第151話 目覚めた少女
エルフの国で何が起きたのか。
その実態を知るためにも、あの子が目覚めるのを待つしかないのだが――今のところ彼女についているソフィから連絡はない。
と、その時、
「うん? 今、何か音がしなかったか?」
すぐ近くにエルフ少女の寝ている部屋はあるのだが、そこから何やら物音がした。
もしかして、起きたのかな?
でも、それならソフィが報告を入れてくれるはずなのだが――
「ま、まさか……」
寝起きの少女と、何かトラブルがあったのか?
あれだけの状態に追い込まれているとなると、かなり辛い経験をしてきたと思われる。そんな彼女が、目を覚まして見知らぬ部屋のベッドに寝かされていると知ったら……
「くそっ!」
迂闊だった。
もっと配慮すべきだった。
ソフィの身に何か起きたのではないか――そう思うがいなや、俺は部屋を飛びだす。
そして、エルフ少女が寝かされている部屋へと突入した。
「大丈夫か、ソフィ!」
入室と同時に叫ぶ――と、
「? ハーレイ? どうかした?」
キョトンした顔つきでこちらへと視線を向けるソフィ。
どうやら怪我などはしていないようだが……じゃあ、さっきの物音は?
そんな俺の疑問は、すぐに解決した。
「えっ? あれ?」
ベッドの上に、気を失っていたエルフ少女の姿があった――が、なぜか座り込んで額をシーツへとこすり当てている。まるで土下座の体勢だ。
「あ、あの、どうかしましたか?」
恐る恐る、俺は尋ねてみた――が、相手はエルフ族。
人間の言語は通じない。
と、くれば、俺の言語スキルの出番だ。
「落ち着いて、君の話を聞かせてくれ」
「っ!? あ、あなた、エルフの言葉を話せるんですか?」
「これが俺のスキルなのでね」
人間がペラペラとエルフの言葉を話していることに、少女は驚きを隠せない様子だった。公の場では通訳を介して話をするのが一般的だからな。普通に話せる人は珍しいのだろう。
「俺は君の敵じゃない。何があったのか説明をしてもらいたいんだ」
「そ、それは……」
何やら言いづらそうにしている少女。
どうやら急ぎすぎたみたいだな。
少し、アプローチを変えてみよう。
「じゃあ、君の名前を教えてくれないか?」
「わ、私はレダと言います」
レダ、か。
彼女からもう少し詳しい話を聞きたいな。
「どうしてベッドでそのような格好を?」
「そ、それは……まさかこんな場所で、行方不明になっていたセルシェ様にお会いできるなんて」
「セルシェ様?」
それって……ソフィのことか?
視線をソフィへ向けると、あっちも首を傾げていた。
もしかして、昔のソフィの知り合い?
けど、セスの話では赤ん坊だったソフィが森で捨てられていたと言っていた。
……どういうことだ?
セスが嘘を言っているようにも思えないし……何がどうなっているんだよ。
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