陰雪 α

春嵐

陰雪

 ひさしぶりに、街に雪が降った。積もるほどではない。地面に落ちて、水たまりに変わっていく。

 外に出て、彼を待つ。朝の4時。傘。冷たいのは、身体ではなく、心のほうかもしれない。

 彼がいなくなったことを、不思議と、受け入れている自分がいる。驚いていない。そうあるべきところに、彼が帰っていった。それだけなんだと思う。それでも、心は追いつかなくて、こうやって、彼を待つ。

 午前4時。

 雪。

 彼は、いない。

 朝陽が昇る前の、蒼い空間。

 わたしだけが、ぽつんと、ひとり。

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