第2話


「アンタら旅人かい?」

「あぁ、オッサン。あの入り口にある趣味悪いオブジェはなんなんだ?」

「好きで作ったわけじゃねぇ」


 案内されたのは村の端にあるボロい家。

 狭くは無いものの、汚いその家には多くの男と少し歳を重ねた女たちが立っていた。


「三日前に盗賊に襲われたんだ」

「盗賊って村を襲うのか」


 衝撃だ。

 盗賊は旅人を襲うもんだと思ってた。


「反抗した若い男は見せしめに殺され、若い女は奴らに連れ去られた」

「その盗賊はどこに?」

「村役場を根城にしてる」

「ふぅん」


 村娘を取り返せってイベントか。


「悪い事は言わねぇ。このまま村を出て、迂回して進め」

「おっと?」

「こっちからすれば、助けて欲しい気持ちもある。だが、他所モンに頼めるほどこの村に金はない」

「でも、このままだと大変なんだろ?」

「アンタもか」

「アンタも?」


 村の人たちが視線を移す先、そこには旅人姿の一人の少女が座っていた。

 見えてなかったけど、若い娘いるんか。


「その子は?」

「ボクも旅人です。一時間ほど前にこの村に着きまして」

「この村を救うって言って、こっちの話を聞かねぇんだ」

「助けてもらえるなら助けて貰えよ」

「あのなぁ。こっちには払えるものがねぇんだ」

「報酬は気になさらなくていいですって」

「そうはいかねぇ」


 このオッサンの言い分に村のみんなが頷く。

 いや、そういうもんなの?

 ここは相手を騙してでも助けてもらって、報酬を踏み倒せばいいのに。


 俺の心はどうやら汚れているらしい。


「村の事は村のオレらがやる。他所モンは口出さないでくれ」

「よし。わかった」

「えぇ!?」


 驚いたのは旅人の少女。

 アリスは微動だにしていない。


「助けないんですか?」

「しょうがないだろう。助けてほしくないと言っている」

「それでも……今も村の女の子たちが悪漢にいいようにされているんですよ?」

「しょうがないだろう。そういうもんだってこいつらが受け入れてんだから」


 俺が村人を指さし、呆れた声を出す。

 すると、オッサンたちが反論してきた。


「受け入れてる訳ねぇだろ!」

「ウチの娘も捕まったんだ!」

「うちのはもう少しで結婚式上げる予定だったんだ!妻だって……」

「ウチの子は……この人の娘と結婚する予定だった息子は死にました。今も村の中で磔にされています。それを許せるはずがないでしょう!」


 みんなの魂に火が灯る。

 それぞれの手に力が入り、やり場のなかった怒りが燃え盛っていく。


「んじゃあ、一つ商談と行こうか」

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