<<004 お嫁さんにしてくれる?





 なんで逃げるの? 本当に私の事が嫌いなの? りょうくん。


 私の方を振り返らずに逃げる彼を追うのをやめる。


 真っ黒の本に書かれてたみたいにズタズタに引き裂いたりしないのに、少しだけ血を貰ってりょうくんを私のモノにしたかっただけなのに。


 むむむ、契約は絶対ってこの本には書いてあるけど、りょうくんが逃げるならやめた方がいいのかな。


 そして昔の約束も絶対。


 もうそろそろ学校なので、包丁をしまう。


 ちゃんとりょうくんとの約束は守らないとダメなの。


 りょうくん覚えてるかな。



『りょうくんの理想のお嫁さんってなにかな? 教えて』


『う~ん、俺より馬鹿だとダメだ、俺は何時でも守るけど、俺に色々な事を教えてくれるような女の子がいい』


『が、がんばる』


『毎日、俺を起こしに来たり! 俺は朝が弱いからな、あんまり寝てたら遊ぶ時間が減る』


『うん!』


『オレの前では甘えてもいいけどな、他の人の前では自慢できる女の子がいいな』


『それが結婚してくれる条件? 私りょうくんのお嫁さんになりたい』


『じゃあ、他にも言うから俺の言ったことは覚えとけよ、俺の理想のお嫁さんになりたいならな!』


『うん』


 りょうくんに嫌われないように頑張らなくちゃ。






「はぁ、はぁ、追ってこないな」



 その場でスマホを取り出しスレッドを開く。



0185 名無し 2021/04/24 06:30:56

ヤンデレを巻いた。


0186 名無し 2021/04/24 06:31:10

<<185

生還したか。


0187 名無し 2021/04/24 06:31:13

<<186

なんとかな。


0188 名無し 2021/04/24 06:31:40

<<187

前のコメ見たわ……女に嫌われ続けた俺がお前に嫌われる方法を教えてやる!


0189 名無し 2021/04/24 06:32:02

<<188

お願いします。


0190 名無し 2021/04/24 06:32:05

<<189

俺は好きになった女にものすごく優しくしているだけでキモいって言われたぞ! 試してみろ。



 優しくか……ものすごく優しくしたら嫌われるってのもおかしいが、女心ってわかんないもんな。



0191 名無し 2021/04/24 06:32:11

<<190

ありがとう、試してみる。


0192 名無し 2021/04/24 06:32:13

<<191

女に嫌われる方法聞かれて、感謝されたの初めてだわ。完璧美少女を自ら手放すお前は馬鹿な奴だけどな。



 バカでもいいんだよ……俺なんてイケメンのアイツには到底及ばないんだからな。


 何時からだろうか、フミカの好意が嫌になったのは……。


 俺がオタクとしてズッポリハマっていったのもあの時かも知れない。


 中学生の時だった、俺は小学校から見ていたアニメを好きだったから中学でも普通に見ていた。


 最初はそんなもんだったが、中学生になって見てる奴は誰もいなかったんだ、周りに。



『お前ってさ、フミカちゃんと釣り合い取れてねぇよオタクが!』


「オタクじゃねぇよ、好きだから見てるだけだろ! しかもフミカは関係ねぇよ!」



 中学になると環境は全く違っていて、小学校からの友達もそんなにいなかった俺はすぐさまボッチという感覚を味わっていた。



「フミカ、フミカってお前、フミカちゃんの何?」



 中学生になり始めると女の身体は早い段階で成長していった、フミカもそれに……違うな、フミカは飛び抜けて可愛くなっていた。


 放課後は何時も帰ろうと言うフミカの誘いをボッチの俺が受けていたのが腹立たしいと感じる者も少なからず居たのも知ってる。


 ボッチはそういうのに敏感になるからな。


 そして入学してグループや立場がハッキリしてくる時期に学年で一番頭のいいイケメン、しかもフミカを好きな奴に絡まれたのだ。



『お前には関係ねぇだろ』



 そういうのに敏感だった癖に強気に出てしまった俺は。



『そうかよ! お前みたいなオタクが調子に乗んなよ、フミカちゃんはお前には相応しくない』



 そう言って去って行ったイケメン君がどれだけの権力があるかを見誤っていたし、イケメン君の言葉も深々と俺の心に突き刺さった。


 そして俺はまもなくイジメを受ける。



『一緒に帰ろ、りょうくん』



『近寄んな! お前とはもう帰らない』


 

 帰ろうと言ってくれたフミカの瞳にはうっすらと光るものが流れたような気がした、それでもフミカはずっと笑顔で……。


 全部フミカが悪いという訳じゃないが、それからは逃げるようにアニメに走り、フミカを遠ざけるようになった。




『やっぱり俺じゃダメなんだよ』



 一言呟いた俺は高校に向かって足を進める。




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