第6話 大便チキンゲーム

 搭乗手続きを済ませ飛行機の座席に向かう。

 いつも思うのだが、この飛行機に乗っている人が全員同じ場所に向かうと思うと、感慨深い物がある。

 仮に飛行機を降りた後に、たまたま同じJRに乗り、たまたま同じ駅で降りる人がいたら、後をつけたと思われてしまうのだろうか。



 「ねぇ、なんで着いてくるの?」


 10mほど先を歩く彼女が僕に聞く。特に嫌がっている様子は無い。と思う。思いたい。

 当時、俺は彼女の事がもっと知りたかった。同じ町内に住んでいるので、帰り道は途中まで一緒だった。

 しかし、それだけでは足りなかった。家を知ったからと言って、どうなるわけでもない。ただ、彼女の事がもっと知りたかった。

 大人になった今やったらストーカー行為だが、小学生だから許される行為なのかもしれない。


 「いや、ちょっと用事がって。」


 下手な嘘だ。小学生に通学路を変えるどんな用事があると言うのか。かと言って一緒に帰ろうと誘う甲斐性も無い。彼女にすればさぞ奇妙な行動だっただろう。

 一事が万事そんな様子なので、俺が彼女の事を好きな事はクラスの中で羞恥されていたと思う。

 別の女子に言い当てられた事が1回。友達に罰ゲームで告白をけしかけられそうになった事が数回。

 小学校高学年になれば、好きな人が出来るのは当たり前なのに、その事を表だって示すことが出来ない。

 まるで、家では皆トイレで大をするのに、学校でするとからかわれる様な、いざ自分がその立場になった時に嫌な思いをする事が分かっているのに、誰かをからかい続ける。

 そんな不毛なチキンレースを暗黙の了解で突き進んでいた、そんな時期だった。                                               

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