第4話 彼女が気になる~隆太視点~
小さい頃から女共は苦手だった。人の顔を見るなりキャーキャー騒ぎたてる。はっきり言って迷惑だ。そんな女共がウザくて、中学は男子校に行った。そのおかげで毎日快適だ。
ただ近くの中学の女共が、わざわざ学校まで見に来る。そして俺が出て来ると、ギャーギャー騒ぐのだ。迷惑以外何者でもない。
もちろん、高校も男子校に行く予定だった。正直女なんて猿以下だと思っていた。そんな俺も、そろそろ高校を本格的に決めなければいけない時期に入った。
「隆太、高校どうする?俺は南高校を狙ってるんだよね。あそこ、家から近いし。可愛い女子多いらしいし」
こいつ女狙いかよ…
「俺は青川高校かな」
「何だよ、お前また男子校に行くつもりかよ。お前イケメンなんだから、共学に行けばモテモテだぞ」
俺は女に関わりたくはないんだよ!気楽な男子校が一番だ。
その日の帰りも女共が待ち伏せしていた。
「あの、これ受け取ってください」
真っ赤な顔で女が手紙を渡してくる。
「俺、興味ないんで」
軽くかわし、そのまま女を素通りして歩く。
「ちょっと待ってください。ずっと好きでした。よかったら友達になって下さい」
はっきり言ってウザイ。
「君は俺の何を知っているの?どうせ顔でしょう?ウザいから消えろ!」
そう言うと、泣きそうな顔で去って行った。あ~、女って本当に面倒くせぇ!
何かむしゃくしゃするな、ちょっと寄り道していくか。そう思い、いつもと違う道を歩いていた時だった。
「ちょっと!あんた達、こんな小さな子をイジメて、何考えているのよ!」
何だ?喧嘩か?
ふいに声のする方を見る。すると、小学生のガキ3人と、子犬を抱いた女がいた。
「出たな!渚ばばぁ!その犬捨てられていたから、俺たちが遊んでやっていたんだよ!」
「誰がばばぁだって!追いかけ回したら可哀そうでしょう!動物には優しくしなさ
い!」
小学生に怒鳴りつける女!
「うるさいな!渚ばばぁは放っておいて、向こうへ行こうぜ!」
「だから誰がばばぁよ!」
女に怒られ、不貞腐れた小学生たちが去って行った。
「もう大丈夫よ。怖かったね。あなたは今日から家の家族よ。さあ、帰りましょう」
そう言うと女が子犬に笑いかけた。その瞬間、胸の奥が一気にドクドクする。一体この気持ちは何なんだろう…
子犬を抱いてその場から立ち去る瞬間、女と目が合った。しまった、また頬を赤らめて絡まれる!そう思ったのだが、女は俺なんか全く興味がないと言った感じで、去って行った。
「何なんだよ、あの女は…」
俺に全く興味を持たない女がいるなんて!それに、あの笑顔…
家に帰ってからも考えるのはあの女の事ばかり。そう言えば、渚って呼ばれていたな。もう一度会ってみたい。
翌日、授業が終わるとあのあたりをウロウロした。でも、彼女は見つからない。次の日も、その次の日もあの場所へと向かう。そんな日々が1週間続いたある日
「お前毎日ここに居るな!何しているんだ?」
このクソガキ共は、前に彼女に怒られていた奴らだ。
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけれど」
俺は意を決して彼女の事を、このクソガキ共に聞いてみる事にした。
「何々?」
そう言いながら近づいて来たと思ったら
ドス!
「痛っっっっ!!!」
あろうことか俺はクソガキの1人に股間を蹴られたのだ。もちろん、痛みでうずくまる。
「バーカバーカ」
笑いながら去って行こうとするクソガキ共。その時だった!
「あんた達、また悪さしたわね!」
この声は!
「げっ、渚ばばぁだ。逃げろ」
急いで逃げようとするクソガキ共を次々と捕まえると
「ほら、このお兄さんに誤りさない」
クソガキ共を俺の前へと連れて来た。
「誰が謝るかよ。こいつ最近毎日ここをウロウロしていた変質者だぞ。俺たちは良い事をしたんだ!」
「「そうだ、そうだ」」」
ゴン
ゴン
ゴン
「だからって股間を蹴ったらダメでしょう!あんまり酷いなら、おばさん達に連絡を入れるわよ!」
クソガキ共にゲンコツを食らわせ、怒る彼女。その姿も美しいな…
「痛ってぇな~!暴力渚ばばぁゴリラ!はいはい、謝りますよ」
「「「ごめんちゃ~い」」」
「コラ!そんな謝り方があるか!!!」
怒る彼女を無視し、走って逃げるクソガキ共。
「あの子たちがごめんなさい!もう二度とあんな事はしない様に、しっかり言い聞かせるわ」
なぜか俺に頭を下げる彼女。
「いいや。俺も油断したのが悪かったし。助けてくれてありがとう。それにしても、あの子たち君の知り合いなのかい?」
正直女に助けられるなんて恥ずかしいが、一応お礼を言っておいた。
「近所の子たちなの。いっつも悪さばかりしているのよ!でも根は良い子たちだから、許してあげて」
そう言うと、彼女はにっこり微笑んだ。その瞬間、胸の鼓動が一気に早くなる。心臓の音がうるさい。
「それじゃあ、私はこれで」
そう言って去っていく彼女。
彼女の後姿をボーっと眺めながら、しばらくその場を動くことが出来なかったのである。
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