第29話 燻製肉と不安な夜
そろそろ移動に向けて準備を始めるか。
小川はとっくに水量が落ち着いていて、浅い場所なら台車を引いたままでも渡れそうなほど水位が落ちている。
もう少しイノシシでレベル上げが出来そうだが、最近は見つけるのも大変になって来た。
再湧きしないっぽいんだよなぁ。
と、いうわけで今のステータスを見てみよう。
____________
Lv.17(90%)
・HP(体力):20/20
・MP(魔力):15/15
・STR(筋力):25
・MAG(超感覚):15
・SEN(器用さ):20
・COG(認識力):15
・INT(知力):15
・LUC(運):20
SP.87
スキル
・ステータス割り振り
・物理魔法(17/100)
____________
S P が 8 7 も あ る !
イノシシの経験値がおいし過ぎたのだ。
一匹ではそこまで強くないのに、群れずに一匹で行動してるから簡単に狩れる。
以前、『グレートウルフが群れを作っていた』と隊長さんが言っていたが、もしかしたら進化個体がいないと魔物は群れを作らないのかもしれないな。
とりあえず今はステータスを振ろう。
87もあると悩んでしまう。
とりあえず(体力)と(筋力)をさらに伸ばすことは確定している。
理由は単純で、倒すだけなら今のままでも問題ないが、イノシシを倒すと持ち運ぶのが大変だからである。
(器用さ)(魔力)(超感覚)は次にあげておきたい候補だ。
(器用さ)はとにかく便利なので上げても問題ない。
(魔力)と(超感覚)は『現状問題ないが一応上げておこう』程度の感じだ。
物理魔法ってホントに解除しない限りずっと使い続けられるので消耗しないのだ。
一応使っている間は魔力が回復しないという問題はあったが、現状だと全く問題になっていない。
こんな便利な魔法がスライムから落ちるって不思議だよなぁ。
(認識力)(知力)(運)に関しては、正直上げる必要性を感じていない。
(運)に関しては、ダンジョンに挑む際に上げておきたいが今は必要ない。
(認識力)は……悪くはないんだよなぁ。
でも正直今のところ必要としていないので後回しだ。
(知力)?
上げるメリットが未だにはっきりしてないから後回しだよ。
とりあえずどうしようかな……。
(体力)を30まで上げておこう。これで残りSPは77。
(筋力)は40にして、これで残りは62。
(器用さ)も10上げて30かな?これで残り52。
……まだまだ結構余るな。
(魔力)と(超感覚)も30まで上げよう。これで残り22。
う~ん……。
(知力)と(認識力)に5づつ振って、(運)に10振ろう。
これで残りは2だ。
____________
Lv.17(90%)
・HP(体力):20/30
・MP(魔力):15/30
・STR(筋力):40
・MAG(超感覚):30
・SEN(器用さ):30
・COG(認識力):20
・INT(知力):20
・LUC(運):30
SP.2
スキル
・ステータス割り振り
・物理魔法(17/100)
____________
ゲームなら極振りもありなのだが現実だからね、平坦なステータスにしちゃったよね。
残った2は取っておいてもいいでしょ。
お肉確保のためにイノシシをあと一匹倒せばレベルアップできるし、その後でいいや。
「それじゃあ今日はイノシシを一匹調達して、干し肉とかに加工する作業を終わらせて、明日の朝一で出発するための準備を終わらせようかな。」
そんなことを思いながらいつも通り歩き出し、少し遠くまで探しに来てしまったので時間はかかったが、無事イノシシを手に入れるのであった。
倒した場所でイノシシの血抜きをしていると、遠くに熊を見つけた。
感覚的には魔物化していない普通の熊だ。
見た目もいたって普通の大きさで、可愛らしい。
「……熊がいるってことは熊が魔物化した生き物もいるんだろうなぁ。」
熊の危険性なんてイノシシよりも有名だろう。
熊は基本的に臆病な性格の個体が多く、積極的に人を襲う訳ではないのに危険視される生き物だ。
魔物化し、凶暴性と圧倒的パワーをもって積極的に人間を襲った場合、どうなるかなんて容易に想像できる。
「流石に魔物化した熊とは会いたくないなぁ……。熊肉は美味しいけど癖が相当強いらしいし……。」
『勝つか死ぬか』ではなく、『美味しく食えるか食えないか』の方ばかり気にするようになっていた。
血抜きを終え、魔石を砕き内臓を捨て、頭を落としてから拠点に移動を始めた。
「レベルも無事上がったし、SPも20に増えた。順調順調!でも、SPは何に振ろうかな?筋力は……イノシシを持ってるけど『少し重い』程度なんだよな。そこまで重くないから体力も少しずつしか減らないし、(器用さ)と(運)に10振るかなぁ……。」
歩きながらしばらく悩んでいたが、他に振りたいものもなかったので(器用さ)と(運)に振った。
運がダンジョン以外でも効果があるのか分からないが、どうせダンジョンにいつか行くことは確定してるのだ、上げていても問題ないだろう。
空を見上げると鳥の群れが飛んでいた。
近くに落ちていた石を拾い投げてみる。
……当たらないよね。
運が良ければ数匹まとめて手に入るかと思ったのだが、上手くはいかないようだ。
「一石二鳥とかどうやれば出来るんだよ。」
ボヤキながら拠点まで戻った。
何事もなく拠点まで戻って来た。
最近この辺りはマジで魔物も動物もいないんだよね。
何かあったのかな?
