第32話 と言う事で、皆もペットは責任を持って育てよう。

 俺の部屋をノックする音が響く。俺が目を覚まし部屋の鍵を開けると、そこには微笑みながら「おはよう」と挨拶するリーナさんがいた。



千智「おぁざいまぁす。」



 起きたばかりの眠たい声が俺の口から出る。リーナさんは微笑んだ状態で「朝食が出来てるから顔を洗って食卓にいらっしゃい。」と言った。


 …あの人、あんな感じの人だったっけ?


 前まではもっと静かでほとんど笑わない様な人だったのに。ま、いっか。

 朝食を終え、いつもと同じく俺の役割を終える。そのまま外に出て玉座に腰を落とす。


 今日は男メンバーのほとんどと女メンバーの定数が食料の確保に向かっている為、町に行ってもそれと言ったイベントが無い。


 こう言う時ってネタに困るんだよね。只でさえネタ切れになりかけてんのに。

 玉座で頭を悩ませているとリーナさんが罠を張っている城の裏から聞き馴れない鳴き声が聞こえてきた。


 何だ?この猫が鳴いてるみてぇなの。


 俺は現地に向かった。そこには黄色く綺麗な毛並みの狐の様な生物が罠に掛かっている姿が見えた。リーナさんの罠って事もあり大分弱っているみたいだ。


 その生物を抱き抱える。すると、その姿を見て驚きを隠せなかった。

 何と尻尾が二つに別れており、背中には羽の様にも見受けられる二つのフサフサな毛が生えていた。その他は至って変わらない狐の姿をしていた。


 《超見切り》には敵と言う反応は見えない。大丈夫かな?

 でもめちゃくちゃ甘える様に身を捩らせてくるし…。とりあえずダメージをどうにかしてやんねぇとな…。とは言えセイナとかヒーリング持ってる連中は今いないし…あ、俺が何とかすれば良いんだ。ついでにヒーリングも習得出来れば一石二鳥だろ。


 俺はその狐?を玉座に置いて手を翳しながら意識を集中させる。



千智「ヒーリング~ヒーリング~ヒーリング~!!」



 ブツブツと言いながらヒーリングを連想しまくる。すると俺の手から光の粒子が現れ、狐に降り注いだ。

 粒子を浴びた狐は、怪我を負っていた先程とは打って変わって元気になった様子ではしゃぎ回っていた。

 

 …ヒーリングは成功した…んだよな?


 ま、何はともあれ万事解決か。

 腰に手を当ててはしゃぐ狐を見ていると、狐が俺に向かって飛び込んできた。と言っても攻撃するとか威嚇するとかじゃなくて子供の様に甘える感じだ。


 俺の事を親か何かと間違えてんのか?


 いや、そんな事よりも今はコイツの生態とかについて知る事が先だな。連想すれば《高知力》とか付けれるんだろうけど、俺勉強とかそう言うのからっきしだからパスだな。

 って事で、狐を抱いて町まで歩いた。するとセシルが散歩しているのを見掛けた。

 アイツならたぶん解るだろ。そう思いセシルに声を掛ける。それに対してセシルは「ひゃ!ひゃい!!///」と言いながら顔を赤らめガクガクとし出した。


 なぁ、それ止めてくれないか?

 …まぁこうしたのは俺なんだけどさ(汗)


 セシルに狐の事を聞くと案の定知っていた様で、生態について語ってくれた。



セシル「しょ、しょの生物は…///げげげ…///幻獣って言う種類で////」



 もういい。俺が替わって説明する。


 コイツの正体は「幻獣」と呼ばれる、まぁその文字の通り「幻の獣」らしい。幻獣はすんげぇ昔に滅びたって伝えられたらしいけど、どう言う訳か今ここにこの一匹がいる。まぁたぶん、生きた化石とか、そっち系の話になるだろうな。

 あと、この手の生き物は他の魔獣と違ってステータスが出るらしい。だからさっき覗いてみた。


 それがこれだ。


【フィールドフォックス】Lv.? HP35/? (幻獣)

《火魔力:7(上限?)》《水魔力:5(上限?)》

《風魔力:4(上限?)》《光魔力:5(上限?)》

《闇魔力:6(上限?)》

   《未解放特殊潜在能力:?》

《神の加護》《高視力》《高聴力》《高嗅覚》

《幻の力》《伝説》


 実戦向けって訳じゃ無いけど色々と面白そうなステータスだな。伸び代と言うか何と言うか、そう言うのが感じられた。

 

