第129話 旧校舎の謎

 ヴァネッサ・ルーガンを追っていた俺たちは、その影を追って旧校舎へと足を踏み入れた。


「さすがに荒れ放題だな」

「いろいろと曰くつきだからっていうのもあるんだろうけど……それにしたって、取り壊しもせずに残っているのはちょっと疑問だね」


 俺とマイロは辺りを見回しながら、それぞれの意見を述べていく。

 一方、俺たちの背後にピッタリとくっつくポルフィはそれどころじゃないようだ。


「も、もういいでしょ? そろそろ出ましょうよ」

「まだハーレイが人影を見たっていう場所までついてないよ?」

「そもそも二階だしなぁ、俺が人影を見たのって」

「う、上に行くの!?」


 驚いたような声をあげるポルフィだが……いや、最初から人影を追って旧校舎に入ったんだからそれは当然だろう。


「でも、階段が見当たらないね」

「そうだな――あっ」


 上の階へ向かうために階段を探していた俺たちであったが、


「なんてこった……」


 目の前には階段「だった」ものが。

 どうやら、長年に渡って放置されていたらしく、その結果、木造の階段は壊れ、ただの木片へと変わり果てていた。


「これじゃあ、上に行けないね」

「はい! これでおしまい! 調査続行不可能だから出ましょう!」


 どこか嬉しそうに語っているポルフィ……悪いけど、その希望は叶えてやれそうにないな。


「他に階段はないか、探してみよう」

「そうだね。校舎に階段がひとつだけってことはないだろうし」

「もうあきらめましょうよぉ……」


 項垂れるポルフィをフォローしつつ、俺たちはさらに旧校舎を進んで行く。

足元の床もところどころ壊れて穴が開いているし、ここからはさらに注意していかないと怪我をしそうだ。


 しばらく進むと、ついに行き止まりとなった。


「ここが校舎の最奥部ってわけか」

「あっ! ハーレイ! あそこに階段があるよ!」


 マイロが指さす方向には、確かに階段があった。これで二階へ行けると近づいたのだが、そこで俺はある違和感を覚える。


「うん? これは……」

「ど、どうかしたの、ハーレイ」


 恐る恐る尋ねてくるポルフィに対し、俺はその階段に触れながら感じ取った異変について説明した。


「この階段……よく見ると補強されたあとがある」

「えっ? ――あっ! ホントだ!」


 マイロも気づいたみたいだな。

 薄暗くてよく分からないが、この階段に使用されている木材は床や壁に使用されている物よりもずっと新しい。少なくとも、五年――いや、二、三年の間に補強されたものであると俺は読んだ。


「な、なんで周りはボロボロなのに、階段だけ補強しているのよ」


 ポルフィの素朴な疑問――だが、それは核心をついている。

 外から見れば、ボロボロの旧校舎……いや、そもそも、このボロい旧校舎が取り壊しもされずに残り続けていること自体がおかしいのだ。


 やっぱり……ここには何かある。

 俺はそう確信したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る