第139話 夜のひととき
俺たちの前に立ちふさがった意外な強敵……その名も定期試験。
みんなでテスト対策をしてきた成果もあって、その結果は――
「よっしゃ!」
なんとかクリア。
これで夏休みはゆっくりと過ごせそうだ。
――っと、そうだった。
もうひとつ突破しなければならない問題があるんだった。
それを突破すべく、俺は父上の書斎へと向かう。
「失礼します」
「どうかしたのか、ハーレイ」
「実は、ご相談がありまして……」
俺はサーシャから提案を受けていた別荘へ遊びに行く件について報告する。レヴィング家の別荘ということは、あのゾイロ騎士団団長の別荘ということにもなる。その点については心配していないのだが……返ってきた答えは、
「いいぞ。楽しんで来い」
父上はニコッと微笑みながら許可を出してくれた。
「ありがとうございます!」
「ははは、そんなに肩肘張らなくてもいいのに」
「いや、そこはやっぱり……」
「何も気にすることはないさ。私としては、あのハーレイが学園の友人たちと一緒に遊ぶという事実が嬉しくてね」
そう言うと、父上は目頭を押さえた。
……振り返れば、俺がまだ実家にいた頃、マシューやロレインにバカにされ、居場所を失っていた俺へ手を差し伸べてくれたのが今の父上だ。
あの頃も一応学園には通っていたが、サーシャやエルシーたちにはまったく接点がなかったからな。そもそも、誰とも会話をしていなかったような……思い返すと、どうやって学園生活送っていたんだろうな、昔の俺。
ともかく、父上から正式に了承を得ることができた。
これで大手を振って夏休みを楽しめそうだ。
自室へと戻ってきた俺は、早速これからの予定を確認。
とりあえず、二日後に終業式がある。
それが終われば、晴れて夏休みに突入するのだ。
「楽しみすぎるなぁ……」
まだ日程などは話し合っていないが、近いうちに行くことになるだろうとサーシャは語っていた。
あと、俺が夏休みにすべきことは他にもある。
それは――言語スキルの強化だ。
現状、【言霊強化】が俺の中で最強のスキルとなっている。
しかし、発動や威力に関してはまだまだ安定感に欠けていた。これを自在に操れるようになれば、黒騎士のような強敵と対峙しても戦えるはずだ。
意識の変化は、やっぱり昇格試験がきっかけかな。
後期はさすがに露骨な介入はないのだろうけど……その分、多くの学生が積極的に参加する激戦区となりそうだ。
中には後期からの成り上がりを目指し、夏休みに猛特訓する者もいるだろう。
そんな挑戦者たちに負けないよう、俺ももっと鍛錬を積む必要がある。
「バカンスはもちろん楽しみだけど……後期の激しい昇格戦も待ち遠しいな」
目指すはAクラス。
ポルフィやマイロと一緒に、サーシャとエルシーが待つAクラスになんとか昇格したい。
そんな野望を胸に抱きながら、俺は就寝の準備を進める。
……正直、なんか興奮してきて寝付けそうにないが、ここで寝坊して遅刻なんてなったらせっかくのテスト合格をふいにしかねない。
今日はぐっすり寝て、明日はみんなと夏休みの計画を立てないとな。
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