ピーター・イン・アナザーワールド

八神一久

アリスとの出会い

第1話


「ふわぁぁ……」


 深酒をした次の日。

 重い頭を起こし、目を開けるとそこは森の中だった。


「は?」


 意味が分からない。

 え?

 なんで森の中?


「昨日は友人(ダチ)と飲みに行って、キャバ行って、ウェーイ!ってやって……あれ?家に帰ったよな?」


 そういえば、どこで寝たのかも思い出せない。

 まったく……酒って奴は旨くて楽しい気分にさせる癖に肝心な所の記憶を抜くのが上手いなぁ。


「って、納得してる場合じゃないか」


 俺は重い腰を上げて立ち上がる。

 同時に頭の芯に響く頭痛。

 割れ鐘を攻城戦用ハンマーで撃ち抜いたかのような一撃が俺の頭を刺激した。


「くぁっ!?……っイテテ、しかも二日酔いかよ」


 体調最悪。

 着ているのも薄手の半袖Tシャツにジーパンとどう見ても森の中を歩く装備ではない。


「っつーか、ここどこ?」


 家の近くに森なんてあったか?

 自然公園以外で森を見たことのない俺は自分の家周辺の地図を思い出そうとする。


「あぁ、地図を観ればいいんだ」


 《個人収納空間(ストレージ)》を開き、中から【ASD(All Support Device)】を取り出す。

 手のひらサイズの板状の機器の横にある電源ボタンを押し、画面をタップして起動。

 そのまま【地図機能(マップ)】を開いて周囲を確認する。


「んー……」


 半径100m以内はすべて森だったため、縮尺を変える。

 しかし、その先は真っ白なままでいくら待っても地図の更新がされない。


「どうなってんだ?故障か?後でノーシィのヘルプデスクに電話せな」


 とりあえず、地図画面を操作し、俺は《極小探査波(リトルソナー)》を発動。

 ASDから魔力弾が上空に放たれ、30mまで上昇。その後、炸裂し地図の白地を更新していく。


「さってさて、ここはどこだ?東京のど真ん中にこんな森はないだろう。酔って歩き過ぎて埼玉くんだりまで来ちまったか?」


 更新されていく地図を見て、俺は目を剥く。

 森の中心に出現した文字。それはこの森の名前を表すものだ。


「【悪魔の森】?そんな厨二くさい森、日本にあったか?」


 少なくとも俺の住んでいたところの近くには無かったと思う。

 変に疑問が湧いたせいで治まってきたと思っていた頭痛が再発。

 不快な痛みが頭を支配する。


「意味わかんねぇ。とりあえず歩くか」


 ASDの故障かもしれないし、夢かもしれない。

 俺は適当に森の中を進み始めた。

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