第73話 心を富むくじ(8月27日)

 辞表を片手にサマージャンボの当選結果を確認したのであるが、どういう訳か一等も前後賞も掠めることがなかった。

 これはきっと政府の陰謀に違いないなどと笑いながら、ひと月ほどの夢身を以て安いものと心穏やかであった。

 なに、こうした時は存分に楽しむべきであり、当たるも当たらぬも空想と妄想の限りを尽くすべきであろう。


 では、もしも一等が当たれば何をしたかと言えば何も思い当たらぬというのが実情であり、物書きとして恥ずかしい限りである。

 世界一周旅行や家を買うなどあまりに陳腐であり、とはいえ豪遊すれば瞬く間に消える金額である。

 資産運用など、金儲けをしようとすると碌な目に遭わない私の一族を鑑みれば、到底不可能であろう。

 そうなると、少々日銭を稼ぎながら今の暮らしを続けていくことが最も良さそうであり、精々、傷ついたデミオの板金と整備が思いつく限りである。


 とはいえ、金は人を魔性に変える。 

 いざ、当選していれば身を滅ぼしていたやも知れぬ。

 官僚が補助金を詐取して捕まり、数億を配った代議士は職を追われた。

 今日もまたいつもと同じように筆ならぬキーボードを取り、画面に日々の憂さを回してしまう方が余程幸せであるのかもしれぬ。


 そう言いながら、くじの日の当選番号を心待ちにする私もある。

 なに、格好をつけたところで強欲なことは隠せぬものである。


【本日の出来事】

◎新型コロナ 受け入れ病院倒産

 冷静に記事を分析してみれば、元より経営難にあった病院が倒産したというのが実情のようである。

 あまりにも冷ややかではないかと言われてしまいそうであるが、新型コロナウィルスを衝撃的なものとしようとするあまりに本質を見誤れば単純に扇動されるのみとなってしまう。

 そして、コロナ後に下通の空き店舗は目につくようになった。

◎渋谷の若者向け接種 三百人の抽選制に

 これに当たれば宝くじも当たりそうなものだと思ったのだが、宝くじの当選確率の方がまだ低そうである。

 それにしても、この行列で感染者が出ればどのようになるのかという想像は難しいことであったのだろうか。

 気軽に、というのはもうひと段階遅くあるべきであるのかもしれない。


【食日記】

朝:たまごサンド

昼:マルちゃん正麺、おにぎり弁当、野菜ジュース

 ごつ盛りの上位互換と言えば聞こえは良いが、これはカップ麺よりもアレンジして袋麺としていただくべきであった。

 何事も高級であれば良いということではないようだ。

夕:阿蘇伏流水饅頭、阿蘇伏流水饅頭抹茶、日本酒

他:おーいお茶、カフェオレ

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