第118話 復活のガイン
ガインさんの病室は二階の角部屋だった。
「おおっ! よく来てくれたな、御両人!」
俺たちを発見するやいなや大声で叫ぶガインさん。
うん。
すこぶる元気そうだ。
「体調の方は――絶好調みたいですね」
「おうよ! 早く剣を振るいたくてうずうずしているぜ!」
「まだ完治したというわけじゃないのだから、無理をしないようにしてくださいね」
「ははは、サーシャにそう言われたら、大人しくしているしかないな」
騎士団長の娘であるサーシャとは、普段もっとお固い感じに話しているけど、ここはプライベートってことでかなり砕けた調子で話している。サーシャもそれを笑顔で受けていることから見ても、普段のふたりの関係が透けて見えるな。
「そういえば……学園職員のガステンという男が、俺と同じ謎の騎士に襲われそうになったらしいな」
さっきまでニコニコと笑顔で話していたガインさんだが、仕事の話になると表情が一変して真面目なものとなる――が、真面目さの中にひと握りほどの悔しさがあるように思えた。
不意を突かれたとのことだが、それでも半ば一方的に痛めつけられたことが未だに尾を引いているのだろう。
「はい。……恐らく、彼をこのまま放置しておくと――」
「おっと、その先は言わなくていいぞ」
ガインさんが急に話を止める。
……まあ、病室とはいえ、どこで誰が聞いているか分からないからな。言葉選びは慎重にしないと。――そういう言語スキルがあれば楽なんだけど。
その後、俺たちは越えのボリュームを下げ、当時の状況を詳しく聞くことに。
要約すると――ガインさん自身、相手には見覚えがなく、皆目見当もつかないらしい。ただひとつ言えることとして、《並外れた剣の腕を持つ》があげられるという。
「あれはかなりの腕前だが……それ以外にも、何か補正されているような感じがした。あのパワーやスピードは、鍛錬を積んだら身につくってレベルを超えている」
「補正?」
「君の言語スキルのように、さ」
なるほど。
相手は俺と同じでスキル使いの可能性が高いってわけか。
言われてみれば、国内でも屈指の実力を誇るガインさんを相手に、普通に戦っていたのでは勝ち目なんてほとんどないだろうからな。何か、戦闘に関するスキルを駆使して追い詰めたと見る方が自然か。
「たとえば、どんなスキルが考えられます?」
「うーん……」
サーシャからの質問に、ガインさんは腕を組んで唸る。
「具体的にこれというのは分からないんだが……考えられるのは身体強化系スキルってところかな」
「やっぱり、そうなりますかね」
パワーやスピードが段違いというなら、真っ先に思い浮かぶのはその身体強化系スキルだろう。
「強さもそうだが、相手の狙いが未知数という点も不気味だ。次に誰が狙われるのか……まったく見当がつかない」
「可能性があるとすれば、ガステンから貴族側の要求を伝えられていた学校職員のうちの誰かになると思います」
「ふむ。素晴らしい分析能力だぞ、ハーレイ」
どうやら、ガインさんも同じ考えだったらしい。
この後も、しばらく事件の真相について語っていたのだが――面会終了の時間となったためにお開きとなった。
……だが、この時、俺やサーシャはまったく気がついていなかった。
まったく別次元の問題が発生しているということに。
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