魔物にテイムされた俺

すぐり

第1話おお、勇者よ。なんと情けない。

ほら、良くあるだろ?

ラノベとかでさ、異世界転移ってやつ。

王様とかに呼ばれたり、神様の手違いのお詫びとかさ、色々あるだろ?

勿論そういうのが一切ない、所謂落ちたってのもある。


多分俺はそれだ。


那須藤孝、高校生。

1人でめでたい名前だってよく言われる。

ぶっちゃけ異世界転移はびっくりしたけど、混乱はない。

よくラノベ読んで行ってみたいと思っていたからだ。


とはいえ、いきなり空からダイブはビビった。

普通、草原とか森とかじゃないの?

まぁ、真下が森で木がクッションになって助かったけど。

お陰であちこちが痛む。


けど、それより!


異世界転移でよくあるチーレム!

魔法とか剣の才能があったり、インベントリは当然として、可愛いくておっぱいでかい女の子にちやほやされちゃったりして、やれやれだぜってやつ!

そんな未来が待ってるなんて俺最高じゃね?

神様ありがとう!!


なーんて、思ってたんだけどな…。


兎がいたんだ。

角生えてる、所謂ホーンラビットってやつ?

そいつに腹刺されて今逃げてる真っ最中。

血はどくどく出てるし、兎は追いかけてくるし、絶体絶命なんだけど。


軽く言っても現実は変わらない。

変わってくれない。


俺、ここで死ぬのかな?

転移して、これからだって思ってたんだぜ?

こんな序盤で死ぬとかないだろ。


足がもつれて倒れ込む。

血の流し過ぎか意識が朦朧としてくる。

後ろから兎がやってくる。


いやだ。


死にたくない。


誰か、助けて。


手を伸ばすとそこには柔らかな感触があった。


これは、おっぱい?




目を開けると天井だった。


「おっぱいは?」


いや、違う。

ここは言うべき言葉がある。


「知らない天井だ」

「いや、そんなキリッとした顔で言っても、最初に零した言葉はなくならないからね?」


俺以外の声が聞こえて飛び起きると、そこにはふくよかなおっさんがいた。


ば、馬鹿な!?

あの柔らかな感触はまさかこのおっさんのふくよかな腹だったとでも言うのか!?


「君、声に出てるからね?まぁ、デブって言われるよりマシなのかな?」

「えっと、失礼しました。…よく覚えていないのですが、助けてくれたのは貴方ですか?」

「うーん、ベッドに寝かせたのは私だけど、助けたと聞かれたら違うかな」


よくよく見てみると、確かに俺はベッドの上だった。

どこまで動揺してんだ、俺。


というか?

俺を助けてくれた人がこの人じゃないって事は、やっぱりアレは…。


「なんと言ったらいいのかな?信じられないかもしれないけど、君を助けたのは人じゃない」

「人じゃない?」



「魔物だよ。


始まりの主と言われる魔物さ」

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