戦闘員の談話:キャバクラに行くヒーローって何よ?

シオカワの戦闘員のメンバーである宮原慎一みやはらしんいち石内孝之いしうちたかゆき

20年選手のベテランである。二人で一つの様なシンパシーを感じ

口では腐れ縁と言いながらも修羅場を潜り抜けていた。


二人の悩みと言えば、戦闘員として売れない生活を送り出世からは程遠い事。

ある時は戦闘員、ある時はアルバイト。そんな感じで過ごしていた。

後輩に慕われ、二人とも若手戦闘員達から慕われてる事が救いといったところか・・・


宮原は言った。

「しかし、一番興奮するって言うのは生き延びたって実感する時だね。」


石内はさも漫才の様に返す。

「間違いないね」


ヒーローショックと呼ばれた就職難を経て辿り着いたシオカワと言う働き口。

文字通り命がけの仕事ではあるが保険会社から負傷休業手当が多めに出て

大怪我しても生活には困らない。アルバイトの心配もしなくて良い。

何故なら悪の組織シオカワと怪人共済が街を循環させているのだ。

適材適所な求人が良い感じに回ってくる。


才能があれば怪人にもなれるがいよいよヒーローの敵として見られかねないから

中年男になっても独り身が寂しく無ければどうにかやっていけるものなのだ。


また宮原が切り出す。

「ところで、この前キャバクラのボーイとして働いてたんだけどよ」


「お前、夜の街系の仕事多いな。俺もパチンコ屋でバイトしてっけど」


石内は女好きだが、現実と言うのも良く知ってるからその手の仕事は

あまりやりたがらなかった。


「この前さー。ウルトライダーパンサーが来てさ。」


「マジかよ。キャバクラにヒーロー来るって何よ?」


「いやー。かなり派手に使ってったよ。キュアキュアコール久々に入ったもん。」


「ヤバヤバ」


説明しよう。キュアキュアコールとは

プリティな女の子複数名でサービスするフルコースなのだ。


「んで、何が一番ツボるかつったら、酔いが回って、

 『俺の本当の変身は、ベッドの上で・・・豹変するぞー!』って下ネタ出ちゃってね。

 パンサーだから豹変!みたいなノリで・・・あーウケる・・・」


「ヒーローがシオカワに金落としてるとかマジ本末転倒だよな。」


そう。この街の経済活動はシオカワの営利目的。すなわち系列企業なのだ。

宮原と石内は大笑いしながら、お互いの苦労を労う。

しかし、二人の会話はだいたい一つの話に落ち着くのだ。


「なぁ石内。」


「どったよ?」


「一番敵に回せないのって怪人共済のあの保険屋だよな」


「間違いないねー・・・」


末端の戦闘員である自分らの名前と顔を逐一憶えていて

会う度に「お変わりはありませんか?」

と目の奥が笑ってない笑顔で接してくる塩河迫しおかわせまると言う男。


自分らより若いとはいえ、あの政治力の前には

幹部ですらご機嫌伺いでご贈答を欠かさないと言うのは有名な話だ。

怪人共済のバックアップの元で悪の組織が成り立ってると言う世界で

ある意味全く彼らは気を抜けないのであった。



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