第21話 と言う事で、多人数の来場者を相手にします。

 俺は考えていた。今日は別の遊びをしたいと。

 と言うのも、昨日物置で良く弾む柔らかいボールを見付けたのだ。ボールと言えば一つ。ドッヂボールだ。最後にやったのは高校の時の体育時間だったな。

 ボールを見た瞬間、久々にしたくて堪らなくなったのだ。


 …と言う事で、やること済ませて俺は全員を庭に呼び、ドッヂボールの提案をする。

 全員承諾し、リーナさんが審判を勤める事になった。


 だが問題が生じる。…人数が少ない。今居るのは、俺、レイド、ゼータ、セイナ、ミーニャ、メイの六人だ。3対3は話しにならんな…。俺が頭を悩ませていると、森の方から声がした。そしてその声の主が俺達の前に並ぶ。


 レイド達が構える中、俺はソイツ等のステータスを覗いた。



【ジータ】Lv.65 HP92/100 (火神族)

《火魔力:80(上限110)》《水魔力:20(上限50)》

《風魔力:15(上限30)》《光魔力:13(上限50)》

《闇魔力:5(上限12)》

   《未解放特殊潜在能力:無し》


【ソニーラ】Lv.68 HP98/100 (水神族)

《火魔力:10(上限25)》《水魔力:82(上限125)》

《風魔力:18(上限28)》《光魔力:19(上限30)》

《闇魔力:8(上限15)》

   《未解放特殊潜在能力:無し》


【フーゴ】Lv.67 HP89/100 (風神族)

《火魔力:20(上限35)》《水魔力:12(上限28)》

《風魔力:81(上限130)》《光魔力:11(上限20)》

《闇魔力:6(上限11)》

   《未解放特殊潜在能力:無し》


【リミナ】Lv.70 HP89/100 (光神族)

《火魔力:10(上限22)》《水魔力:15(上限29)》

《風魔力:12(上限25)》《光魔力:89(上限130)》

《闇魔力:2(上限8)》

   《未解放特殊潜在能力:無し》


【ジダーニ】Lv.75 HP95/100 (闇神族)

《火魔力:30(上限66)》《水魔力:12(上限25)》

《風魔力:8(上限12)》《光魔力:1(上限5)》

《闇魔力:92(上限145)》

   《未解放特殊潜在能力:無し》


【セシル】Lv.85 HP93/120 (異国の民)

《火魔力:25(上限42)》《水魔力:40(上限52)》

《風魔力:32(上限55)》《光魔力:62(上限85)》

《闇魔力:40(上限50)》

   《未解放特殊潜在能力:無し》

《遠視》《知力》《即理解》《戦略》


 …多いな。女三人男三人で六人か。


 とりあえずジータは男であり、赤く長い髪が目立つ高身長の中年男性と言ったところか。


 服装も奇抜なロックシンガーみたいだな……。




 次、ソニーラは女、青い髪に青い瞳、全体的に落ち着いた様子のするクールな雰囲気…。


 うん、結構好きだぞ……。




 そんでその隣、フーゴは男、茶色い天然パーマが風に靡く度に髪型を気にしている…。


 多分コイツはナルシストか単に髪が乱れるのが好きじゃないんだろうな……。




 更にその隣、リミナは女であり、女にしては身長は高め。だが胸は割とデカイ。顔が埋まるサイズだな…あれ…。


 …エッチだ…。


 うん、好きだ。…好き…!!




 おっと、その次、ジダーニは195cmぐらいのゴリマッチョ。マジでマッチョ。何か強いオーラを感じられる。…いや強いと思うけどさ。たぶん。


 黒いタンクトップとジーンズのみ…?


 80年代のアメリカ映画の俳優かアンタは。




 最後。セシルは165cmぐらいの女で茶髪のポニーテール、メガネを掛けた美人な顔立ち、スラリとしたスタイルからは何処と無く科学者の様な要素が見えかくれしている。


 …いや、白衣着てるからあれは科学者なのか…?

 いや長ぇわ。さすがに説明がしんどかったぞ。ってか、レイド達ならコイツ等の事知ってんじゃねぇか?そう思いレイド達に聞いてみるが満場一致で「知らない」と回答が帰ってきた。

 まぁ、知ってたら警戒の体制になんか入らねぇか。それは向こうも同じ。知ってたら声ぐらい掛けに来るか。やっぱあれなんだな。冒険者やら能力者と言えど、人数が多いから知らねぇ奴等もいっぱいいるんだな。 


 それにしても六人で来るとはお祭り騒ぎか?こっちも六人、向こうも六人…!!そうだ!!


