第56話 今日はベッドで眠りたい気分なんだ。
運よくすぐに獲れた蛇のお肉でお腹と心を満たし、次の日の朝には移動を開始した。
今回の遠征ではダンジョン3つを回る予定だったので、これが最後だ。
少し遠かったし、場所が分からず迷ったこともあり、ダンジョンに着いたのはお昼を過ぎた頃だった。
少し休憩をした後、ダンジョンに入る。
石造りの通路が続く、普通のダンジョンのようだ。
「どうせ1階じゃ大したモンスターも出ないし、どんどん下を目指すか。」
魔力を意識的に放出しないように抑え、下の階を目指して歩く。
途中で巨大化した蟻の魔物に襲われたが、一切問題なく倒した。
「このダンジョンは虫系のダンジョンかな?虫は嫌だなぁ……。」
蟻ならまだいいが、ムカデやゴキブリ、明らかに毒を持っていそうな蜘蛛などは苦手だ。
カブトムシやカナブンなら、まだ可愛いと感じるのだが……。
そんなことを考えながら歩いていると、階段を見つけた。
いつもと違うのは下りる階段ではなく、上る階段だった。
特に気にせず上がって行く。
2階に待ち受けていたのは、大量の蟻の軍隊だった。
「やばいな。最初のダンジョンで見たスライムの大繁殖みたいだ。これがダンジョンの外に出たら『大襲撃』になるのかな?」
すぐに蟻の大群が向かってきたが、焦ることなく通路の幅と高さに合わせて物理魔法で壁を作った。
やることは以前と一緒。
ただ走って壁に激突するだけだ。
丁字路に突っ込んだ際、左右から蟻に襲われることもあったが効率的に蟻の駆除を続け、30分かからないくらいでほとんどの蟻を殲滅することができたと思う。
途中で見かけたがスルーした階段へと向かい、上の階へ移動した。
ダンジョン3階。
この敵は倒したくないっ!
目の前にいたのは戦車くらいの大きさはありそうなヘラクレスオオカブトだった。
普通に格好いい。
流石にこのサイズなのでペットにしようとは思わないが、見ている分にはマジでカッコイイ。
特にこのカブトムシがボスっていう訳でもなく、スルーして進んだところ今度はタランドゥスオオツヤクワガタがいた。
知らない人もいるかもしれないが、全身に光沢のあるゴージャスなクワガタだ。
大顎が長いわけではないが、太く艶やかなその顎は見る者を魅了する。
素晴らしい見た目だ。
サイズさえ普通なら間違いなく捕獲していただろう。
魔物であろうと倒したくないのでスルーして階段を探した。
無事に階段を見つけ、非常に魅力的な見た目の3階から4階へ上がると、今度は広い空間が広がっていた。
ボス部屋なのだろう、部屋の真ん中、天井から何かがぶら下がっている。
それにブンブンと何かが飛び回る音も聞こえる。
おそらく蜂だ。
真ん中にあるものはハチの巣だろう。
階段の出口に壁を作ってから観察する。
やはり魔物なのだろう、サイズがかなりデカい。
一匹一匹がラグビーボールみたいな大きさなのだ
とりあえず魔力の槍を壁の向こうに生成しハチの巣に向かって物理魔法でぶっ放した。
見事にハチの巣に大穴が貫通したが、壁の向こうではブンブンブンブンと蜂が大暴れだ。
もう一度、今度は壁の向こうにナイフを生成し動かす。
こちらに向かって突撃してくる蜂を迎撃するためだ。
……3時間程経過しただろうか?
ダンジョンのひとつの階でここまで時間がかかったのは初めてだ。
既に蜂たちも落ち着きを取り戻し、襲って来た蜂は全て駆除したので広間に入る。
数十匹ほど部屋の奥に残っていた蜂が襲って来たが、数はそこまで多くないので普通にナイフで迎撃できた。
部屋の真ん中まで進み壊れたハチの巣を見ると、大量の魔石と生き残った幼虫がいた。
もちろんすべて全滅させる。
いつの間にかレベルが上がっていた。
(認識力)を100まで上げ、残りは(超感覚)にすべて振っておいた。
____________
Lv.27(3%)
・HP(体力):45/50
・MP(魔力):44/100
・STR(筋力):100
・MAG(超感覚):95
・SEN(器用さ):50
・COG(認識力):100
・INT(知力):50
・LUC(運):100
SP.0
スキル
・ステータス割り振り
・物理魔法(29/100)
・破魔魔法(1/100)
____________
「……破魔魔法はどうやってレベル上げるかなぁ……。」
昨日、食後に一応確認程度に使ってみたのだ。
感覚としては魔力の爆弾って感じだった。
手のひらサイズの魔力ボールに破魔魔法を使ったら、魔力が爆発するように広がったのだ。
使った瞬間に勝手に爆発するので、物理魔法とは違いいろいろと応用することは出来なさそうだった。
問題は自分の魔力の爆発では、自分の魔法は影響を受けないのか効果を確認できなかったことだ。
誰か魔法使いの協力者に手伝って貰わないと効果を確かめるのは難しいだろう。
とりあえず破魔魔法のことはいったん忘れ、次の階に進むことにした。
ダンジョン4階。
出てきたのはアラクネだった。
蜘蛛の頭から人の上半身が生えた様な生き物だ。
言葉は喋れるのだろうか?
