第35話 鳳は空を駆け 人は臍を噛む(7月20日)

 今年の名古屋場所は白鵬の全勝優勝という結果で幕を閉じた。

 長期休場もコロナへの感染も膝の手術も乗り越えた横綱は、注文の付く相撲があったとはいえ土を付けられることなく終わった。

 これに対して様々な意見はあろうが、まずは素直に称賛したい。

 同じく連続休場を明けた稀勢の里が一勝もできなかったことを考えれば、どれほどに難しい綱渡りであったことだろうか。


 とはいえ、ここで予想はしていたものの、勝ち方への注文や品位がどうのという批判が様々に出ることとなった。

 横綱らしい相撲ではなく品位に欠けるというのは、格闘技と神事と興行の真ん中に立つ相撲だからこそ起こりうる問題なのだろう。

 では、この品位や品格とは一体、何なのであろうか。


 美学として相手の力を受けて勝つというのは、確かに興行としては面白いものであるのかもしれない。

 しかし、それで負けてしまえば力を抜いて負けた、ということにもなる。

 取りうる全力を尽くせば良しということなのかもしれないが、神事ということであれば己の器量の全てを尽くさぬ負けを見せるのは良いことなのだろうか。

 ある意味では、白鵬は最も真摯に相撲と向き合っていると言えるのかもしれない。

 出稽古で取り組み相手を徹底的に叩くわけでもなく、矢を残しながら戦いから退くでもなく、最後まで勝ちを求めることは果たして悪いことなのか。

 同じことを稀勢の里や貴乃花がしていれば批判はなかったのか。

 これは興味の尽きぬ疑問である。


 また、品格という言葉の刃を横綱に向けられるほどの生き方を果たしてできているのだろうか。

 傷無き者のみ石を投げよとまでは言えぬものの、罵詈雑言を投げつける者たちのどこに品位や品格があるというかを聞いてみたい。

 そして、もしも横綱の品格が何らかの象徴であるのならば、反省すべきは別にあるのではないか。

 理事会の動き、規則を守らぬ大関、法を犯す関取。

 白鵬を色眼鏡で見る度に失うものがあることに、我々は淡々と目を向けるべきであろう。


【本日の出来事】

◎熊本市を除く公立小中学校で終業式(熊本県)

 今年もまたコロナの影響で様々な制限のある一学期であったようだが、ひと月ほどの休みに入る。

 せめてこの期間は伸びやかにと願うばかりであるが、果たして。

◎アマゾン創業者ら初の宇宙飛行成功

 空の向こうに何があるのかを夢見た少年時代、宇宙旅行はもう何世紀後のことだろうかと思っていたが、存外にその世紀は間近に迫っていたらしい。

 とはいえ私はまだこの九州も日本も知らぬことが多すぎるため、まずはそうした地を回っていくつもりだ。

 上ばかりを見て足元の輝かしいものを見逃すのも残念ではないかと、精一杯の高楊枝を掲げて。


【食日記】

朝:ヌク

昼:ごつもり豚骨、鶏唐揚げ、梅ひじきおにぎり、野菜ジュース

夕:(ヒライ)ねぎま串、もも串、やみつきチキン串1、鶏唐揚げ、チキン南蛮、ポテトマカロニサラダ、チーズチキンカツ、焼きそば、発泡酒ロング缶1、ホットウィスキー2

 久しぶりに見てみると、第三のビールと発泡酒の値段に差が無くなっていた。

 これで麒麟の淡麗生を心置きなく飲めると思ったのだが、そこにどことない虚しさを感じたのは仕方ないことだろう。

他:おーいお茶

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