ダーティーメアリー・必殺魔族処刑人

南極ぱらだいす

第1話 プロローグ

「いやー、やめて、ひどいことしないで!」


深夜の森の奥深く。全裸で首輪をつけただけの少女が二匹のゴブリンに無理やり引きづられるように小路を移動している。


「うるせい、この薄汚い人間の雌ガキが」


小柄なゴブリンのほうが、泣きながら抵抗する少女の髪を力いっぱいひっぱる。少女のまだ未成熟な身体は痣や擦り傷だらけだ。長時間、裸で森の中を逃げていたためにそうなってしまった。


「痛い、痛い、痛い、髪を引っ張らないでください!」


もう一匹の大柄のゴブリンは少女の首輪についた鎖を握っている。あまり少女が激しく抵抗するので、頭にきた小柄なゴブリンが少女を道端で押し倒し、犯そうとする。


「奴隷がナマいってんじゃねーよ、奴隷の人間が逃亡したら、どうなるか身体に思い知らせてやる」


「バカ野郎、そのガキは生娘だ。犯したら、ボスに殺されるぞ」


大柄のゴブリンが止めに入る。悔しそうに諦める小柄なゴブリン。


「くそ、つまらねーな。逃げ出した奴隷を苦労して捕えてもご褒美もなしかよ」


「まあ、そういうな。ボスがヤリ飽きたら、俺たちに回してくれるさ」


大柄なゴブリンが少女の身体をいやらしい目でなめまわす。


「そのころには完全に壊れてて、身体中の穴もガバガバになってるから、全然楽しめないぜ」


ここの領主のオークは3メートルもの巨体で、当然性器も人間とは比べられないほどの大きさだ。奴にもう何十人も人間の奴隷の女が壊されてしまった。こいつもすぐに壊されて、俺たちに払い下げられた時にはがばがばの肉袋になっているだろう。そんな小柄なゴブリンは不満を察した大柄のゴブリンが相棒に不満のはけ口を提案した。


「なら、また人間の村でも襲って、何人が娘をさらってくればいい」


「もうこの辺りの村でめぼしい人間の娘はいねーよ」


「なら、奴隷商人の一行を襲えばいい。若い女以外はその場で皆殺しにすればいいさ」


人間の中にも魔族に従属する輩はいるが、奴隷商人はその中でも特に悪質だ。同胞を狩って、魔族に売り渡しているのだ。だから、人間には魔族より憎まれていて、そいつらが襲われて死んだとしても誰も気にしない。


「ボスにどやされないか」


「なあに黙ってれば分かりゃしない。仲間も誘って派手にやろうぜ」


ようやく小柄なゴブリンも気分が高揚してきた。人間の若い雌を犯すのは何よりも楽しい。やつらが泣き叫ぶのを聞くといつだって気分は最高だ。ついでにこっそり孕ませてみるのも悪くない。


「決まりだな。じゃあ、さっさとこいつをボスに引き渡して、屋敷の人間の若い雌奴隷どもでも犯りまくって、楽しもうぜ」


屋敷にはこの奴隷以外にも若い娘の奴隷が何人もいる。みんな領主にさんざん弄ばれたガバガバの中古品か、子を産んだことのある年増だが、贅沢はいってはいられない。ゴブリンの性欲は異常に強く、毎晩ヤラないと身体の調子が悪くなるほどだ。

とにかく雌の穴がついてりゃ、なんでもいい。早くこいつをボスに引き渡して、今夜の玩具を手に入れないと。


その時、二匹のゴブリンの目の前にフード付きのマントを被った人影が現れた。


「ん、おい、あそこに誰かいるぞ」


こんな夜更けに、しかも魔族の領地に出入りするなんて、どこのどいつだ。


「なんだテメー、魔族じゃねえな。人間、いやエルフか」


ゴブリンの鼻は犬なみの嗅覚がある。臭いだけで魔族かそれ以外かすぐに判別できる。しかもこの臭い、雌の臭いだ。人間の雌もいいがエルフの雌は格別だ。連中歳をとるのが遅いから、長い間楽しめる。


