第27話 魔王城をクビになったガーゴイルと村からの依頼
「さて、それじゃあ先を急ごうか。お前はどうするんだ?」
「僕、魔王城クビになってからどこも行く当てがないんです」
「そうなのか。それなら俺たちと行くか?」
「僕みたいな弱いガーゴイルでも大丈夫ですか? ロックさんやラッキーさん、シャノンさんのような強い人からみたら足手まといにしかならないですけど」
「別に来たいなら拒む理由はないぞ。強いだけが個性じゃない。力の強さでそいつが持っている魅力が決まるわけじゃないよ」
「行きます! ぜひ行かせてください」
【ガーゴイル(封印)が仲間になりたそうにしている。仲間にしますか?】
なんだこの封印っていうのは?
「なぁ? 何か力を封印されていたりとかってするのか?」
「封印ですか? 僕を作ったのは先々代の魔王だったとは聞いていますが、なんかずっと倉庫で眠らさせられていたみたいなので。みんなから余り物で作ったから倉庫にいたんだろって言われてました。魔力も弱いですし。100年前からはずっと掃除当番でしたので掃除は完璧ですよ」
「そうなのか。なにか封印をされているみたいなんだけど、後で確認してみよう。ようこそ聖獣の箱庭へ」
【ガーゴイル(封印)を聖獣化し仲間になりました。聖獣の箱庭へ転送します】
【聖獣が仲間になり箱庭の拡張ができるようになりました。以下の場所、設備を1つまで選択することができます】
◆池(中)
◆川(中)
◆海(小)
◆小屋(拡大)
◆箱庭拡張
◆畑(拡大)
◆果樹
◆鉱山(小)
◆山
さて今回は小屋を拡大させるか。
地下ダンジョンはあるが小屋が拡大できれば従魔が生活しやすくなるはずだ。
一度聖獣の箱庭の中に入ってガーゴイルに説明をしてくる。
「こんなスキル100年生きてきて聞いたことがないです。それに聖獣化っていうんですか? すごく力が溢れてきますね」
「それはよかった」
そんなことを言っていたが、元が弱いので無理はしないでもらいたい。
封印のことはあとでなんとかするとして、村の場所を聞くと王都とは反対側へ進んだところだという。
ガーゴイルの目撃なのでそれがもし盗賊の村などであればついでに潰していくしかない。
村へ行く途中で野生のキャベッツを何個も発見したのでいくつか回収しておく。
こんな群生地帯なかなかない。
あとで茹でてみんなで食べよう。
キャベッツは茹でるととても甘くてスープにすると味が染み込み美味しくなる
しばらく進むと簡易の塀が建てられているだけの小さな村が本当にあった。
村は谷間にあり全員で30人くらいしか住んではいないようだ。
遠くから見た感じ盗賊というわけではない。
むしろ老人や女性などが多い村だった。
『寄っていくのか?』
「あぁ、地図にない村がある場合には一応確認しておかないと。盗賊や山賊の住みかだと旅人の危険が増えるからね」
『私は隠れていた方がいいか?』
「いやいいよ。一緒に行こう」
村の入口までいくと老人の門番らしき人が……寝続けていた。
門番の意味がないな。
俺とシャノンはラッキーを降りて声をかける。
「すみません」
「こんにちは」
「ZZZ……むにゃむにゃ……うっ……ガッ―」
無呼吸症候群らしい。途中で呼吸が止まっているが大丈夫か。
どうすればいいのだろうか。
入ってもいいのか?
