第7話 モンローの再来 セクシー&キュート美女 チーム完成


 アイリスの思いがけない、


「十八世紀に行ってもいいわよ」発言。


 自分から誘ったくせにアンはうろたえてしまう。



―――こんなにうまくいくはずがないのに、、うまくいくなんておかしいのに。


 一体……やはりマリア・テレジアの言っていた予言めいた言葉は現実になっていくのだろうか?


 さらにアイリスは言葉を続けて、


「もう一人チームに要るのよね? 三人目の美女は私がスカウトしておくわ」


―――そんなお気遣いまで、アイリスったら! 本当に流れるようにつながっていく。


「え? それは本当に助かるけれど、条件は結構厳しめよ」


「大丈夫よ、スカウトするのは、フィービー……」


「フィービー? フィービーってまさか、あのフェロモン美人女優を?」全部言わせず、アンはかぶせた。


「ええそうよ、彼女をスカウトするわ」


「フィービー・フロスト!?」




フィービーは新たなセックスシンボルとして映画にネットフリックスにテレビに世界中で引っ張りだこの女優だ。あまりのフェロモンぶりにマリリン・モンローの再来といわれている女優だ。




ふわふわしていてつかみどころがなく、セクシーでキュート。


男性からの人気は桁外れだ。




かといって、無駄でメリットのないスキャンダルも起こさない。

バカっぽく見えてバカではない女優ランキングで一位を取っていた。



「どう? フィービーならマリア・テレジアの条件に当てはまっているでしょう?」




――当てはまる、当てはまる。完璧よ!




「天使のようなあどけなさと、セクシーさが綺麗に溶けている美女は彼女しかいないと思うのよ。それに、アンの言う追加条件にも当てはまるのよ。彼女、ボーイフレンドがフランス人ばかりで、かな~り話せるから」




 アンは願っていたがこんなにうまくいくとは思えない展開をありがたいというよりは、やや怖気づいた気持ちで受け取った。




 こんな胡散臭い話、広げていっていいのかしら? タイムスリップよ。自分で誘っておいてビビるアン。


「フィービーは信じてくれるかしら、こんな話を。きっと頭がおかしくなったと思われるわよね」




「大丈夫、まかせて。そもそも私も信じていないわ。こんな話、信じる人がいたら病気よ」


―――アイリスは、こんな話を持ち掛けたアンを目の前にして平気で笑う。


「でも、もしフィービーが一緒に行くって言ってくれたら、すべてはマリア・テレジアの導きってことで納得できそうじゃない?」 と続ける。



 そんなものかしら?


 アイリスは嫌味でも皮肉でもなくさわやかにしめくくった。


 アイリスは会話していて嫌な気分にさせられることがない。


「アン、少しだけ待ってて。フィービーに声をかけるから。話がついたらこっちから連絡するわ」


 段取りもいいアイリス。確かに十八世紀でもその力を発揮してくれるだろう。


 でも、本当にこんな話を広げていいの――? 十八世紀のヴェルサイユ宮殿に行くのよ!


 アンはアイリスがチャットを終わらせたのを確認して自分も切った。


 アイリスがまともに受け合うはずはないと理性で思っていた。


「なに馬鹿なこといっているのよ、アン」と軽くたしなめられて話を変えられてそれで終わりと思っていたのに。


 なのに、どうだろう。理性の判断と全く違う方向に進んでいく……



 二日後、アンのデバイスに二人の絶世といっていいほどの美女が映ることとなった。


 アイリスはいつもの品ある優しい笑顔だ。でも、フィービーが何というか。


―――どう彼女に伝える? アンは言葉を選んで伝えようと―――


「アン、フィービーも十八世紀に一緒に行きたいって」 


 微笑みながら、アイリスは静かに要点を伝えてくる。


 二回立て続けにおかしな奇跡が起きる。奇跡は三日に二回起きるものではない。


「アイリス、本当に?」


 視線は画面の中を少しだけ移動して、フィービーに移る。


「ええ、本当よ。こんにちは。アン。アイリスから伺ったわ」


 フィービーがアイリスの代わりに答える。


 フィービーはふわふわのブロンド巻き毛の、ベイビーフェイス&セクシーを地でいく美女だ。


 目元は少し眠たそうな目で今もこちらを見てくる。この少し眠そうな目というのは、なぜか色っぽく見えるのだ。


 反対に口元はモンロー並にぽってりしていて、パールのグロスが綺麗にのっている。


 ピンクベージュのタートルを着ているが、ブロンドとピンクベージュの甘いグラデーションといったら、光に包まれているようだ。


 巻き毛の合間から、きらきら光るロングピアスが透けて見える。


 フィービーは屋外ではないにしろ、太陽の光がふんだんに入る場所にいるらしい。日当たりのいいカフェだろうか。


 太陽光のなかだと、普通は顔に変な影ができて美しくは見えない。


――でもそこは、フィービー。美貌を謳われる女優。


 太陽の位置を計算して、座る場所を決めたのだろう。女優だからこそ、変なスマートフォンの小細工アプリばかりに頼らないのだ。


 自身が美人女優ともてはやされるアンから見ても、

 フィービーの顔立ちは、「可愛さとセクシーが絶妙に合わさった」としか表現できない。

 アイリスの美しさが 清楚、知的、優雅、高貴、すこしの哀しみ、と、こんなイメージだとしたら


 フィービーの美しさはピュア、セクシー、華やか、かすかな毒と罠、こんなところだろうか。


 この美女二人を見たら、小うるさい条件をつけてきたマリア・テレジアも文句は言えないだろう。


 あれほど悩んでいたのに、こんなに簡単に一緒に行ってくれる人が見つかるなんて。信じられない、何かの奇跡じゃない?


 マイアミのビーチに行くんじゃなくて、十八世紀のヴェルサイユ訪問なのに!


 オーディションに落ちた分、こっちにミラクルが起きるってこと? いえ、何かがおかしい。


 そうおかしすぎる、でも、ここまで来たら、進むしか道はなさそう。そうね、そうだわ! メンバーが決まったら、次は持ち物リストを作らなくては!




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