「この臭いは雌だな。これやいい手土産ができた。おい、おまえ大人しくこっちにきな。逆らうと手足ぶたっぎつて、死ぬまで穴奴隷として俺らの肉便器にしてやるからな」


少女の首輪の鎖を相棒に手渡すと、大柄のゴブリンがフードの女性に近づいていく。


「さてと、可愛いお顔でも拝ませてもらうか」


ゴブリンがフードに手をかけた瞬間。辺り一面に凄まじい銃声が鳴り響いた。


「・・・うお・・・そ、ん、な」


大柄のゴブリンのどてっぱらに直径10センチもの大穴が空いていた。


血を吐きながら、フードを手で払うゴブリン。中には銀髪碧眼の氷のような冷たい目をした女が、煙草をくわえ、無表情でこちらを見つめていた。血を吐きながら、女を睨むゴブリン。


「ぐはああ、お、おまえは何者・・・」


再び鳴り響く銃声。今度はゴブリンの頭が吹き飛び、地面に死骸が横たわる。


「ひいいいいいいいい」


見たことのない武器で、相棒が殺された小柄なゴブリンは大声で叫び声を上げると、

少女奴隷の首輪の鎖を手放し、慌てて一目散に逃げ始めた。


フードの女は硝煙が立ち上るソードオフの二連のショツトガンを腰に戻すと、もう片方のホルスターから9.5インチのリボルバー式の拳銃45マグナム、スーパーレッドホークを引き抜き、よろよろと逃げる獲物に狙いをつけた。そして、ハンマーを親指で引き起こすと、トリガーに指をあて、獲物の頭部に向けて銃口を定め、トリガーを引いた。


バズン、という腹の底に響きわたるような重い銃声とともに、発射された45マグナム弾は一直線に飛び、逃げるゴブリンの後頭部から顔面を突き抜け、顔を後かとも無く吹き飛ばした。ゴブリンはばたりと倒れ、そのまま動かなくなった。


奴隷の少女は目の前にころがる二体のゴブリンの死体を見て、ショックのあまりお漏らしをしながら、がたがたと震えていた。


フードの女は二体のゴブリンの死骸を足で蹴って、死亡を確認すると震える少女の傍まで近づいてきて、彼女に話しかけてきた。


「おまえ、名前は」


「ク、クラリス。スターリング村のクラリスといいます」


「歳は」


「15です」


「奴隷商人に魔族に売られたのか」


「はい、ひと月ほど前、村が奴隷商人にやとわれた魔族に襲われて、奴隷にされて、ここの領主の魔族に売られました」


「おまえを売った奴隷商人の奴隷の中にわたしと同じ髪の色をした少女はいなかったか」


「いいえ、見ませんでした」


「そうか・・・逃げるならこのまま川沿いに下れ。しばらくいけば人間の村がある。匿ってくれるだろう」


「・・・あなたは、あなたはこれからどうするんですか」


「ここの領主の魔族と部下たちを皆殺しにする」


そういいながら、女は銃に弾丸を再装填した。


「無茶です。手下は100匹以上いますし、領主は3メートルもあるオークなんですよ。一人で行くなんて自殺しにいくようなものです」


「一人じゃない。相棒も一緒だ」


マントを手で払うと、彼女の全身は、少女には見慣れない武器、銃と弾薬でいっぱいだった。


「さあ、早くいけ。じきにこのへんはドンパチ騒がしくなるからな」


ゴブリンの死骸からとったボロキレで裸体を隠した少女は領主の屋敷のほうに歩いていく謎の女にむかって叫んだ。


「あなたの名前、名前を教えてください」


少女の言葉に、一瞬歩みを止めた女はこちらを向いて、こう答えた。


「メアリー。LAPD メアリー・アンダーソン警部・・・元警部補。それがわたしの名前だ」


少女にそういうと、メアリーと名乗った謎の女は、この土地の領主であるオークの屋敷に向かって歩き去っていった。




そうこの世界は、魔族が人間を家畜として支配する地獄のような異世界なのだ。

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