とりあえず、解体を始める。
「このサイズだし人間の国に着くまでは余裕で持つだろ。でもどのくらい干し肉にするべきかなぁ?前はエルフちゃんに食われた思い出しかないんだよね。」
生肉を焼いた方が圧倒的に美味しいが、長持ちしない。
問題は一人で食べきれて腐らない量を見極めること。
だがあまりの大きさを誇る肉を前に、自分の食欲が分からなくなる。
「一日三食このくらいの量はいけるか……?いや、いける。いっぱい動くからいっぱい食べられる。何も問題はない!」
こうして生肉で持って行く分を確保した。
次は燻製肉に挑戦する。
以前はめんどくさくて天日干ししただけだったのだ。
だが、今回は明日出発する予定なので天日干しでは間に合わない。
という訳で燻製だ。
なんか香りの良い木を燃やして、燃やすときに出る煙に肉を晒し続ければいいだけ。
言葉にすると、なんと簡単なことか。
とりあえず煙が肉にしっかりと当たるように火を囲む壁を用意する。
これは以前雨の中作って、壊すのがもったいないからと持ってきていた屋根を解体して、壁として再利用した。
ちゃんと扉もある。
次に木なんだけど……、香りとか分かんないから枯れ切ってボロボロになった木を細かくして使う。
テレビで燻製肉を紹介している時に『木をチップ状にしたものを使っている』と言っていたからだ。
あとは底に石を敷いてその上に燃えている小さめの炭を置く。
火の上に細かく砕いた木を乗せて、煙がちゃんと出てきてくれたので扉を閉める。
……雑に作ったけど、意外と変なところからは煙が出てないな。
上の方に煙を出すための穴を開けていたけど、ちゃんとそこから煙は出ている。
見た目だけなら期待できそうな完成度だ。
肉を出来るだけ上の方に設置したら、後は待つだけだ。
……とりあえず一時間を超えたくらい時間が経った。
肉を確認してみると、たぶんいい感じだ。
少しだけナイフで切って食べてみる。
……普通に美味しい。
出来た肉は台車の干し肉が入っていた箱に詰め、まだまだあるお肉を燻製機にセットする。
作業はそろそろ夕食かな?って時間まで続き、夕食を食べた後はすぐに眠った。
ここがエルフ側と人間側を隔てる危険地帯のど真ん中だとも知らずに、(明日から本格的な危険地帯に入るかもしれない、気を付けて進もう。)と不安な気持ちを抱えたまま眠った。
朝になった。
周囲はまだ少し暗いが、問題なく見える程度の明るさだ。
数日ぶりに台車を引いて歩き出す足は、意外と軽かった。
筋力のステータスが大幅に上がっているので当然だ。
車輪が壊れない限り問題なく進めるだろう。
「……と言っても、初めて作った台車だし。人間の国まで持てばいい方じゃないかな?」
非常に重い物を何度も載せて引きずって移動しているので、ベアリング接触部の摩耗が激しい。
(壊れたときは解体して燃やして焼肉パーティーにするからな。もう少し頑張れよ。)
台車にそう心で伝える。
昼食を挟んで歩き続け、陽が少し沈み始めた頃。
モンスターの甚大な被害を受けたと思われる村が遠くに見えてくるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます