第19話 と言う事で、五感の鬼神…目覚めます。

 外に出て玉座の所へ戻る。そこではリーナさん、セイナ、ミーニャが話をしながらお茶を嗜んでいた。俺が三人の前に現れると三人は「え?」みたいな顔で凝視してきた。リーナさんが俺に質問する。



リーナ「何その服?」


千智「見付けた瞬間思わず心が踊ったっすよ…!!気付けば着用してました…!!」


 

 俺が着ていた服。それは正に俺が求めていた物。


 物語で中世ヨーロッパの貴族が着ていた様な薄手の黒のロングコート。前面両側の縁には金のボタンが付いており、立てられた大きな襟は内側が赤く外側はコートと同じ黒、片側の先に金のリングが施されてあった。中には胸に金のバラが刺繍された半袖のカッターシャツ、ベルトはバックルが銀でゴツく、ドクロの形をした物。そして黒のスキニージーンズの様な少しピッチリとした長ズボン、腰からはチェーンが二つ、バックルの両サイドから後ろにかけて垂れ下がり、地面から膝下ぐらいまでの長さの赤の装飾が施されてある刺々しい黒のブーツを履き、両腕の上腕と両太腿に茶色く細いベルトを巻き、いかにも【魔王】と言った感じの服だったのだ。


 この服に命名しよう。そうだなぁ…。


       【魔王コス】

  

 ちょっとダサいけど、これで良いや(笑)覚えやすいしね(笑)

 腰に手を当て笑いながら服を堪能する俺を見てリーナさんが思い出した様に話し出した。



リーナ「あぁ、そう言えば、この城の所有者だった知り合いはそう言うの服装で仮装するのが趣味だったわね。たぶんその服もその為の物だと思うわ。」


千智「なるほど!これ貰ってもいいっすか?」


リーナ「えぇ。その方がその服も喜ぶわ。」



 いやぁ~テンション上がりますわぁ~!早速クッションを玉座に置き、足を組み肘置きに肘を着いて首を傾け手の甲を頬に持ってくる。


 …ヤバい。俺、魔王だ。カッコ良くないっすか?自分、カッコ良くないっすか!?


 ニンマリとした笑顔を浮かべ余韻に浸っていると少しイタズラな笑顔をしたミーニャが膝に座ってきた。



ミーニャ「じゃあミーニャは魔王の二番目!!」


千智「おいおい(笑)魔王ってのは役職だけだぞ(笑)」



 ミーニャと仲良く会話していると、セイナの突然セイナの視線が痛く刺さる。


 怖いなぁ。拗ねる前に話題変えるか。


 ミーニャを膝から下ろし、顎に手を着き考える。そう言えば、ここに来てまだ一回も遊んでないなぁ。遊びたい…!!そうだ!!


 玉座を勢い良く立ち上がると、三人の方を向きある提案をする。



千智「レイドとゼータを呼んで皆で遊ぼう!!」


 

 三人はきょとんとした顔で俺を見上げる。まぁそりゃあそうだろ。いきなり遊ぶとか言い出すんだもんな(笑)

 そんな事はさて置き、とりあえずレイドとゼータを呼び出す。


 二人は不思議そうな顔で俺に質問してくる。



レイド「遊ぶ?」


ゼータ「どう言うこと?」



 玉座の前に立ち、その場にいた全員に事情を説明する。すると全員納得したのか、なるほどと声を合わせて頷いた。しかし何をするのか?と言う疑問が湧く。…何をするのか…か。たまにはこう、童心に帰ると言うか、幼い頃の遊びを堪能したい…。 


 幼い頃の…遊び…!!


 缶蹴り!! 


 決まった。遊びはこれだ。それに、丁度厨房にリーナさんが使った缶詰の缶があったはずだ。庭は広いし隠れる場所もある。


 …条件は揃ったな。


 小学生の頃に、缶蹴りマイスター・デンジャラスキックの千智と呼ばれた俺の実力を見せてやるぜ…!!


 メンバーに一通りの遊び方を説明する。やはりこの世界には缶蹴りが無かったのか、全員知らない様子だった。それもあってか、興味津々でやる気に溢れてた。しかしリーナさんは運動が得意ではない為、観戦するとの事だった。


 缶を取ってきて庭の真ん中に置く、鬼は俺と言う事になった。全員が各地に隠れる。目を閉じて10秒数える。そして数え終わった後、缶を踏み周りを見渡す。俺に見えるのは紅茶を嗜みながら観戦するリーナさんだけで他は何も見えない。


 …なるほど、さすがは実戦の実力を持つ奴等だな。姿どころか気配すら感じられん。物音、気配、注意力を最高潮にする。だがそうしても一向に見付からない。少し移動してみるか…。缶から3m程離れ辺りを見回す。



     「うにゃぁぁぁぁ!!」



 次の瞬間、聞き覚えのある声と共に缶が弾き飛ぶ音が爽快に響く。俺は急な出来事に理解が追い付かず、缶の方向を見る。そこにはドヤ顔で蹴った缶を手に持つミーニャが立っていた。


 …蹴られたのか…?この俺が…?こんな素人相手に…?バカな…!!たった3mの距離で…!?


