

家に帰っても1人暮しだし私は親に捨てられてしまったから相談もできない…。

『化け物っ…!』

ふと親に言われた言葉を思い出した。

言葉は人を縛る呪い…私は化け物だ。

1つだけ思うとしたら私は、


「この時代から消えたい…。」


涙で潤んだ目で前がぼやけている。

泣いたら負けだと思い涙がこぼれないように瞼をぎゅっと閉じる。

ピリッと頬に痛みが走った。

頬の痛みを不思議に思い目を開けてみた。


「え……」


私の目の前に見慣れない服を着て傷だらけの男が刃物を首に突きつけていた。


「ここまでだ…巴御前ともえごぜん…。」


『とも…え…誰のことを言ってるの?まさか私!?』

目の前の状況に混乱していても時は止まらない。

ギラリと鈍い光に目をやる。


「か、刀だ…」


その刀がゆっくりと上に上がっていき男が刀を構えた。


「待って!私は巴御前なんかじゃない人違いよ!」

れ言を…その薙刀なぎなたを前にして違うと言うか!」


男が目で指した方向に薙刀はあったけどこんなの私は使った事がなければ触った事もない。


「そんな事言われてもそれは私のじゃないの!」


命の危機が迫っていると言うのに自分でも驚くほと大きな声で人と話している。


「もうよい!巴御前、覚悟!」


振り下ろされる刀が嫌にゆっくりに見えた。

死の恐怖が迫る中『化け物』と言う親の声が頭に響いた。

…そうだ私は化け物だ。

言葉で森羅万象を縛る力を持つ化け物だ。

そう自分に言い聞かせた瞬間、血がカッと熱くなるのを感じ唱えた。


「吹き荒べ」《ふきすさ》


刀が頭に届く前に男の周りに風が激しくあたる。


「くっ…こんな風如きに!」


男は身体が飛ばされないよう地面に刀を刺し耐えている。

私は男が地面に刺した刀に向かって唱えた。


「浮け」


風が吹き荒れる中するりと抜ける刀に男は目を大きく開いたが必死に刀にしがみついた。


「そなたもしや言霊ことだま使いか!」

「これが言霊使いなのかは知らないけど、万物ばんぶつを言葉で縛って操る事ができるの私。」


この力を知ってこの男も私の事化け物って言うのかな…。


「すまない。ちゃんと話をしよう!だから風を止めてはくれないだろうか。」


そう言う男の顔に戸惑いの色が見えた。

私は風を止ませて男をゆっくりと地面に立たせる。


「風を止ませてくれた事感謝する…。よく見たら巴御前ではないし不思議な着物をまとっているな。」

「あなたこそ日本の古い服着てるじゃない。コスプレイヤーかなにかなの?」


私も男をよく見たら甲冑かっちゅうを来ていて泥まみれになっている。

なんと言うかモデル見たいな顔してかっこいい…。


「こす…?とは知らぬがここは戦場だ、女が1人で来ていい所ではないぞ。」


男の後から凄い勢いで何かが走ってくるのがわかった。

男は私を背に隠して刀を構えた。

馬だ。馬がこちらに向かって走ってくる。


「義経様!ご無事でしたか!」


男が安心して刀を下ろすと馬に乗っていた男も降りてきた。

…それより義経って今言った?


源九郎義経みなもとのくろうよしつね…」


声が掠れて出しにくい、それに何だか体も重くなって…

「おい!しっかりするんだ!」

誰か揺さぶってるけど凄く…凄く疲れた…。

そうして私の意識は暗闇の底に落ちていった。

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