第122話 平和(?)な学園生活

 俺とサーシャが学園に戻ってきてからも、生活に大きな変化は起きなかった。

 学園のどこかに潜伏していると思われる黒騎士の存在を警戒したり、昇格試験で戦ったシャルトラン家やライローズ家からの報復があるかもしれないと構えていたが、そのどちらも空振りに終わる。


 そうこうしているうちに、マイロが二度目の昇格試験を突破。

 これで、俺とポルフィとマイロの三人は、晴れてCクラスに顔を揃えることとなり、さらにガインさんも職場へ復帰したとシスター・セイナ経由で教えてもらった。

すべて、黒騎士襲撃事件以前の状態に戻ったのだ。


 ――そんなある日のこと。


「もしかして……私たちが知らないところで、すべて解決しているんじゃないかしら」


 学生食堂でランチを食べていた俺とマイロに、ポルフィがそう尋ねる。ちなみに、サーシャやエルシーといったAクラスの学生たちは前日から泊りで他校との合同演習があるとかで不在だった。


「解決したって……まだ黒幕については何も分かっていない状況じゃないか」

「でも、あれから一ヶ月以上経っているのになんの進展もないのよ? さすがにちょっとおかしくない?」

「気持ちは分からなくないけど、油断はできないよ」

「それはそうだけど……」


 マイロの言葉にたしなめられて、ポルフィはシュンとなる。

 確かに、ガステンさんが監獄へ収容され、情報を聞きだそうとしているらしいが――そこから先の続報は特になかった。


 シスター・セイナは「一切不明」と言うだけ。

 まあ、騎士団の機密事項を協力しているとはいえ一般学生である俺たちにそう簡単に漏らしはしないのだろうけど……せめて、解決したのならその事実は教えてもらいたかった。そうすれば、今日から羽を伸ばして学園生活を満喫できる。


 しかし、それがないということは……あまり進展が見られないということか。


「ハーレイの時みたいに昇格試験での露骨なイカサマもなくなったし……暴露されるのを恐れて貴族たちが学園から手を引いたんじゃないかしら」

「それが一番望ましい形なんだけどね」


 マイロの言う通りだ。

 ガステンさんを監獄へ送ったことで、貴族たちは騎士団がいかに本気であるか理解したはず。地位の高さをひけらかして屈服させようとしているのかもしれないが、ゾイロ騎士団長やガインさんには無意味だろう。


 あと、これはだいぶあとになってから知ったのだが――どうも学園長が交代するらしい。

 詳細な情報はまだ出てきておらず、あくまでも噂の域を出ないが……これが事実だとするなら、これまでの不正に学園長が絡んでいた可能性もある。

 まあ、職員たちの不正を見抜けなかったところで責任問題に問われるかもしれないって話だったけど、まさか自分が加担していたとはって話だろうな。


 その辺の事情もあって、俺たちにはまだ情報を与えられないってことなのかも。


「とにかく、今は俺たちでやれることを精いっぱいやろう」

「やれることといえば、今度のBクラスへの昇格試験はどうするの?」

「それなんだよなぁ……」


 現在Cクラスの俺たちが、上位クラスを目指すなら次に戦うのは当然Bクラスの学生となる――が、このBクラスとCクラスの実力差は相当なものらしい。


「そういえば、今日の授業後にうちのクラスの男子学生がBクラスへの昇格をかけて試験に挑むって聞いたわ」

「なら、応援がてらBクラスの実力をチェックしてみるか」

「それいいね!」


 Bクラスの実力……一体どれほどのものか、この目で確かめてやる。

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