りそうのついきゅー(社会人)

 日曜日で会社が休みの二人はキッチンにいた。

 エプロンを装備し並んで立つ。


 A子「では手はず通り、私がお団子係で」

 B子「私はタレ係で」

 A・B子「えいえいおー」


 ――それからしばらく――


 B子「さてタレはこんな感じかな。A子はどう――」

 と隣を見る。

 A子「まだまだ……!」

 まだ生地をこねるA子。


 B子「……実は見てたから知ってるけど。どんな感じ?」

 A子「なかなか理想のかたさにならないから調整してる」

 B子「そうなんだ。ちょっとしつれい」

 と自分の耳たぶをつまんで、次に生地をつまむ。


 B子「いい感じだと思うけど。耳たぶくらいだし」

 A子「まだ。だってB子の耳たぶはもっとすごいんだよ」

 B子「えっ。私の耳たぶ基準……?」

 A子「うん。ずっと触ってきた私にはわかる。レシピには誰の耳か書いてなかったから理想を目指すことにした」

 B子「本体的には同じ感じだったよ? 早くお団子食べよ~」

 A子「私も食べたい……しかし責任ある団子係として諦めるわけには……」

 生地をこねるA子の耳たぶをつまむB子。

 手を止めたA子はB子のほうへ顔を向ける。


 B子「じゃあ考えかたを変えましょう。生地で私の耳たぶがつくれると思う?」

 A子「……ハッ。たしかに。生地でB子のクローンはつくれない」

 B子「すごいのつくる気でいたんだね……。さ、早く丸めよう」

 A子「うん」


 それから完成した団子を二人で食べた。

 たまに互いの耳たぶをつまみながら。

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