第3話
「それを言うならアリスだって人間の言葉喋ってるじゃん!え?魔族と人間は同じ言葉を喋ってるんですかぁ?」
「そんなわけないじゃないですか」
「じゃあ、森の中で話してたのは魔族語で、人里降りてきてから人間の言葉を喋り出した?ハッ!どんな上流階級のお嬢様だよ」
俺の煽る言葉にアリスはキョトンとしつつ、サラッと真実を告げる。
「魔族でも上流階級の出身ですよ。だから、教育の過程で多種族の言語も学んでます」
「マジか」
適当に言ったことが当たるとは……。
でもまぁ、考えてみればアリスってそういう雰囲気出てるもんな。
ん?それで言うと……。
「んっとじゃあ、もしかしてティリスも上流階級?」
「え?」
「いや、あの殺し屋兄弟の言葉わかってたんじゃないのか?」
そんな俺の言葉にティリスはチョット戸惑いを見せてからアハハと渇いた笑いを浮かべる。
「アハハ、そうだったら良かったんですけどね」
「おっとぉ?」
「実はあの時、険悪な雰囲気と相手が武装した魔族だったから応戦しただけなんです。なんで襲われたのかはその後のピーターさんとアリスさんの会話で知ったくらいでしたし……」
「なんだ、そうだったのか」
そっか……。
金髪に青い瞳だと貴族って感じがするけど、そういう訳じゃないのか。
まぁ、その理論で行くと金髪蒼眼の外国人は全員貴族という事になるし、ゲームに感化され過ぎてるな。
俺はそんな自分の中に生まれた新たな勘違いを打ち消すべく、手を叩く。誤魔化したと言ってもいい。
「異世界はともかく、日本って国出身の外国人だってことにしといてくれ」
「諦めましたね」
「最初に私に説明した時も諦めましたよね」
だって証拠を出すのがめんどいんだもん。
「何を言っても信じないだろう?」
「納得できる内容なら信じますよ」
「ですね。あ、でも今思えばピーターさんが使っている魔法の名前もこの辺のと同じですよね」
ティリスのそんな言葉に俺とアリスは同時に驚く。
「「確かに!」」
ハモった声に互いの顔を見て、アリスがちょっと得意げにニヤニヤとしはじめる。
「おやおやぁ?自称異世界人のピーターさん。ティリスの指摘に反論できないようですねぇ」
「いやまて、まだ何かあるはずだ。そう……どこか目に見えないところで違いがあるはずなんだ」
「とは言っても、私もピーターの持ってる道具やこういう領域?系の魔術は初めて見ましたけど」
俺を追い詰めようとしていた本人(アリス)が急に助け舟を出してくる。
この舟に乗るべきか?なんて馬鹿な事を考えていると、ティリスが先に頷いた。
「確かに……この国でこういう魔法はボクも初めて見ました。ピーターさんが使ってる武器もちょっと特殊ですよね」
アリスとティリスの興味に火が付き、説明を求める輝いた目が俺の方に向く。
さて、どう答えようか……。
しかしこの時、回答は出せなかった。
なぜなら、《野営領域展開(キャンピング・フィールド)》に内蔵されている《探知対策(アゲインスト・ディテクション)》が反応し、けたたましい警報音を領域内に響かせたから。
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