未来の勇者
カキピー
第一章 誕生
時は、西暦一万年。ここは、世界が終わりをつげ、新たな世界が誕生した場所だ。しかし、この世界は、魔王によって支配されており、人々は、魔王に歯向かうか、従うべきか、苦渋の選択の末、従うこととなった。
「えっさ、ほいさっ、よっこらせ」と、なんとも古臭い言葉を発しながら、この世界の人たち(正確には農業を中心に働かされている者)は、勤しんでいた。
この世界では、主に、農業、建設、僕、の三つに分類されている。
農業は、まだ優しいほうで、食べ物を作るだけで、あとは、自由という役職だ。自由といっても、その自由は、人々にとって、四時間睡眠、一時間自由というものだ。働かざるもの食うべからず、という諺があるように、人々には、魔王によって、心身をも支配されていたのだ。
そして、建設は、その名の通り、家を建てる、魔王の城を修繕、といったことをしている。農業よりも重労働で、過労死してしまうものも中にはいた。
そして、僕。これは、もう死ねといっているようなものだ。なぜなら、魔王にとって、僕は玩具そのものだからである。はじめは、肩を揉めだの、風呂洗えだのと、至って、従者としての使い駒の扱いだったが、次第に、殺り合えだの、殺せだのと、死人を出し、使い駒ではない扱いが増えてきたのだ。その結果として、少子化が進み、農業をする者、建設をする者、僕も減っていた。減っていくということは、魔王も怒りを溜めることになる。
そこで、とうとう、魔王が村人を数人搔っ攫い、化け物へと変えてしまったのだ。そして、その化け物になったものを、世界中へと放ち、まだ平和だった町などもすべて、混沌へと変わり果ててしまったのだ。
そんな中で、一縷の希望を持つ町があった。それは、ガイアという少年だった。彼は、運動神経がよく、武術、剣術に優れていた。しかし、そんな彼には、欠点があった。怠け者だ。そう、何を隠そう彼はすべてにおいて無気力、なんなら息をするのもめんどくさがるような少年だった。彼に怒りを覚え、暴力を振るおう者は、一撃でコテンパンにされる。ついたあだ名は、〈魔王の息子〉だ。町人は、そんなことを彼に言おうものなら、死を覚悟しろと言わんばかりである。そこで、町長は、彼にお願いをした。
「魔王を倒して頂ければ、この世界はあなたのものになり得るでしょう。そこでどうでしょう。魔王を倒すことができれば、私たちは、あなたのもとで働くことを誓う。どうかあの邪知暴虐な魔王を倒してください」と、直々にお願いした。
少年は、世界を自分のものにすることができるというのに、それすらも、興味関心がないように思えたが、了承した。しかし、魔王によって心身も支配されているのに、どうしろというのか。しかし、その少年は、すべてにおいて、やる気がなかったので、彼に対する魔王の支配ミジンコ並みに弱かったのだ。なので、多少、力を籠めると、簡単にその支配から逃れることができた。
ここから、無気力怠惰な少年の冒険が始まるのと同時に、勇者が芽生えたのだ。
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