広い空間にポツンと1匹だけ鎮座しているのでボスなのだろう。
警戒しながら近づく。
……ほら、もし意思表示できるのなら通してもらえないかな~って……。
ある程度近づくと普通に攻撃されたが。
問答無用で攻撃されたが。
とりあえず躱して殴りかかった。
足元に少し粘着質な物があったが私の(筋力)の前には無力。
普通に近づいて踏み込んで腹パンしたところ、消滅した。
わ~い魔石だぁ~。
宝箱も出現したぞぉ~。
魔石を割ったところ25%の経験値だった。
まぁまぁおいしい。
今回は一切期待せずに宝箱を蹴ったところ、スキルオーブが出てきた。
「って、スキルオーブって宝箱からも出るの!?」
『ダンジョンのモンスターしか落とさない』と思っていたので普通に驚いた。
新しいスキルよ~。
『ニート』は『火魔法』を覚えた。
やった!
やったよ!
ついに憧れの魔法っぽい魔法を覚えたよ!
第3部完。
「マジか……。さっそく試してみるかな。使い方はたぶん物理魔法と一緒だろ。」
手のひらサイズの魔力ボールを作り、火魔法を使う。
火の玉が出現し、10秒ほどで勝手に消えた……。
「勝手に消えるのか……。物理魔法とは少し違うんだね。魔力を込めたときの量で時間が変わるのかな?帰ったらいろいろと実験してみなきゃ!」
もうウッキウキである。
ついに念願の魔法らしい魔法が手に入ったのだ。
浮かれもする。
それでもきちんと次の階に進み、5度目の光景を確認した後、来た道を引き返した。
「そういえば、モンスターは消えたけどこれは消えないんだな。」
4階まで戻って来た時にふと気になった。
蜂の魔物も幼虫も、倒すと全て魔石を残して消えたのだが、蜂の巣は残ったままなのだ。
消えるのはあくまでもモンスターだけで、モンスターが作ったものは対象外なのだろうか?
火魔法を手に入れて浮かれていたこともあり、結構な量の魔力でボールを作り、放ちながら火魔法で変換した。
大きな火の玉が蜂の巣に当たった瞬間、目の前に火の海が広がった。
結構驚いた。
爆発とかはしていないのだが、集められていた魔力が一気に火となり燃え広がったのである。
急いで魔法を解除する。
広がっていた火の海は消えたが、燃えている蜂の巣の火は消えなかった。
「火魔法の扱いは慎重にしよう。下手に森の中でぶっ放すとヤバイねこれ。」
普通に酸欠や一酸化炭素中毒が怖いので息を止め、全力で駆け抜けた。
あの後は特に何事もなくダンジョンから出ることができた。
時刻は既に夕方。
今から街へ移動するとなると、着くのは夜になるだろう。
(それでもベッドで眠りたい!)と言う思いで、街へと向けて走り出すのであった。
陽も完全に沈んでしまったが、ギリギリ宿の夕食の時間に間に合いそうなタイミングで街へと戻って来ることができた。
門番にお金を払い街に入る。
そのまま寄り道もせずに、真っすぐ宿にたどり着いた。
「お帰りなさいませ。ダンジョンはどうでしたか?」
「苦戦もあったけど楽しかったし、結構強くなれた気がするよ。」
「……まだ強くなるんですね。今ですとまだ食事には間に合いますけど、如何なさいますか?」
「荷物を置いて着替えたら食べに行きます。」
「わかりました。こちらが部屋の鍵です。」
「ありがとう。」
着替えて食事を済ませた後は、すぐに眠ってしまった。
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