第3話
「うぅっ! 頭が! 頭が痛いっ!」
次の瞬間、バッカーノは頭を抑えて踞ってしまった。
「やっと目が覚めましたか? 陛下?」
するとさっきとは違った穏やかな声でリコウリッタが話し掛ける。
「こ、これは!? 俺は一体今までなにを!?」
「陛下はこの女に操られていたんですよ」
「操られていた!?」
「そう。私が先程破壊したこのペンダント。これは魅了の力を持つ魔道具なんです」
「な、なんだって!?」
「私の国は魔道具の開発が盛んですからね。この女に会ってすぐにピンと来ました」
「な、なんてことだ...お、俺はなんということを...」
「記憶にはちゃんと残っているんですね?」
「あぁ、残ってる...自分でもいけないと思うのに止められなくて...ずっとモヤモヤを抱えていたんだ...俺は...俺は...人として最低なことをした...」
「大丈夫。まだ間に合いますよ? まず手始めに」
そこでリコウリッタはまだ呆然としているビッチーナを冷たく見下ろし、
「衛兵! この女をすっ裸にひん剥いて地下牢に入れなさい! 悪趣味なドレスもイヤリングもネックレスもピアスもティアラ全て回収しなさい!」
「ハッ!」
「嫌ぁ! 嫌ぁ! 助けて! 助けて! バッカーノ様ぁ!」
ビッチーナは必死にバッカーノに助けを求めるが、バッカーノは汚い物を見るような目で見下ろすだけで助けようとはしない。
ビッチーナが連行されて行った後、リコウリッタはテキパキと指示を下す。
「あの女が贅沢三昧してこの部屋に集めた家具や調度品、山のようなドレスにアクセサリーや宝石類は全て売り払います。いいですね?」
「あぁ、もちろんだ」
「それと陛下が左遷した臣下をすぐに戻して下さい」
「了解した」
「最後に国民に対する税率を当面の間ゼロにして下さい」
「ぜ、ゼロ!? い、いくらなんでもそれは...」
「この騒動が収まる間だけです。収まり次第徐々に元に戻します」
「し、しかし...」
パシーンッ!
リコウリッタのハリセンが炸裂した。
「つべこべ言わない! クーデターが起こって国が滅亡してもいいんですか!」
「すぐにやります!」
「よろしい! 直ちに取り掛かりなさい!」
「はいっ!...ところでさっきから振り回しているそれって...」
「これはハリセンと言います! 人にツッコミを入れるためのアイテムです!」
「そ、そうなんだ...」
「えぇ、なにせ私は陛下の教育係としてこの国にやって来たんですから! ビシビシ行きますよ!」
「きょ、教育係!?」
「えぇ、そうです。これは先代王妃ハカナイレーナの遺志でもあります」
「ハカナイレーナの!?」
「えぇ、陛下は知らなかったでしょうが、あの娘は病弱の身でありながらも、無理を押して我が国に留学して学んでいたんです。いつか陛下のお役に立てる日が来ることを夢見て。そんなハカナイレーナと私は友達になりました。彼女の私に対する最初で最後の頼み事が」
『陛下を、この国をどうか正しい方向にお導き下さい』
「その望みを叶えるべく、私はこの国にやって来たのですよ。健気な彼女は最後の時まで陛下を、そしてこの国の未来を憂いでいたんですよ?」
それを聞いたバッカーノは人目も憚らず号泣した。
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