君とドモを食べたい

國分

第1話 羽田空港ビギニング

 羽田空港の展望デッキのテラスで、ホットドックを食べながら離発着する飛行機をぼんやりと眺める。

 自分が乗る飛行機の離陸時間までは、1時間以上余裕がある。ゆとりを持った完璧な行動だ。

 仕事もこれくらい予定通りに進めば、楽しく働けたのかもしれない。

 とは言え、ドラマの様に会社が傾くピンチが起こる事も無ければ、自分の機転で劇的に業績が良くなる事もなかった。現実は平凡で何も起こらない。

 自分が学生の頃に思い描いていた社会人像が、いかに楽観的で世間知らずな少年の夢想でしかなかったのかと、就職して15年経った今なら冷静に分析する事が出来る。

 ホットドックを食べ終わり周りを見渡すと、小学生くらいの男の子が、飛行機を眺めているのが見えた。


 それを見て、初めて自分が東京観光に来た時の事を思い出す。

 1月に家族でディズニーランドに遊びに来た時だ。その冬は珍しく大雪が降っており、道路はどこもかしこも渋滞していた。大雪と言っても3cmくらいのみぞれが溜まっただけで、何が大雪なのか全く理解出来なかった。しかしプラカードをスコップ替わりにして、排水溝にみぞれを流している人を見て、東京は本当に雪が降らないのだと、小学生ながらに感心した事を覚えている。


 数日ディズニーランドで遊び、その後数日は東京観光。どこに行ったのかあまり覚えていないが、浅草の江戸東京博物館に行った事だけは覚えている。

途中までそこそこ楽しんでいたが、社会科見学か何かで団体の小学生とすれ違った。すると、急に自分は周りからどう見られているのか。と気になって仕方なくなった。

学校を休んで遊んでいると思われたらどうしようという考えで、頭がいっぱいになってしまったのだ。親に「もう飽きたから出よう」と何回も言った。

 北海道の冬休みは内地よりも長い。今なら当たり前の事も当時は知らなかっただけだった。

 東京の冬休みが終わったタイミングを見計らえば、ディズニーも空いているであろうと言う、親の計画は大成功だった。


 そんな感じで、小学生の時は自分のやりたい事よりも、周りの視線を気にするつまらない奴だったんだと思う。

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