ピーター 3


 び、びっくりしたぁ……。

 子供子供とか思ってたけど、あんな色っぽい表情も出来んのかよアイツ。


 思い出すのは至近距離で見たアリスの顔。

 いつもの小さくてかわいい感じではなく、明らかに大人の女の顔をしていた。


 俺ももう28歳。何もわからない子供じゃない。

 アリスが言いたいことも察せる大人だ。


「……気ぃつけよ」


 次に二人っきりで酒を飲むと俺は貞操を失いそうだ。

 ゴクリとワインを飲み、俺は何も掛けずに寝てしまったアリスに近づく。


「《浮遊魔法(フローティング)》」


 アリスを魔術で持ち上げ、ベッドのフワフワな布団をめくり、ゆっくりと下す。

 そして、可愛い寝息をたてる彼女の上に優しく布団をかけてやった。


 俺はソファを移動させ、赤く染まった可愛い寝顔を見つつ、ワインを飲む。


 出会ってまだ一ヶ月も経っていない。

 互いの事なんてほとんど知らない。

 それでも適当になんとなく一緒に居ることはできた。


「つっても、いつまでもこのままって訳にはいかないか」


 いつまでも変わらない関係なんぞあり得ない。

 目的の無い旅だっていつかは終わりがくる。

 ハンプティ・ダンプティ兄弟を倒したから安心という事も無いんだろうしな。


 変わりゆく世界にいる俺らは一日ごとに変化する。

 良い方にも、悪い方にも……。


 可愛いとしか思っていなかったアリスの寝顔を見て、俺はふいに顔を逸らす。

 そんな自分の気持ちを隠すようにソファを元の位置へと戻し、再び飲み直す。


 あんまり記憶がなくなるほど飲むような性格じゃないけど……、今日ばかりは昨日までの気づいていなかった自分に戻りたくて、開けたワインを飲み干した。










「ん?」


 寝る前に歯を磨き、顔を洗ってベッドに向かうと、部屋の窓の外に一羽の青い鳥が留まっていることに気づく。

 気分よく酔っている時に来ないで欲しい。


 俺はベッドに背を向けて、ドアの方へと歩き出した。

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