 そんな事はさて置き、コイツをどうするか…だな。めちゃくちゃ懐いてるし、このまま放ったらかしにしてれば…魔獣にやられ兼ねないか。でも持ち帰るってなってもリーナさんが許してくれるかどうかだよなぁ。

 

 玉座で幻獣を膝に乗せて空を見ながら考えていると、後ろからリーナさんの声が聞こえた。


 

リーナ「飼ってもいいわよ。ちゃんと世話をするならね。」



 ビックリした。まさか開幕情報読み取られるとは思ってなかった。けど飼っていいって言うのはありがてぇな。とりあえず部屋に持っていくか。


 自室に入ると、テーブルの上に幻獣を座らせ腕を組みながら色々と考えた。

 

 幻獣を飼うと言っても、まず何を用意すりゃ良いんだ?寝床とかは良いにしても、飯って何食うんだろ?あと便所とか風呂とか色々あるな…。それに、重要な名前が無いじゃないか。名前…名前…。


 ………もう適当に【マサル】とかで良いか?

 良いだろ!!


 幻獣に向かって指を指し、大きな声と笑顔で言葉を放つ。



千智「よぉぉぉし!!今日からお前はマサルだッ!!」



 キョトンとした顔で首をかしげる。

 

 可愛いなコイツ…。


 しかし、次の瞬間どこからか女の子の声がした。



???「何がマサルだ。そんな名前でワシが喜ぶとでも思ったのかクソ人間が。」



 え?今の誰?

 キョロキョロと周りを見渡していると、またもや声が聞こえる。



???「目の前にいるではないか。そんなのも解らんのか。」



 …マサル?マサルなのか?

 冷や汗を流しながらマサルに質問する。するとマサルはコクリと首を縦に振る。


 …え?


 何?幻獣って喋れるの?

 困惑する俺を気にも止めずにマサルは話し続ける。



マサル「全く。そもそも、ワシはオス等ではない。メスじゃぞメス。そんなのも解らんのか。馬鹿者め。」



 何コイツ…。めっちゃ偉そうやん。


 しかし、その直後にマサルが目映い光を発しながら人に変化した。目を開ければそこには金髪のロン毛に狐の耳。胸元が開いているヨレヨレのシャツに短パンを履いたお姉さんが立っていた。顔は目の大きな美人で、スタイルは抜群。背丈は俺と変わらないぐらいだが、胸はミーニャよりもデカい。


 変わらず動揺した様子で声を掛けた。マサルはそれに呆れ声で返事をする。



千智「マ、マサルなのか?」


マサル「じゃから、ワシはメスじゃぞ。もっとマシな名前を付けんか。」



 確かにそうだよな。女、しかもこんなに俺好みの女にマサルは無ぇわ。

 俺はもう一度名前を考え直す。


 …………美柰咲(みなさき)でどうだ?


 その名を提案する。すると渋々と承諾する様に口を開いた。



美柰咲「まぁ、愚かな塵(ちり)にしては良いんじゃないかのぉ?」


 

 さっきから何でこんなに偉そうなの?

 そろそろイライラしてくるよ?


 なんて事を考えたがら美柰咲を見ていると、それを察したかの如くニヤリと笑いながら腕を組み話し出した。



美柰咲「おっと、ワシに逆らわぬ方が良いぞ人間。ワシは幻獣フィールドフォックス。ソナタの様な人間、いやこの世界すらもワシに掛かれば意図も簡単に粛清出来るのじゃ…!!恐れおののいたであろう?」



 なるほどね。確かに幻獣ってだけですげぇと思った。じゃあお前に取って置きを見せてやろう。


 右腕のステータス測定器を見せる。そのステータスを見た美柰咲は一瞬にして口を閉じて俺の前に跪いた。焦った様子で俺に話し出す。



美柰咲「すすすすみませんでした!!」



 解ればよろしい。別に俺も粛清するつもりもないし、何だったらもっとフレンドリーにやりたい。

 そうだ。コイツも《超魅了》《超誘惑》《色気》で完全にこっちサイドの奴にしとくか。

 

