第17話 銃口を向ける 馬の骨を拾う(7月2日)

 夜になって厚労相が新型コロナお感染拡大防止措置を店舗が行っているか、グルメサイトで評価できるようにしていく方針を示した。

 これについては明確に反対であり、愚策どころではなく相互監視の一種として大きな危険性を孕んでいると警鐘を鳴らさざるを得ない。

 評価を受けて調査を行うというが、それまでにも十分な恣意の働く余地はあり、飲食店への脅しに繋がりかねない。

 後ろめたいことがなければ問題はなかろうということも聞こえてきそうであるが、虚偽の評価によって調査が行われるうちに煙が立ち評判という火の手となってその店に直接の被害となる恐れもある。

 また、本来指導を行うべき店があったとして、その間は目が行き届かぬこととなり労力の喪失につながる。

 これこそ愚の骨頂であり、密告性と相俟って正気の沙汰とは信じられない。


 それに加えて、本件は思考の元となるものを完全に無視してしまっている。

 なぜ飲食店の中に「自粛」の「要請」に従わぬところがあるのか、ということだ。


 端的に言ってしまえば、生き残るためであればお上に逆らうことも止む無しということだろう。

 この一年半近い間に、行政の側から出された要請に対して彼らが生き残るに十分な補償は行われたのであろうか。

 果たしてそれは彼らが生きながらえることのできるに十分な速度で成されたのであろうか。

 果たしてそれは彼らが生きていく誇りを失わずに済むような形で成されたことであろうか。


 単純に生活をするということだけであれば、新たな職を探して就けばよかろうという意見もあるが、どれだけの人が今の仕事から速やかに移る決断ができるというのか。

 それも個人商店であっても、支える従業員や取引先も存在する。

 そのような中であっけらかんと辞める決断をできるのは、心の無い人だけである。

 退くも地獄、進むも地獄というのが現実であり、胡坐をかいてそれを安定的な生活を初めから求めなかったから悪いのだ、とする権利が誰にあるというのか。


 少々熱くなってしまった。


 行政の側でも打てる手を打とうとしているのは重々に承知しているつもりだが、その戦力配置が今回の件は明らかにおかしい。

 これに割く費用を、苦闘する飲食店およびその関連企業への給付や働きづめの職員の給与に使えぬものだろうか。

 予算が違うというのであればよもや余らせた方がよく、ただただ飲食業界も最前線の行政職員をも疲弊させるだけである。

 これが仲夏の熱にあてられてであったり、梅雨の湿気によって重たくなったりしたせいで頭の働きが思うように行かなくなっただけというのであればここで回れ右をするべきであろう。

 感染症対策については、既に闇雲に立ち回る時期を過ぎており、冷静に慎重に行うべき段階である。

 昨年の給付金やマスク配布の辺りまでは前も後ろも見られぬ状況であったと言い訳もできようが。


 ただ、それでも強硬に推し進めるというのであれば私には二つの小さな抵抗を示し続けるしかなくなる。

 一つにはこうしたサイトの利用を一切止めるということである。

 元々活用してきたわけではないのだが、ささやかながらの抵抗を止めるわけには行かぬ。

 そして、もう一つにはこうした反駁を続けることである。

 元々の性根からして一つのものを批判し続けることを好まぬのであるが、それでも、意を決する必要があるというのであれば私の持ちうるもので抗うより他にない。

 ここで選挙を結びつける方もいるだろうが、選挙はあくまでも個人の選択であり抵抗の手段ではない。

 ただ、今回の件は当然のように判断の材料となる、ということだけは付け加えておこう。


 さて、ここまで書き連ねてきたところで、初めの方で述べたことに立ち戻っていただきたい。

 この小文で政府に向けたようなことが、小さな飲食店に向けられた時、果たして抗えるものだろうか。

 本件の成り行きと合わせて考えて興味深いところである。


【本日の出来事】

◎ゆうちょ銀行 ATMの利用手数料を一部値上げ

 収益悪化による対応とのことであるが、同じグループ企業のかんぽ生命の異常な保険販売ができなくなってのことなのだろうか。

 この一件は非常に病理が深かったように記憶しているが、それを受けてのことであれば中の改善が十分に成されてのことでなければなるまい。

 とはいえ、日本郵政グループには同情するべき点もあり、公共性の高かった郵便事業を民営化されたことで収益を特に意識せねばならなくなった。

 小さな政府を目指して時代の寵児となった元首相は、同時に日本の郵便事業の弔事を呼び起こしたのかもしれない。

 それを持て囃した太鼓持ちに改善がみられるのかといえばこれまた首を傾げざるを得ない。

◎自衛官五輪協力八五〇〇人 会場警備や国旗掲揚

 この災害の起きやすい時期に一個師団規模で引き抜きを行うことに、不安を感じずにいられない。

 自衛隊本来の目的を考えれば果たしてこの規模の引き抜きと災害派遣が重なったときに国土の防衛は満たされるのだろうか。

 法的根拠よりもこちらを確かめる議員の話を伺ってみたい。

 それはさておき、国旗掲揚については確かに自衛官のそれは儀礼的な美しさを持つ。

 自衛官が再開に浮かぶ護衛艦の上で国旗を降納する様は、斜陽の印影と相俟って未だに脳裏から離れない。


【食日記】

朝:フルーツグラノーラ

昼:(丸源ラーメン)肉そば、炒飯(増量)、タルから揚げ、いちごソフト、ラムネ

夕:冬瓜のカニ風味煮、日本酒

 我が家のカニ風味は全てカニカマによって作られる。

 アレルギーでカニを食えぬ故のことだが、色味が華やかになり非常に愉しい。

他:タリーズブラック1

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