アリス 1
「旅は道連れ、世は情け」
ピーターと出会った時に聞いた言葉だ。
魔族である私の命を助け、今もなお守ってくれている。
最初こそは私に騙されるとか、利用されるとか、裏切られるとか考えていないのだろうかと呆れた。
初対面の異種族相手にそれほどの信用を与えるなんて普通なら考えられない。
そして逆に、私が騙されているんじゃないかと疑った。
だけど、彼はどんなに私がバカみたいなことをしても茶化しながら助けてくれる。
我ながら単純で、お手軽な女だと思うけど、この七日間でピーターに惹かれていると自覚している。
強者に惹かれるこの性質は魔族特有のものだ。
だから、そのせいなんだと心の奥で言い訳しながら、彼の寝顔をそっと見つめる。
聞いたことも無いような言葉と見たことも無いような魔術や道具を駆使する人間。
魔族でさえ人間界侵攻を断念する理由に挙げるほどの魔境【悪魔の森】で、街中を散歩するように歩く人間。
その【悪魔の森】に生息する【魔獣】をいとも容易く切り裂いていく実力者。
「恋なんて……私には縁無いものだと思ってたんですけどね」
彼が聞いていない事を良いことに私はぽろっと本音を呟く。
誰も聞いていない私の音は森の闇に呑まれ、そして誰に届くでもなく消えていった。
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