ティリスは可愛い○○○

第1話


「くぅ~……。わかりました。今回は大人しく引き下がります」

「へへへ。敗者は大人しく去りな。あと、時間もったいないから先に風呂入っとけ」

「わかりました。それとそろそろ着替えを貰えますか?」

「あぁ、この間洗ったのが……ほれ」


 《個人収納空間(ストレージ)》の中からスウェット二号(一号と同色)を取り出し、アリスに投げ渡す。

 アリスの方も投げ渡されることに慣れ、掴み損ねることも少なくなった。


「ありがとうございます。じゃあ、ティリス」

「はい?」


 なぜかアリスはティリスに声をかける。

 ティリスも考え事をしている時に名前を呼ばれたものだから返事の声がちょっと高かった。。


「ここのお風呂は少し特殊なので、私が教えてあげます」

「あ、そうなんですか?じゃあ、お願いします」


 そういうことか。

 まぁ、代わりにやってくれるならありがたい限りだ。

 そんな風に安心したのも束の間、アリスははにかみながら爆弾発言を投下する。


「フフフ、久しぶりに他の方と一緒にお風呂に入れますね」


 そんな言葉を聞いて俺はギョッとする。

 思わずティリスを見てみると、あっちも目を丸くして驚いていた。


「故郷ではじゅ……いえ、幼馴染とよく一緒に入ってたんですよ。体の洗いっことかしたりして……フフフ、楽しかったなぁ」


 なんか勝手に回想モードに入っているけど、こっちはそんな事じゃ済まされない。

 俺が急な展開に混乱していると、ティリスが口を開く。


「あ、あの!」

「はい?」

「ボクは一人で入りますので……。お風呂の使い方だけ教えて頂けると」


 ティリスの言葉にアリスはあからさまに不満そうに唇を尖らせる。


「えぇ~?いいじゃないですか~」

「駄々っ子か」

「子供じゃありません!」


 まぁ、発言だけ聞くと痴女だよな。


「アリス、一緒にお風呂に入りたいって欲望は俺にもわかる。けど、人によっては他人と風呂に入るのは嫌だって奴もいるんだぞ?」

「え?そ、そうなんですか?」


 あぁ、あるある。

 自分の生活において日常レベルになると、他の人も同じだと錯覚するヤツだ。

 んで、それを友達に話して引かれるヤツだ。


「そうなんだよ。なぁ、ティリス」

「そ、そうですね。流石にボクも恥ずかしいです」

「えぇ~」


 アリスはそれでも残念そうに眉をゆがめた。

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