第147話 バカンス2日目

 翌朝。


 バカンス二日目はピクニックに行く予定だ。

 ただ、今回は護衛騎士がつくこととなった。


 とはいえ、常にべったりだとバカンスのムードがなくなるというサーシャからの訴えにより、護衛騎士たちは少し遠くから見守っている。

 まあ、本来はエルシーがその役割を担っているので、まったく隙だらけというわけではないし、いざとなれば俺たちだって戦えるからそこまで重く考えなくてもいいんじゃないかとは思うけど……それでも、護衛騎士たちにとっては気が気じゃないんだろうな。


 しかし、この辺りはレヴィング家以外にも貴族の別荘がある。

 うちの実家も、確か少し離れた場所にあったはずだ。……俺は行ったことないけど、年に数回、マシューとロレインを連れていったって話は聞いたことがある。


 ……まあ、そんな暗い話はこれくらいにして。

 今回のバカンスはそうした俺の暗い過去を払拭してくれる楽しいものだ。今日のピクニックだって、綺麗な湖近くで過ごす時間が待ち遠しい。


 だが、さすがに何も手を打たないというのもまずいと思ったのか、たったひとりだけ俺たちと行動をともにするための護衛騎士が同行することとなった。


 その人物は、


「今日はお願いね、サブリナ」

「はい。お任せください、サーシャお嬢様」


 緑色の髪をした、若い女性騎士のサブリナさんだった。


 彼女はもともとガインさんがリーダーを務める分団に所属していたらしく、サーシャとは昔からの顔馴染みらしい。そのためか、サーシャの方も護衛騎士というより仲の良い年上の女友だちみたいな感覚で接している節がある。


「ねぇ、サブリナも一緒に楽しみましょうよ」

「いえ、私には職務がありますから」

「その職務って、私たちと一緒に遊ぶことでしょ?」

「ち、違いますよ!」


 ……なんだか、サーシャに遊ばれている感じだな。たくさんの護衛騎士の中から彼女が選ばれた理由というのは、こういう関係性だったからなのか。


 とはいうものの、騎士たちも俺たちからそれほど離れていない位置で待機している。

 視界には入ってこないものの、気配はしっかりと感じられた。

 とりあえず、目に映らない場所からなら、こちらもそれほど気にならずバカンスを楽しめるだろう。


 しばらく歩いていると、目的地である湖に到着。

 その広大さに、俺たちは圧倒された。


「す、凄いな、この湖は……」

「とっても大きい」

「これほどのサイズは見たことないわね」

「う、うん」


 俺もソフィもポルフィもマイロも、ただただ茫然と湖を見つめている。サーシャやエルシーは何度も来ているらしく、慣れたものだが……初見じゃ絶対に戸惑うな。


「あっちの方に良い感じの木陰あるの」

「行きましょう!」


 そんなふたりはすでに絶好のポイントを押さえているらしく、俺たちは早速その場所へと向かうことになった。


 今回は湖で軽く水浴びをしたり、釣りをしたり、辺りを散策したりと、夕方まで楽しむつもりで計画を立てている。


 昨日の件も気がかりではあるけど、楽しめるといいな。

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