第34話 甘えん坊のパトラ指揮官
「それはそちらに運んでください。あっウォーレンさんそれすごく助かります。あちらへお願いしてもいいですか?」
「あぁパトラちゃん任せてくれ」
村に戻るとパトラの指揮で村人たちやガーゴイルくんたちが働いていた。
パトラの才能が凄すぎる。
パトラは村に冒険者が泊まる宿屋がなかったので、いつの間にか村長と宿屋を作る計画を立てていた。
材木はラッキーが切り、ガーゴイルくんがまとめてくれたものを使用するので、費用はかからない。建築に関してはガーゴイルくんも協力しているが設計などはパトラがやっているようだった。
さすが箱庭内にダンジョンを自分たちで作り上げてしまうだけのことはある。
「村長、たまたま来た冒険者がゴブリンたちを全部狩ってくれましたので、もう恐れる必要はないです」
「本当か? 緑園の沼地からゴブリンを退治してくれたのか?」
村長が言っている緑園の沼地というのは、俺たちが行った新緑のダンジョンのことだった。
最初に村長の家に行った時に地図を見せてもらった。
その時に実は名称が違うが同じ場所だというのはわかっていた。
村長が持っていた地図というのは少し古い物で沼地の名称が書かれていたのだ。
これで、村長からの依頼のゴブリンの討伐と食料難については解決した。
あとは今王都へ毎日キャベッツを売りに行ってもらっているので、それを今度は栽培をするようにすればいい。もちろん他に特産品となるものがあればそれでもかまわないが。
キャベッツの栽培は難しいが慣れれば問題ない。
あとは巨大キャタピラーなどに畑を狙われなければいいのだが。
ただ、この近くにあれだけキャベッツが自生しているので近くにキャベッツを食い荒らすような魔物はいなさそうなので大丈夫だろう。
あとは村の塀なども壊れていた部分を直してやる。最初は木で作るつもりだったが、オレンジアントたちが調子にのってダンジョン用の石で柵を作っていた。
かなり頑丈に作っていたので作り直す時に大変そうだが、今までの村の敷地の2倍くらいまで広げていたので当分は大丈夫だろう。
あれだけ広がれば魔牛なども村の中で飼えるようになる。
しかし、あの柵ちょっと触ってみたがビクともしなかった。もし魔物が頭から突っ込んできたら魔物の頭が確実に陥没してしまう。
要塞でも作るつもりなのか?
その後、俺は村の中を見て回りアドバイスなどをしようと思ったが、ほとんどパトラが指揮をして効率よく動かしていたので何もすることがなかった。
「パトラ、何かやることあるか?」
「パパは……私を肩車して」
「ハイハイ」
パトラもまだ甘えたいさかりなのか俺に肩車をせがんできた。
それを見ていたオレンジアントたちが仕事を放棄して俺の身体を登り始める。
ずっと働いていてくれたし、休憩は必要だろ。
「パトラたちはずっと働いていたからちょっと休憩しよう」
そうだな。何かパトラたちにお礼をしてあげたい。それに村のみんなにも何か疲れがとれるものでも差し入れてあげよう。
「パトラはこの後はまだみんなの指揮をとるのかい?」
「うーん。大体は終わりかなー。後は村の人たちにお願いしても大丈夫かと思う」
「そうか、それじゃあちょっと抜け出してみんなへの差し入れを探しにいくか?」
「いいのー? 行くー!」
他のオレンジアントたちが俺の顔を見て来る。
「もちろん、みんなも一緒に行こう」
オレンジアントたちがハイタッチをして俺の方にも手を上げてくる。
俺もタッチしてあげるとすごく嬉しそうにしている。
さて、それなら確かダンジョンの近くの森にバナーナが植わっていたはずだ。
前回来た時にはそれでパイを作ったら、アイザックに顔面にパイを投げつけられたっけ。
甘い物はみんなを優しくすると思っていたがアイザックだけは別だった。
「ラッキーちょっと頼めるか?」
『あいよ』
パトラたちとラッキーに乗ってバナーナのところへ案内する。
バナーナはダンジョンから先、歩いて行くと結構時間がかかるがラッキーに乗っていれば、あっという間だった。
バナーナはちょうど色が付き熟していた。
1本パトラに剥いてあげる。
パトラは初めて見るバナーナに俺の顔とバナーナを見比べていたがパクッと食べると、ぽわーんと幸せな顔になる。
「パパ―これすごく甘いよー!」
「そうだろ」
他のオレンジアントにも取ってあげるとみんな喜んで食べている。
『この黄色いの美味いな。初めて食べた』
「シャノンたちにも持って行って食べさせてやろうぜ。あとちょっとスカイバードのところにも差し入れしてくる」
俺が箱庭に入るとスカイバードは俺が先ほどいれたワイバーンの卵10個を一生懸命温めてくれていた。
「それ孵るのか?」
スカイバードは俺の質問に大きく頷く。
それにしても自分より大きな卵10個の面倒を見るのは大変だろう。
まぁ生まれなくてもスカイバードがやりたいことをやってもらうのが一番だ。
ずっと1匹箱庭で留守番してもらっているからな。
「これバナーナっていう甘い果物だから良かったら食べてくれ」
スカイバードは俺の肩に止まると親愛の表現として頬を擦り寄せてくる。
俺はスカイバード用に一房置いてまたパトラたちのところへ戻った。
せっかくだからバナーナパイでも作ってやるか。
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パトラ「パパ―抱っこ」
ロック「はいよ」
ガーゴイル「ロックさん、僕も抱っこ」
ロックはちょっと嫌な夢を見てうなされた。
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