『火の島』 下の下の中
やましん(テンパー)
『火の島』 下の下の中
お互いに、武器は使わない宇宙ゴキの兵と、武器のない、みためくまさん族の反乱軍団は、なぐりあいの乱闘になっておりました。
宇宙ゴキ側にすると、用意した武器が、まったく効果を成さないためでした。
もちろん、最終的には、宇宙ゴキ側が、圧倒的な力があることを、みためクマさん族側が、いやというほど認識しているからでもあります。
はっきり言って、彼らは、勝てるとは思っていなかったのです。
しかし、長年の宇宙ゴキ支配に、嫌気がさしていたのです。
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宇宙ゴキは、核兵器も持っていますし、核兵器をはるかに超える、重力兵器も持っていました。
惑星一個破壊するのは、簡単なのです。
そこまでゆかなくとも、惑星上の生物を、一掃してしまう『殲滅爆弾』というものを、宇宙ゴキは開発していました。
その威力は、調整も可能で、破壊範囲を設定もできます。
この惑星には、大陸が三つあり、それぞれにみためくまさんの収容所があります。
宇宙ゴキのボスは、惑星全体を殲滅したかったのですが、さすがに副官が止めたのです。
『あなたに、この星のわれわれ同胞全部を撤退させる権限はない。越権行為です。』
そこで、ボスは、その理屈は受け入れるしかなく、仕方なく、殲滅範囲を、この大陸だけに狭めたのです。
こいつを使うと、炭素系の生命体の細胞が、まったく機能しなくなるのです。
宇宙ごき自身もやられますから、逃げ出す必要がありました。
多くの兵士を見殺しにするのは、人類には、あまり考えにくいかもしれないですが(やったらしき国はあるけど。)、宇宙ごきにとっては、モラル違反にはなりません。
そこが、恐ろしいのです。
なにやら、地響きがしました。
『おわわ。なんだくま。』
反乱軍のリーダーである、あの、みためくまさんの父親が言いました。
『こおりゃあ、おかしい。地震ではないくまら。あぎゃ、みろくま!』
宇宙ゴキ本部の中央部分が、ぐらぐらと揺れ動き、上昇を始めたのです。
『きゃつら、脱出するつもりくまま。』
『こいつらは、置き去りか。』
しかし、それがあたりまえの宇宙ごき兵士は、戦いをやめません。
『脱出した方がよいくま。ここは、危険くまら。』
リーダーが叫びました。
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地球ごきの援軍は、武器の使用を控えていましたが、ついに、G光線銃の使用に踏み切りました。
みためクマ族は、地球ゴキのシールドによって、宇宙ゴキの兵器からは保護されています。
そうなると、取り残された宇宙ゴキには勝ち目がありません。
『殺すな。麻痺モードでよい。』
地球ごきの隊長、ごきらららんは、つぶやきました。
『このシールド作戦が効果を発揮するなら、地球の奪還も近いな。』
宇宙ゴキの兵士は、あっというまに、なぎ倒されて行きました。
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しかし、火山に投入された地球ゴキの新兵器からは、この巨大な火山から吐き出される噴煙に乗って、大量の、宇宙ゴキの戦闘能力を奪うガスが、発生され始めました。
うまく行けば、この惑星上の全宇宙ゴキは統治能力を喪失します。
そのガスは、瞬く間に、惑星全体に広がるのです。
『連中、撤退しはじめたらしい。』
ぼくが、乱闘現場からの報告を聞いて言いました。
『なんか、企んでる感じらしい。』
それを聞いていた焼き鳥おじさんが叫びました。
『まずい。殲滅爆弾を使う気かもしれない。あの司令官は、ちょっとあぶないごきなんだ。出世欲が強く、自己顕示欲が強く、残忍で、ユーモアがない。ぼくの掴んだ情報では、最近中央からの覚えが悪くなり、少しやけっぱちらしい。』
『その、せんめんき爆弾と言うのは、どこにあるにゃん?』
『殲滅爆弾は、本部の中央にあるという。』
ぼくは、地球ゴキに、この情報を伝えました。
『わかったごき。おいらが行く。ごきららら。』
ごきらららん隊長が言いました。
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