16こめ

あなたももう気付いているでしょう

僕の中に君がいないことのひとつやふたつ


あなたはもう気づいているのでしょう

僕の記憶の中に君の面影がいっぺんだってないことに


そんなに欲しいものがあったわけではないんだ

ほしいものなんてひとつもなかったんだ


春の空は綺麗でしょう

四季の風の最初の一口はいつだって美味しいでしょう

自然の美しさは僕たちの理解の範疇を超えて美しい


僕たちは理解できるもののなかでそれらを理解して生きていくことしかゆるされていないんだ


この世界に言葉はなく君も僕も存在していない

僕たちは言葉だ

そして言葉はこの世界にはない

このことをどうか寂しいことだと思わないでほしい


僕たちは言葉の中でいき言葉の中で呼吸をして言葉の中でしんでいくんだ


美しい四季の風の最初の一口はいつだって美味しいでしょう


風と太陽の力に揺れ輝く川の表面に、私たちはいつも息を呑むでしょう

わたしたちはことばだ

言葉の中に生きている

ことばのなかこきゅうする

そして言葉の中に死んでいくんだ

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