第35話 決着の時。

「これも美味しいですー」




「ロックさん私だけ置いていってずるいです。でもこのバナーナのパイは美味しいです」




「こんな近くにこんな美味しい物があったのか」




 バナーナパイはかなり好評だった。


 シャノンを連れて行かなったのがバレてヤキモチを焼かれたが、バナーナパイはそれをもチャラにしてくれた。チョロ……。いや何でもない。


 甘い物は正義だな。




 アイザックには効果なかったけど。




 それから俺たちは依頼達成日まで村の中の手伝いをしたり、シャノンの訓練をしたりして過ごした。




 ガーゴイルくんの封印については解除は可能な感じだったが、ガーゴイルくんが100年封印されたままで、今まで掃除と料理するのに不便がないと言われたのでそのままになることになった。




 もし本人が望むようになったら解除してあげよう。




 そしていよいよギルドへ報告する日になった。




「ロックさん、色々ありがとうございました。おかげでこの村はなんとか生き延びることができます。ロックさんが教えてくれたキャベッツを特産品にして村を盛り上げていきますね! あと村人全員で相談して決めたんですが、村の名前もチヨウシノキャベッツ村に改名することになりました。本当にありがとうございます」




 目の前には村長たちみんなが並び見送りに来てくれた。


「しばらく王都にはいるつもりですので、また何かあれば声をかけてください」




「もちろんです。ロックさんもたまにはこの村へ寄ってください。いつでも歓迎させて頂きます」




 村長は俺に深々と頭を下げる。




「パトラちゃん、またいつでも遊びにくるんだよ。ロックさんと冒険するの嫌になったらいつ逃げて来てもいいからね」




「パパーから逃げる? パトラはパパーとずっと一緒ですよー」


 そう言ってパトラたちが俺の身体に抱き着いてくる。


 パトラはこの数日間で村の大人たちのハートをしっかりキャッチしていた。




 村人たちは知らないようだが、パトラたちが滅火のダンジョン5階層の魔物だと知ったらきっと驚くに違いない。あんなに可愛いのに実は凄腕なのだから。


 成長すればパトラ1匹でこの村の制圧も簡単なくらい強い。




 俺たちはほぼ要塞となった村を後にする。


 オレンジアントたちはあの村を何から守るつもりだったのか、村には似つかない堅牢な壁が出来上がっていた。




 作っている時は頑張っているなーくらいでみていたが、試しに魔法を打ち込んだところ弱い魔法では傷すらつかなかった。




 王都を攻め込むには丁度いい位置にある要塞になっているが、悪用されないことを切に祈る。




 王都までへの道はきちんと整備されていたため、来た時の半分以下の時間で到達することができた。




 ギルドへの依頼に報告は午後になっているので、俺たちは市場へ寄ってからギルドへ向かうことにする。




 市場では何人かキャベッツを持った人とすれ違った。キャベッツがかなり売れているようだ。キャベッツをただ売るのではなく、ロールキャベッツやスープなどを日替わりで試食させた効果もあるのだろう。




 美味しさがわかって、作り方が簡単ならみんな買っていってくれる。




「おぉ! ロックやっと来たか」


 屋台でウォーレンが話しかけてきた。


「あれの方はどうだった?」




「さすがロックだよ。ロックの予想通りこっちの言い値で買ってくれたよ。これが分け前の半分だ。それにしても、これは本当に半分ももらっていいのか? かなりの大金だぞ」




「あぁいいよ。その金で今度は魔牛でも買って、次に村に行ったときには美味しいものでも食べさせてくれ」




「あぁもちろんだ。あそこまで準備してもらって失敗するわけにはいかないからな」




 それから俺たちは市場をぶらぶらしてからギルドへ向かった。


 やっとこれで面倒な依頼も終わる。




 ギルドに入ると簡易のテーブルがある待合席のところにアイザックたちがいた。


 俺たちが来たのを知ると非常に嬉しそうに満面の笑みで俺たちを出迎えてくれた。




「遅かったじゃないか。逃げ出したのかと思っていたぞ」




「逃げ出すわけないだろ。こんな簡単な依頼で」




「ハハハ! 言ってられるのも今のうちだけだ。これを見て見ろ」




 アイザックがいた机の上には大量の虹色トンボの羽や卵など今回の依頼品がたくさんあった。


 アイザックは自信満々に俺に言い放つ。




「残念だったな。お前の負けだ。俺に謝ってもらおうか」



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ガーゴイルくん「フンフンフン。さてあとは隠し味をいれて」

ゴリゴリゴリ

ロック「何を入れてるの?」

ガーゴイルくん「わ・た・し。実は岩塩でできていたの」

ロックの悪夢は続いていた。


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