第4話


「服屋にアクセサリーショップに武器屋に飯屋。いろいろあるな」

「あ!あっちにコーニー・ホールで見たような露店もありますね」


 アリスが指さした先にあるのは大通りの先にある広場。

 そこには碁盤目状に露店が立ち並び、多くの人で賑わっていた。


「凄い人ですね」

「(迷子になるから)手を離すなよ」


 アリスの手にギュッと力が入る。

 いや、ちょっと強い。痛い。


「アリス、そこまでぎゅっと握らなくていい」

「子ども扱いはやめてくださいって言ってますよね?」

「満面笑顔で威圧すんのやめて。わかったから。わかったからお嬢様。気をお静めください」

「どういう機嫌の取り方ですか」


 アリスの手から力が抜け、程よい力に戻る。

 気を取り直して、デートへと戻る。

 最初の行き先を考えていると、良い匂いがしてきた。


「ちょい小腹が空いたからなんか食いたいな」

「あ!いいですね」


 近場にあった飯には手を出さず、二人でキョロキョロとより美味しそうなものを探しながら歩く。

 すると、俺の目に知っている食べ物が飛び込んできた。


「お!クレープ!」


 大型の円形金属板の上で薄く生地を焼き、野菜や肉を挟んでいる。

 できれば、生クリームとチョコとイチゴが欲しいところだが……。


 店の前に移動し、アリスと一緒に焼いているところを見る。

 すると、店員(若い男性)がこちらに視線を移した。


「いらっしゃい。なんにします?」

「メニューってあんの?」

「そこの看板にある三種類から選んでね」

「はーい」


 店の表に立て掛けてある木の板に何かが書いてある。

 言葉が通じるからイケると思っていた通りに、文字も読めた。


「羊肉、魚、野菜オンリーか」

「私は羊肉のにします」

「了解。なぁ、兄ちゃん」

「はい?」

「ここってガッツリ甘い物は無いの?」

「え?」


 なんかすごく驚かれてる。


「甘い物……ですか?クレープで?」

「そうそう」


 すると、アリスが繋いだ手を引っ張ってくる。


「クレープ屋ですよピーター。甘いものがある訳ないじゃないですか」

「マジか」


 カルチャーショックだわ。

 クレープって甘いモノ限定なんだと思ってた。

 甘いものモードになってたから切り替えてかないと……。


「んじゃあ、羊肉と魚のを一つずつ」

「はい。少々お待ちください」


 本当に少ししか待つことなく、クレープが出来上がる。

 クレープを受け取った俺らは人混みを避けて、開いた場所まで移動し、二人で同時に手にしたクレープにかぶりつく。


 俺の選んだ魚はフィッシュ&チップスみたいな揚げてあるモノ。

 食べた感じも白身魚で衣にほんのり塩味が付いていた。

 一緒に巻いてある野菜はレタスみたいなものではなく、ハーブっぽい感じ。

 噛むほどにハーブ独特の強い匂いが口の中に充満する。

 んで、かかっている紅いソースはピリリと辛く……、不思議な味のクレープだった。


「なぁ、そっちは美味いか?」

「まぁまぁです。ピーターは?」

「そこそこ」


 よかった。

 俺もそういう感想だったから味覚が違うのかと思った。

 互いに食い終わり、塩気を帯びた指を舐めてから次を目指す。


「次はどこに行くか」


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