第42話 パトラの防具。……この金属って!?

「マッテオさん、盗まれた部屋って見せてもらえます? 俺も冒険者ギルドから可燃石の盗まれた犯人を捜すように依頼を受けているんで」




「いいよ。こっちの部屋だ」




 武器屋の奥へ入っていくと武器や防具を製造している鍛冶場があった。


 鍛冶場の中には製造途中の剣などが、ところ狭しと飾られている。




「ここに可燃石を置いていたんだ」


 そこは鍛冶場の中でも奥まったところにあり、作業用の机が一つ置いてあった。


 机の上には、鍛冶の道具が散乱しており、整理整頓がされているとは、到底言えない感じだ。


 盗まれたと言われれば、そうだが……他の場所に置き忘れていてもおかしくはない管理の仕方だ。




「どこかに置き忘れたってことはないんだよな?」


「それはないな。最近盗まれることが多いから、必ずどこに置いたかは確認するようにしてたんだ。でもちょっと目を離した隙にやられてしまってな」




 入口は2箇所あるため、店主に見つからずに盗みに入ることは可能だと思う。


 いったい何を目的にしているのだろうか? 




 可燃石1個を盗むためにわざわざ泥棒に入る?


 あまりにリスクが高すぎる。




 だけど、お金目当てならここには沢山の剣が置いてある。あきらかにこっちを盗んだ方がお金には変えやすいし簡単だ。マッテオは武器屋だが、かなり腕のいい鍛冶屋でもある。




 そこら辺に転がっている剣であっても、他の場所で買った剣よりも切れ味が長持ちする。


 そうなるとやっぱり、目的は可燃石が目的ということだろう。


 何か可燃石が必要な理由が?




