第3話:ステータスオープン

「ハイヒール」

「ハイヒール」

「ハイヒール」

「やはり駄目です、副団長、死んだ人間を蘇らせるのは無理です」


 3人の治癒術士が回復魔術を唱えたが、俺の身体は動かない。

 見た目のケガは治るが、意識は戻らない。

 治癒術士が無駄な事だと言わんばかりの態度で、パーソン公爵とサイモン王孫に呼ばれていた中年男を見やる。


「愚か者、黙って術を続けろ。

 勇者様方が見ておられるのだぞ。

 無理矢理こちらに来ていただいた上に、仲間を殺したかもしれないのだぞ。

 そんな状態で誠意すら見せずに我らの願いを聞いていただけると思っているのか。

 泣き言など口にせず倒れるまでハイヒールを続けろ。

 魔力ポーションを寄こせ、私がウルトラヒールをかける」


 パーソン公爵と言う奴、平気な顔をしていたが、魔力切れ寸前だったようだな。

 顔が真っ青なのは元々ではなく、魔力切れ寸前で苦しいのだろう。

 やはり異世界召喚には莫大な魔力が必要なのだな。

 しかも1人だけでなく、俺とサクラを加えたら5人と1匹も召喚したのだ。

 術士達から奪われる魔力は、最初の計画よりも多かったのかもしれない。


「ウルトラヒール」


 副団長パーソン公爵が魔力回復ポーションを一気飲みして詠唱した。

 勇者を召喚するくらい危機的な状況だから、戦略物資と言っていい各種ポーションも、とても貴重なのだろう。

 そうでなければ術後直ぐにポーションを飲んでいたはずだ。


 まあ、そんな事はどうでもいい。

 俺が考えなければいけないのは、学生達の事だ。

 恩人である学生達が不利にならないようにしなければいけない。

 そうは思っても、幽体離脱している俺に何ができる訳でもない。


(ステータスオープン)


 広い部屋の柱の影から、他人に聞かれないような小声で呪文を詠唱する奴がいる。

 興味津々な表情を隠そうともせずに、ステータスオープンを使いやがった。

 学生達に内緒でステータスを覗き見しようとしてやがる。

 プライバシーの侵害だと文句を言いたいが、幽体離脱しているからできない。


 まあ、そもそも対人恐怖症の俺には幽体離脱に関係なく無理だけどな。

 仕返しに同じことをしてやりたいが、勇者召喚に巻き込まれただけの俺に、そんな力があるはずもなく、無理なのは明らかだ。

 まあ、でも、ダメもとでやってみるのもおもしろいか。


(ステータスオープン)


「チャップリン伯爵」

グランヴィル:25歳・権力欲のある養父に才能を見込まれ婿養子になる

      :魔術士団団長

      :召喚術を研究して成功させた魔術狂い

人体:基礎/レベル58

職業:魔術師/レベル10

  :HP/58/58

  :MP/58/58

「戦闘スキル」

召喚術:レベル10

治癒 :レベル10

木魔術:レベル10

火魔術:レベル10

土魔術:レベル10

金魔術:レベル10

水魔術:レベル10

風魔術:レベル10

鑑定 :レベル10

「生産スキル」

木魔術:レベル10

火魔術:レベル10

土魔術:レベル10

金魔術:レベル10

水魔術:レベル10

風魔術:レベル10

「生産スキル」

野営:レベル1


 びっくりした!

 ダメ元の冗談の心算で唱えた呪文が成功してしまった。

 成功したのはいいが、標準的なステータスが分からない。

 誰かと比べなければ、この覗き魔がどれほど強いのかも分からない。

 才能を見込まれて養嗣子になったとか、魔術狂いだとかステータスに書いてあるくらいだから、別格に強いのだとは思うが、誰と比べるべきだろうか。


(ステータスオープン)


「パーソン公爵家」

アルフィー:35歳・魔術士団副団長・第9王子

     :団長のお目付け役

人体:基礎/レベル48

職業:氷術師/レベル10

  :HP/48/48

  :MP/48/48

「戦闘スキル」

木魔術:レベル10

火魔術:レベル10

土魔術:レベル10

水魔術:レベル10

鑑定 :レベル10

弓術 :レベル3

槍術 :レベル4

剣術 :レベル3

短剣 :レベル2

馬術 :レベル10

「生産スキル」

木魔術:レベル10

火魔術:レベル10

土魔術:レベル10

水魔術:レベル10

「生産スキル」

野営:レベル1

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