『火の島』 下の下の中

やましん(テンパー)

 『火の島』 下の下の中 


 お互いに、武器は使わない宇宙ゴキの兵と、武器のない、みためくまさん族の反乱軍団は、なぐりあいの乱闘になっておりました。


 宇宙ゴキ側にすると、用意した武器が、まったく効果を成さないためでした。


 もちろん、最終的には、宇宙ゴキ側が、圧倒的な力があることを、みためクマさん族側が、いやというほど認識しているからでもあります。


 はっきり言って、彼らは、勝てるとは思っていなかったのです。


 しかし、長年の宇宙ゴキ支配に、嫌気がさしていたのです。


              ⚔


 宇宙ゴキは、核兵器も持っていますし、核兵器をはるかに超える、重力兵器も持っていました。


 惑星一個破壊するのは、簡単なのです。


 そこまでゆかなくとも、惑星上の生物を、一掃してしまう『殲滅爆弾』というものを、宇宙ゴキは開発していました。


 その威力は、調整も可能で、破壊範囲を設定もできます。


 この惑星には、大陸が三つあり、それぞれにみためくまさんの収容所があります。


 宇宙ゴキのボスは、惑星全体を殲滅したかったのですが、さすがに副官が止めたのです。


 『あなたに、この星のわれわれ同胞全部を撤退させる権限はない。越権行為です。』


 そこで、ボスは、その理屈は受け入れるしかなく、仕方なく、殲滅範囲を、この大陸だけに狭めたのです。


 こいつを使うと、炭素系の生命体の細胞が、まったく機能しなくなるのです。


 宇宙ごき自身もやられますから、逃げ出す必要がありました。


 多くの兵士を見殺しにするのは、人類には、あまり考えにくいかもしれないですが(やったらしき国はあるけど。)、宇宙ごきにとっては、モラル違反にはなりません。


 そこが、恐ろしいのです。


 なにやら、地響きがしました。


 『おわわ。なんだくま。』


 反乱軍のリーダーである、あの、みためくまさんの父親が言いました。


 『こおりゃあ、おかしい。地震ではないくまら。あぎゃ、みろくま!』


 宇宙ゴキ本部の中央部分が、ぐらぐらと揺れ動き、上昇を始めたのです。


 『きゃつら、脱出するつもりくまま。』


 『こいつらは、置き去りか。』


 しかし、それがあたりまえの宇宙ごき兵士は、戦いをやめません。


 『脱出した方がよいくま。ここは、危険くまら。』


 リーダーが叫びました。



    ************



 地球ごきの援軍は、武器の使用を控えていましたが、ついに、G光線銃の使用に踏み切りました。


 みためクマ族は、地球ゴキのシールドによって、宇宙ゴキの兵器からは保護されています。


 そうなると、取り残された宇宙ゴキには勝ち目がありません。


 『殺すな。麻痺モードでよい。』


 地球ごきの隊長、ごきらららんは、つぶやきました。


 『このシールド作戦が効果を発揮するなら、地球の奪還も近いな。』


 宇宙ゴキの兵士は、あっというまに、なぎ倒されて行きました。



    ************************


 しかし、火山に投入された地球ゴキの新兵器からは、この巨大な火山から吐き出される噴煙に乗って、大量の、宇宙ゴキの戦闘能力を奪うガスが、発生され始めました。


 うまく行けば、この惑星上の全宇宙ゴキは統治能力を喪失します。

 

 そのガスは、瞬く間に、惑星全体に広がるのです。


 『連中、撤退しはじめたらしい。』


 ぼくが、乱闘現場からの報告を聞いて言いました。


 『なんか、企んでる感じらしい。』


 それを聞いていた焼き鳥おじさんが叫びました。


 『まずい。殲滅爆弾を使う気かもしれない。あの司令官は、ちょっとあぶないごきなんだ。出世欲が強く、自己顕示欲が強く、残忍で、ユーモアがない。ぼくの掴んだ情報では、最近中央からの覚えが悪くなり、少しやけっぱちらしい。』


 『その、せんめんき爆弾と言うのは、どこにあるにゃん?』


 『殲滅爆弾は、本部の中央にあるという。』


 ぼくは、地球ゴキに、この情報を伝えました。


 『わかったごき。おいらが行く。ごきららら。』


 ごきらららん隊長が言いました。



  *****************************



 



 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る