第128話 追いかけた先
試合が終わったヴァネッサを直撃しようと捜し回るが、
「おかしいわね……こっちの方に来たと思うんだけど……」
「姿が見えないね」
ポルフィとマイロのふたりと一緒に追ってきたつもりだったが……完全に見失ってしまったな。――というより、
「なあ……ここってどこだ?」
追いかけるのに夢中となっていたため、周りの景色にまで意識が向いていなかった。そのため、今どこにいるのか分からなくなっていたのだ。
とはいえ、一応は学園の敷地内のはずだ。
遠目には校舎も見える。
で、俺たちの立っている場所からそれほど離れていない地点にも、だいぶ年季の入った校舎らしいものはある。だが、窓ガラスが割れていたり、壁に大きなヒビ割れが入っていたりするので、今では使われていない校舎のようだ。
すると、
「あっ! ここって旧校舎だよ!」
建物を眺めていたマイロが叫ぶ。
旧校舎……そういえば、聞いたことはあるな。
シスター・セイナのいる教会も人は少ないけど、ここはそれとは比較にならないくらい人の気配がないな。
「そういえば、旧校舎って幽霊が出るって噂があったよね。確か、女生徒が失恋をきっかけに屋上から飛び降りて、それから夜になると自分を振った男子生徒を捜して夜な夜な校舎を徘徊しているとか」
「ちょ、ちょっと! やめてよ!」
抗議の声をあげるポルフィ。
本当に幽霊が出るのかどうかは分からないが、出てきてもおかしくはない雰囲気は十分醸しだしているな。しかも、今はこれから暗くなってくる時間帯――幽霊が出る条件は満たしているな。
そんなことを考えながら、何気なく旧校舎二階へ視線を向けた時だった。
「あれ?」
何かを見つけ、思わず声が出た。
「な、何? ハーレイまで私を怖がらせる気?」
「いや、そうじゃなくて……二階に人影が見えた気がしたんだ」
「んなっ!?」
「ハーレイ……それは十分怖くなる情報だよ」
マイロからの忠告を受けてからポルフィへと視線を受けると、驚いた表情のまま固まっていた。
「えっ? そうだった?」
「そりゃ二階に人影が見えたなんて言ったら――ほ、本当に見えたの?」
「あぁ。もしかしたら、ヴァネッサ・ルーガンかもしれない」
「その可能性はあるかもしれないけど……」
ヴァネッサを追ってここまでやってきた。そして、怪しい旧校舎の中で正体不明の人影を発見する。ここまでの情報を整理すれば、その人影がヴァネッサである可能性は非常に高いと思われた。
「ま、待ちなさいよ。まさか……旧校舎に入ろうって言うんじゃないでしょうね?」
「そのつもりだけど?」
「えぇ~……」
物凄く嫌そうに顔を引きつらせるポルフィ。
「それなら、俺とマイロのふたりで様子を見てくるよ」
「ポルフィはここで待っていて」
「えっ?」
怖がるポルフィを強引に連れて行くわけにもいかないので、外で待機をしていてもらおうとしたのだが、
「わ、私も行くわよ!」
結局、三人で校舎の中へ入ることになった。
果たして、ここにヴァネッサはいるのだろうか。
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