第143話 夏の思い出

 レヴィング家のプライベートビーチに舞い降りた四人の女子。


 サーシャとポルフィはビキニスタイルで、エルシーはワンピースタイプ。そして、ソフィはというと……


「ソフィの着ているのって……」

「学園指定の水着」

 

 なぜか誇らしげに語るソフィ。

 でも、これがとても似合っているんだよなぁ。

 もちろん、サーシャたちの水着姿も素晴らしく、目のやり場に困るくらいだ。


「似合っているよ、サーシャ」

「ありがとう、ハーレイ」


 まずはサーシャへきちんと言葉にして伝える。最初はちょっと照れ臭そうにしていたけど、最終的には笑顔で受け入れてくれた。それから、エルシーやポルフィ、そしてソフィにもきちんと伝えておく。


「さ、さすがに正面から褒められると照れますね……」

「ほ、本当に……」

「ハーレイに褒められて嬉しい」

 

 普段あまりこういうことは言わないから、エルシーとポルフィはサーシャと同じように照れていた。一方、ソフィはいつも通りで安心する。

 ちなみに、マイロもみんなの水着を褒めたのだが、


「「「「…………」」」」


 四人はそれ以上に気になっていることがあるようだった。

 ……言いたいことは分かる。

 マイロは見た目が完全に女子――だが、今は男性用水着を着用している。つまり、上半身はむき出しの状態なのだ。


「これは……大丈夫なのかしら?」


迷うサーシャ。

本来であれば何も問題はないのだが……はたから見ていると、そう捉える者はいないだろうな。

まあ、今日はレヴィング家のプライベートビーチってこともあり、他に誰もいないからこのままでも大丈夫だろうという結論に至った。


「そ、そんなに女の子っぽいかなぁ……」

「もうちょっと髪を短くすればいいんじゃない?」

「うぅ……検討してみるよ」


 ポルフィからのアドバイスを受け入れるつもりみたいだな、マイロ。とはいえ、髪型を変えたくらいじゃ根本的な解決にはならなそうだが。


 気を取り直して、俺たちは夏の海を満喫すべく弾けまくった。

 そもそも、海へ来たこと自体がほとんどないから、とても新鮮だ。ポルフィとマイロに至っては完全に初見らしいし、いつもよりずっとテンションが高い。

 おまけに、この辺りの地域は気温が高く、湿度も低いおかげでカラッとしており、暑い割に汗をかかない。


 海水浴をするにはうってつけの気候の中、俺たちは互いに水をかけ合ったり、泳いだり、時には釣りをしたりして海を楽しんだ。


 俺にとっては、まさに夢のような時間だった。

 思えば、同級生とこうして楽しんだことなんて今まで一度もなかったからな。というより、まともに会話した記憶さえほとんどなかった。

 それが、言語スキルを身につけてからガラッと状況が変わったよな。

 父上には、本当に感謝しかないよ。



 遊びに夢中となっていたら、あっという間に空はオレンジ色へ染まっていた。


「も、もうこんな時間か……」


 楽しい時間というのは、本当にすぐすぎてしまうな。


「そろそろ夕食もできている頃でしょうし、今日はもう引き上げましょう」


 サーシャの言葉に全員が返事をして、俺たちは別荘へと戻ることにした。

 真夏のバカンス――そのスタートは最高のものとなった。

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