「起きてくださーい」
シャノンが身体を揺さぶりながら声をかける。
「はっ!……天使がいる。ついに門番しながら死んでしまったのか。こんな可愛い女の子なら死んでもいい」
いきなりシャノンにキスをしようとする老人。
「キャッ」
シャノンより先にラッキーが反応し吹っ飛ぶ老人。
あっ……本当に天に召されたな。
そう思ったが意外と老人はしぶとかった。
ラッキーちゃんと加減をしたようだが本当にやめて欲しい。
「なんだ? せっかく気持ちのいい最後の夢を見ていたのに。お前らこんな田舎のチヨウシノ村になんのようだ? 盗賊か? 食料ならないぞ。もうすっからかんだ。俺も数日ロクな物を食べていない」
「いえ違いますよ。旅の者です。ちょっとこの先の洞窟へ行く途中に寄らせてもらいました。こんなところに村があったんですね」
「あぁ小さいがな。なぁお前ら何か食料持っていないか? もしくは冒険者ならなにか狩ってくる力はないか? ゴブリン以外で」
「食料ですか? ないこともないですし狩ってくることもできますよ」
「そうかそれならちょっと村長のところに連れていくから相談をさせてくれ」
俺たちは訳もわからず村長の家まで案内される。
村の人たちはラッキーを見ながら驚いているが村人たちはどの人も痩せていた。
ただ、王都周辺では特にここ数年は飢饉など起こっていないはずだったが。
村長の家に行くと村長の家はかなり質素な感じだった。
「村長! 旅の人を連れてきました」
「おぉそうか。悪いな。今日はちゃんと起きて偉かったな」
「何を言ってるんだ。俺くらい優秀な門番になれば寝てたとしても気配でわかるんだよ。それにさっききた石像のようにワシがいれば一人で追い返してやるわ」
「そうか。そうか。動く石像を見たのか。認知症がでてきてるようだな」
「うるさいぞ。村長のくせに生意気だぞ」
老人同士が冗談を言い合っている。
ツッコミどころ満載だがガーゴイルはこの爺さん1人に追い払われたらしい。
俺が聞いていたガーゴイルは精鋭部隊というのはきっと冗談だったに違いない。
「初めまして王都クロントの冒険者のロックといいます。こっちがシャノンでこっちが従魔のラッキーです。門番の方から案内をして頂いたんですが何かご用でしょうか?」
「旅のお方、申し訳ないんですが今この村には食料がなくなってしまって、どうにか助けてくれませんかの」
「食料がなくなってしまっているのはいったいどうしてでしょうか? 特にここ数年飢饉などは起こってないはずですが、何か魔物か盗賊でもでましたか?」
「そうなんじゃ。ゴブリンがこの先の緑園の沼地に半年前から出没するようになってしまってな。若い男たちが退治に出たんじゃがそれも怪我人を増やしただけじゃった。近くの村までは歩いて1日半なんじゃが、ゴブリンの相手をしている間に道が草で塞がってしまっての。畑も縮小していたところに再度ゴブリンが襲ってきてな食料を奪われた。もう踏んだり蹴ったりじゃ」
ゴブリンは害しか生まない魔物の代名詞だ。
無駄に知能があり人を襲い、人が育てた食べ物を奪って行く。
少数であれば問題がないが、数が増えればかなり厄介なことになる。
「そうしましたら正式にギルドの方へ依頼をして頂ければと思います。厳しいようですが冒険者は慈善事業ではありませんので。ギルドを通して頂ければ対応をさせて頂きます」
「依頼はしたさ。もちろん国へも訴えた。だけど依頼金が払えないこの村は相手にもしてもらえなかった。このままじゃ村を捨てるしかない。でもせっかくみんなで作った村を捨てるなんてことはそう簡単にはできんのじゃ」
村長さんの村を思う気持ちは痛いほどわかる。
だけど……善意で人を助けていては冒険者として生活していくことができない。
とても辛いことだが村を捨てるという選択も時には必要になる。
もし今回俺たちが助けたとしても、次回も同じように助けがあるとは限らないからだ。
ただ、条件によっては……。
「俺たちも今別の依頼があるので、何とかしてあげたいのは山々なんですが。ちなみにゴブリンのでる場所はどこですか? このあたりの地図ってあります?」
村長が地図を持って来てくれたので俺は見比べる。
なるほど。
これならなんとかなるかも知れない。
「ゴブリンの方はなんとかなるかも知れません。それと食料も途中にキャベッツの群生地があったので飢えは凌げると思います。ただ、このままいけばまた同じことを繰り返すだけです。村の発展のために協力をしますので、今後村に入ってくる収益から利益の2割を頂けるのであれば、問題を解決して協力しますよ」
「2割ですか……なかなか私一人では決められる額では……」
「俺たちも今他の依頼を受けています。なのでもしその依頼に村人全員が協力をしてくださるなら1割でいいです。もちろん利益の1割ですので売上から税金や人件費を引いた金額からでかまいません。もしできなくてもゴブリンの間引きと食料はお手伝いしましょう。村としても悪くはない取引だと思いますよ」
この村の根本的な問題は他の街からの交通が遮断されている上に、畑もロクに整備されておらず特産品もないから外貨を得て必要な物を得られていないのだ。
ただで助けることはできる。
でもそれは村人にとってもいいことにはならない。
「わかった。ただ村のみんなと相談をさせてくれないか」
「いいですよ。あまり時間がありませんので早めに決断をして頂ければと思います。外にでていますので決まったら教えてください」
俺たちは外にでて村長たちの決断を待つ。
「シャノンとラッキーちょっとここで待っていてくれ。俺は箱庭の中に入ってくる。村長がでてきたら教えてくれ」
『あいよ』
「わかりました」
俺は箱庭の中で従魔たちを集める。
「今からみんなに協力して欲しいことがあるんだけどいいかな? もちろん終わったら美味しいご飯をご馳走するから」
従魔たちに今からやることを説明する。
村長たちに断られる? そんなわけはない。村長たちには利益しかないのだから。
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いよいよ明日2巻が発売です!
目印は可愛い人魚です。
本があなたが来るのを待っています。
お気に入りの書店でぜひ手に取ってください!
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