 嘘だろ…!!デンジャラスキック改め、五感の鬼神と呼ばれた…この俺が…!?


 苦し紛れの笑顔が出てしまう。そんな俺を見ながら逃げ役の面子がニヤリと笑いながら背後に現れる。顔を手で抑え指の隙間から目を覗かせた。

 口元を吊り上げ隙間から覗かせる視線を外すことなくその場にいた全員に言った。



千智「ハァ…ハァ…ハァ…フハハハハ…!!良いだろう…!!鬼神に抗いし賢者共よ…!!こちらも全力でやらせてもらおうか…!!」



 手加減はしない…!!無慈悲に挑ませてもらおうか…!!


 俺以外のメンバーはもう一度隠れ、俺は10秒のカウントダウンをスタートさせる。そして数え終わる。さぁ…五感の鬼神を堪能するが良い…!!


 周りを見渡す。木々の物陰、倉庫の方角、城の周辺。だが、やはりどこにいるかは解らなかった。


 こうなれば…!!


 耳を研ぎ澄まし、嗅覚を最高潮に持っていく。今の俺に聞こえぬ音、感じない匂いはない…。 

 その時、森の方角から木が揺れる音がした。瞬時に嗅覚を研ぎ澄ます。 



千智「うぅぅぅん…!!このオスの匂い…そして焦っている呼吸音…!!はぁぁぁぁぁいッ!!レイド見付けとぅあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」



 缶を踏む。木の方角からレイドが出てきた。どこか悔しげな顔をしている。

 …しかし何故笑っている様にも見えるのだ…!!策略?まさかな…!!こんな素人に策略が立てられる訳がない!!


 レイドを付近の円に閉じ込め、次の獲物を探す。さぁ…次は誰かな…!!  

 ここで俺はある事に気付いた。倉庫の物陰から何か動いている細いものが出ている。それにモフモフしている…。


 …ミーニャか…!!


 直ぐ様耳を傾ける。すると呼吸音が二つ聞こえた。その呼吸音は静かで落ち着きがある…!!


 …セイナだな…!! 


 確信が付いた…!!もう少し近付き二人の存在を確認しに行く。

 しかし、俺の背後でまたしても缶が弾き飛ぶ音が爽快に響く。そして聞き覚えのある声が聞こえた。


     「とりゃぁぁぁぁッ!!」


 ゼータ…!!


 振り向くとそこには横たわる缶を踏み、腕を組みながら笑っているゼータがいた。


 …何故だ…!!何故…お前等如きに…!!


 歯を食い縛り冷や汗を垂らす俺を見てセイナが得意気に口を開いた。



セイナ「ゼータとミーニャとは長い付き合いよ。今は千智にゾッコンだけど、仲間内の作戦は容易に実行出来るわ…!!」



 何だと…!!フハハハハ…!!ハッハハハハッ!!

久し振りだな…!!俺がここまで本気になったのは…!!見せてやろう…!!フルパワーまで力を上げた俺の戦力を…!!  


 戦いは続行する。またしても俺が鬼を勤め、メンバーは隠れる。


 そして三時間に渡って激闘は繰り返された。


 ……………………………………………。


 気付けば俺は半泣きで跪き地面を殴っていた。



千智「クソ…!!何故だ…!!缶蹴りマイスターの俺が…!!ちくしょぉぉぉぉうッ!!」



 俺の姿を見たメンバーが笑いながら声を掛ける。



レイド「ま!ガキの頃の実力じゃ俺達には敵わねぇってこったな!」


ゼータ「実戦は俺等の方が上だぜ!」


ミーニャ「でも、楽しかったよ!」


セイナ「そうね!刺激になったわ!」



 全員楽しそうだった。リーナさんも笑いながら見ていた。


 楽しいな。全くよ…!!止めらんねぇぜ!!


 俺は立ち上がり満面の笑みでメンバーに伝えた!



千智「今日は惨敗だったけど、今度はそうはいかねぇからな!!っつう事で、今後はこう言った遊びも入れながら生活しようぜ!!」


 

 俺がそう言うとメンバーは全員賛成した。 

 これからは楽しく愉快に異世界ライフを送っていくぜ!!


 …そう言えば、今日は誰も来なかったなぁ。平和な日だったぜ(笑)


 後は、飯食って風呂入って寝るだけだな!


【今日の千智のステータスチェック!!】


【葛城千智】Lv.72 HP95/∞ (異国の民)

《火魔力:40(上限∞)》《水魔力:25(上限∞)》

《風魔力:49(上限∞)》《光魔力:18(上限∞)》

《闇魔力:28(上限∞)》《打撃魔力:89(上限∞)》

   《未解放特殊潜在能力:不明》

《解読能力》《浮遊》《能力透視》《演技》

《侵食》《冷静》《戦略》《超見切り》

《ド根性》《覚悟上等》《ホームラン王》

《起死回生》《漢気》《友好》《護衛》

《死神の加護》《魅力》《誘惑》《色気》《NTR》《デンジャラスキッカー》《五感鬼神》

《無邪気》|


って、これ特殊潜在能力にいる?(汗)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る