 そう考えた俺は美柰咲の肩に手を回し、目を見ながら優しく微笑み、「仲良くやろうぜ。これから一緒に住むんだからさ。」と声を掛ける。その途端、美柰咲の目にハートが映り顔が赤くなった。

 

 はい。任務完了。


 美柰咲は誤魔化す様に呂律が回らない状態で冷や汗を流しながら斜め上を見て話し出す。



美柰咲「そそそそ、ソナタがそう言うなら良いじゃろ!!///

わわわワシも別にそんなつもりはなかったし!!/// 」


 

 はいはいそりゃどうも。


 そんな事よりも、おめぇがその姿になる事、リーナさんに言った方が良いんじゃねぇかな?あの人なら情報を読み取ってなんたらかんたらって出来るから。速攻でバレるって。

 美柰咲に提案すると、美柰咲は少し嫌そうな顔をして「わかった」と頷いた。


 そしてリーナさんに事情を説明する。だが俺は天才的な発想をしてしまったのだ。コイツをこのまま同居にするのではなく、町で一人暮らしさせれば良いのではないかと。それを提案した瞬間、美柰咲は泣きながら抵抗した。それに合わせてリーナさんが真剣な表情で俺に話してきた。



リーナ「千智、これは貴方が持ち出した話よ。ペットは最後まで面倒を見なさい。」


美柰咲「そうじゃぞ!!ワシはこの世界の移住の作法を知らんのだ!!そんなワシを見捨てるつもりか!?あとペットって言ったの謝れ!!」


 

 すげぇ圧力だ。これは堪らんな。


 苦い顔をして美柰咲と同居する事を受け入れた。するとリーナさんが笑顔でこう言った。



リーナ「安心しなさい。何かすれば全て解るんだから。」



 それを見た美柰咲は小声で耳打ちをした。



美奈咲「あやつ、ワシを粛清するつもりじゃぞ!!」


 

 ま、行動や言動には気を付けろってこったな。

 って事で、今日から同居人が増えてちょいと賑やかになるな。

 本当に、楽しみだぜ(涙)


………………………………………………………


 その夜。俺が布団に入ろうとすると美柰咲が布団の中から妖笑と共に手招きをしながら俺を誘い込んできた。



美柰咲「ほぉれ千智。ワシがソナタを甘やかしてやろう。さ、胸に飛び込んでくるが良いぞ。ソナタもオスであるのであろ?ならば遠慮はせんでもいいぞ♥️」


 

 俺、もう欲望を解き放っても良いっすかね?

 美柰咲の言う通り、男だし、遠慮はしなくても良いよね?

 エ□ゲの主人公だってこんなんなんだしさ。


 ………はぁ(汗)


 そんな訳にはいかないんだよな(汗)

 そうすると後々色々と面倒になるからな(汗)

 その展開は薄い本に任せるとしよう(汗)

 

 俺は美柰咲の記憶を飛ばしてマインドコントロールで心境いじって寝かし付けた。

 さてと、俺も寝るとするか。


 そうしてようやく俺は睡眠につけた。  


【今日の千智のステータスチェック!!】



【葛城千智】Lv.286 HP82/∞ (異国の民)

《火魔力:580(上限∞)》《水魔力:154(上限∞)》

《風魔力:142(上限∞)》《光魔力:158(上限∞)》

《闇魔力549(上限∞)》《打撃魔力562(上限∞)》

   《未解放特殊潜在能力:不明》

《解読能力》《浮遊》《能力透視》《演技》

《侵食》《冷静》《戦略》《超見切り》

《ド根性》《覚悟上等》《ホームラン王》

《起死回生》《漢気》《友好》《護衛》

《死神の加護》《超魅力》《超誘惑》《色気》《NTR》《デンジャラスキッカー》《五感鬼神》

《無邪気》《魂の投手》《アイコンタクト》

《調整》《超記憶抹消》《心の潜入》《疑り》

《判断力》《超妄想癖》《イメージング》

《実現化》《残忍》《無慈悲》《冷酷》

《クソオタ》《ネメエタ信者葛城》《潜伏》

…………………………………………………………

《マインドコントロール》《正義の心》

《正しき道》《天候変化》《決心》

《幻獣の加護》《エ□ゲ主人公擬き》《オス》


 何すかこれ(汗)

 

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