「他の可燃石はどこにあるんだ?」


「あぁそれはこっちにあるぞ」




 そこは鍛冶場から一つ奥に入った納戸でしっかりと鍵がかけられていた。


 鍵は壊された形跡もなければ、こっちの在庫は盗まれたことがないという。


 中を確認させてもらうと、納戸の中で可燃石は青い光を放っていた。


 大きさは大人の拳くらいだった。




 うーん。これだけでは何とも言えない。




「マッテオさんここに俺の従魔召喚したいんだけどいい? ちょっと大きいんだけど」


「あぁ、いいぞ。存分に調査してくれ。騎士団なんて調査はするって言っても、こっちまで入って来ないからな。口だけで困ったものだよ」


「ビックリしないでくれよ。ラッキー!」




 ラッキーが腕輪からでてくる。


「こりゃまた驚いた……噂では聞いてたが……まさか本当にフェンリルを仲間にするなんてな」




 マッテオはラッキーを見ながら少し後ずさりする。


「マッテオさん紹介するよ。うちの従魔のラッキーです。人を襲ったりはしないから大丈夫ですよ。とっても可愛い奴です」


 ラッキーは褒められて嬉しいのか、狭い店内で遠慮がちに尻尾をブンブンと振っている。




「あぁ。ちょっとビックリしただけだ。よろしくな」




『ずいぶん狭いところに呼んだな』


「悪いな。ラッキーここから可燃石が盗まれたみたいなんだ。匂いで追えるか?」




 俺が可燃石が置かれていた場所を指差すとラッキーが鼻を近づかせる。




『んっーここでは難しいな。臭いが混ざってしまっていて、どれがその臭いかわからない』


「わかった。ありがとうラッキー」


「箱庭の中も好きだけど、一番はロックの側がいいんだから、いつでも呼んでくれていいぞ?」


「ありがとう、頼りにしてるよ」




 ラッキーはまた腕輪に中に消えて行く。


 本当に可愛い奴だ。


「すごいな。その腕輪の中に従魔が入っているのか?」


「そうなんですよ。中に庭が広がっていて」




 俺がマッテオに腕輪を見せると興味深々に見ている。


 滅火のダンジョンの10階層で見つかった物なので、普通に世界に流通しているものではない。




「なんか……感慨深いな。ロックも一流の冒険者になって。俺のところに来た時なんか、まだ身長も小さくて、冒険者だなんて言っても不安になるくらいだったのにな」




 マッテオはなぜか目をウルウルさせている。


 親戚の子供の成長を目の当たりにするおじさんのような気分なんだろう。


 親戚の子供の成長は早いからな。




「マッテオさん……やめい!」




「うるさい! 別に泣いてなんかないわ!」


 別に泣いているなんて言っていないが、あえて突っ込まない。


 マッテオさんは少し慌てたように袖で涙を拭き、話題を変ようとこう言った。




「そう言えば、さっきはそこのオレンジアントの嬢ちゃんに悪いことをしたな。うちに来た客がいきなり蹴り飛ばして」




「おじさん大丈夫だよー。怪我なくて良かったー」




「いや、そういうわけにもいかない。なにか嬢ちゃんに謝罪をさせて欲しい。あっそうだ! 嬢ちゃん、これちょっと着てみてくれるか?」




 マッテオが持って来たのは子供用の鎧だった。




「これは貴族の子供用に作れって言われて作ったんだが、完成間近にその子が重い病気を患って寝たきりになっちまったんだ。別に死んだわけじゃないんだが、貴族からはその鎧を見ると辛くなるから処分をしてくれって言われててな。かなり気合をいれて作ったから壊すのも忍びないし……金はもうその貴族から貰ってるから、もし良ければ嬢ちゃん使ってもらえないか?」




「パパー?」




 パトラは俺の方を見て来る。




「いいのか?見た感じかなり高そうな素材を使っていそうだけど」




「あぁ、大丈夫だ。素材はミスリルを使っているから、かなり軽くて丈夫だ。嬢ちゃんの動きを邪魔することはないはずだ」




「ミスリルだって?」




 ミスリルはかなり希少な金属で王族や貴族でも上位の人しか持っている人は少ない金属だった。


 世の中に出回らないわけではないが、一から作りあげるとしたら半年から1年は素材を集めないといけないくらい貴重で金がかかるものだ。




「あぁ。まぁミスリルと言ってもこれくらいの量だと、再利用してもたいした量にはならないし、それにかなりの自信作を壊すのは、俺の職人としてのプライドが許さない。だから、ぜひ使って欲しいんだ」




「そうは言われてもな。そんな貴重な物は……」


 パトラは確かに蹴り飛ばされていたが、怪我もなく無事だった。


 それでミスリルの防具を貰うにはあまりに釣り合いが取れない。




「大丈夫だ。もし使われなければ一生壁に飾っておくしかない。それなら使って貰った方がいい。それにロックの従魔が使ってくれれば、うちの店の宣伝にもなる。うちは武器屋として通っているが防具だって作れるんだってアピールになれば、売り上げは倍増するから、うちは損をしない」




「あぁ、わかった。じゃあこの店の宣伝として使わせて貰うよ。もし返して欲しいって時には言ってくれ」




「返せなんて言わないから大丈夫だ。その代わり、貴族のモンセラットさんが金をだしてくれているから、もし何か縁があれば助けてやってくれ。さっきのクソ貴族と違ってとてもいい人だから。そうと決まれば嬢ちゃん用に調整しないといけないな」




 マッテオがパトラに防具をつけると少し大きさが合わないようだった。


「ちょっと調整に数日かかるから、また後で顔だしてくれ」




 俺たちはマッテオに依頼をして武器屋を後にした。


 この後は……調査もだが、まずはオレンジアント達用に買った武器の試し切りをしに行こう。オーク肉の納品があったのでオーク狙いだな。


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スカイバード「……」(出番がない)

ガーゴイルくん「出番があっても活躍してない」


2人の中に何か熱い友情のようなものが芽生えた。


スカイバードくんの活躍に期待という方は下の♥をいれてください。

2巻絶賛発売中です。

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