二人は未だに森の中

第1話


「アリスって戦えるの?」


 涙も引っ込んだことだし、森の中を進む前に聞いておきたいことを聞く。

 しかし、アリスの方は申し訳なさそうに顔を逸らした。


「魔力がほとんど失われていて……今はおそらく下級魔術程度しか扱えないかと」

「そっか」


 アリスの回答を聞いて《個人収納空間(ストレージ)》の中から魔導銃を取り出す。


「ほれ」

「え?あっ!わっ!?」


 俺が放った銃を受け取り損ね、アリスは慌てながらしゃがみ込む。

 落ちた銃を拾い上げて立つと、アリスは首を傾げながら俺を見上げる。


「こ、これは?」

「【練習用魔導銃(トライアル・マジック・ピストル)】。BLT競技者が練習に使う……要は魔力弾が射出される道具だ」

「ビーエルティー?魔力弾が射出って……?」


 困惑しながら危なっかしく銃口の穴を覗いている。

 BLT外で誤射すれば痛いじゃすまないので俺は銃を取り上げて、説明を加える。


「持ち方はこう。手のひらから魔力をこれに流して、引き金を引くと」


 ッパァンという破裂音と共に銃口から22口径の魔力弾が射出され、木の幹に傷を穿つ。

 この破裂音が練習用の面白さなんだよな。


「な、ななな」


 使わなくなって久しい武器に懐かしさを感じていると、怯えた表情のアリスが銃創の付いた木に目を向けている。


「こう言う危ない武器だ。間違っても魔力込めつつ、銃口を覗かないように」


 未だに口をパクパクさせているアリスに再び銃を渡し、俺は他の道具を取り出す。


「防具代わりになるアイテムは多い方が良いだろ。これとこれも着けとけ」


 再び道具を二つ投げ、当たり前のようにアリスは取り損ねる。

 地面に落ちたのは指輪と腕輪。


「あの……これは?」

「指輪の方は《立体空間固定(ホールド・ソリッド)》。魔力を込めると、指定したところにコンクリくらいの硬さの立方体が出現する」


 アリスが指輪を人差し指に嵌め、魔力を込める。

 すると、指先に魔力で出来た立方体が出現した。


「おぉ!」

「大きさは30cm四方、出現時間は基本30秒、魔力の追加供給によって大きさと出現時間のコントロールができる。」

「魔術を編まなくても術が発動できるんですか?人間ってこういうのも作ってるんですね」

「まぁな。あんまり言いふらすなよ。これでも高価なもんなんだから」

「は、はい!」


 ゴメン。

 魔導銃もマジックリングも安物だ。

 高校生くらいにでもなればバイト代で買える程度のモノ。

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