 身構えるレイド達の前に出て武器も何も持たないまま攻撃の意志を示さずに笑顔でジータ達に話す。



千智「なぁ!!俺の討伐なんかで争うんじゃなくて、俺達と遊ぼうぜ!!丁度人数が欲しかった所なんだよ!!」


ジータ「は、はぁ?」


レイド「お前何言ってんの!?」



 ジータ達は何を言っているのか解らない様な状態、レイド達はお前正気か?と言わんばかりに俺を叱ってくる。だが俺はコイツ等とドッヂボールをやると言う目標を無くす訳がない。レイド達の叱りを聞く事なくジータ達に説明する。



千智「あんた等は俺を倒す為に戦いに来たんだろ?だったら条件がある!!今からドッヂボールっつう柔らかいボールを当て合う競技をして、俺達が負ければあんた等と正々堂々戦おう!でも俺達が勝ったら戦いは無しで俺達の話を聞いてくれ!!いいか?」



 少し戸惑いながらもジータ達は承諾する。レイド達は「大丈夫か?」等と言ってくるが、奴等の一人一人の能力はそこまで高くなく、戦闘になったとしてもこっちが束になれば、いやその気になれば、俺、レイド、ゼータの三人でも勝てると言う事を伝えると都合良く納得してくれた。


 そしてメンバーが揃いこっちサイドの六人、向こうサイドの六人が向かい合い二列に並んでリーナさんの合図によりドッヂボールが開始された。

 


リーナ「試合開始ッ!!」



 いつもの彼女からは想像も付かない様な張った声だな。まさか、この状況を楽しんでる…?

 おっと、それよりも勝負の方が優先だ。ボールがリーナさんの手によって高く上げられ、そのボール先に触れた方にボールを投げる権利を与えられる。


 俺がその争奪戦に選抜したのはミーニャだ。運動神経が抜群でジャンプ力はエグいぐらいある。それに対し向こうの選手はリミナ。服装からしてめちゃくちゃこの場の雰囲気に馴染んでるな。ボールトスが行われる。ミーニャは勢い良くジャンプをする。しかし次の瞬間、俺達は目を疑う光景を目の当たりにする。

 何とリミナがミーニャと同じ位置までジャンプしていたのだ。その表情には余裕があり、身長の差を利用してボールに触れ先攻権を手にした。


 ミーニャは地面に降り立つと、瞬時に俺達側のコートに入り体制に入った。

 俺達の外野はゼータとセイナ。向こう側の外野はジータとソニーラとなっていた。

 ジャンプ力が高かったから何だと言うんだ。実力は俺達の方が上だろ…!!


 ボールが向こうの側のチームのコートに入る。最初に投げる投手はジダーニのようだ。ジダーニはボールを後ろに持っていき、大きく振りかぶる。口元を軽く上げ、不敵な笑みを浮かべながら低く少し聞き取りにくい声で呟いた。



ジダーニ「ビビんじゃねぇぜ…!!」



 誰がビビるかよ…!!アクションでけぇ奴は見かけ倒しだ…!!【見切り】を使うまでもねぇな…!! 


 ジダーニはボールを投げる。目線は俺に向けられている…。来いよ…!!


 だが余裕をかましていた時、俺は衝撃を受けた。ジダーニの投げたボールの軌道が読めず、俺の耳元を通った。その瞬間、耳元ではまるでF1カーが走り去ったかの様な音が聞こえた。空気中からはゴムが焼けた様な焦げ臭い匂いがした。


 …え?


 俺を含めその場にいた全員が状況を理解できていなかった。しかし、ボールは外野に与えられジータがニヤニヤしながら狙いを定める。狙いが定まったのか「ロックオ~ン!」と言いながらボールを投げる。だが、ボールは俺達に向かって飛んでくるのではなく向こう側のコートのフーゴに渡された。


 …違う…あれはフェイントだ…!!


 ボールを渡されたフーゴは取ると同時にボールを投げる。そしてメイがアウトになった。


 俺は驚愕していた。何も知らないはずの素人がここまでの連携と威力を発揮するだなんて…!!

 転がってきたボールを拾い上げ、呆然と立ちつくしていた。すると敵チームのセシルがメガネを中指でクイっと上げ、鋭い眼光を放ちながら俺達に語り掛ける。



セシル「確かに、私達一人一人は戦力が低いかもしれないけど、私の戦略スキルと知力、そしてチームの連携が組めれば戦力が何倍にも跳ね上がる。あまり…私達を嘗めない方が良いわよ…!!」



 俺達はとてつもなく厄介な敵をデスゲームに誘ってしまったのかもしれない…。

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