第116話 戻ってきた日常
翌日。
ガステンさんの暴露により、学園はどのように変化するのか――不安と期待が入り交じる中で、俺は教室へと入る。
……しかし、拍子抜けするほど普段と変わりはなかった。
発覚したのがまだ昨日だからなぁ。
動きがないのは仕方ないのかもしれない。
まかり間違っても、もみ消されることはないだろう。
そうならないために、ゾイロ騎士団長をはじめ、シスター・セイナや多くの騎士たちは貴族からの妨害に対して警戒を強めていたわけだし。
その日の昼休み。
俺とサーシャ、エルシー、ポルフィにマイロといういつものメンバーは、昼食を取りつつ今日これまでを振り返ろうと学園中庭に集まった。
ちなみに、待ち合わせ場所に行ってみると、当たり前のようにソフィの姿もあった。
「ど、どうしてここが分かったんだ、ソフィ」
「ハーレイのことで私に分からないことはない」
親指をグッと立てて語るソフィ。
……大方、シスター・セイナあたりに聞いたのかな。
昨日のこともあるし、さすがにセスは顔を見せていないようだ。
気を取り直して――俺たちはお弁当用のサンドウィッチを食べながら、報告会を始める。
ところが、全員の意見はまったく同じだった。
『異常なし』
まるで、昨日の暴露がなかったかのように、いつもと変わらぬ日々を過ごしているのだ。
ただ、これについて、ゾイロ騎士団長の娘であるサーシャはある見方をしていた。
「貴重な証言を得た今、騎士団は証拠固めに動いているんじゃないかしら」
「証拠固め?」
なるほど。
学園職員であるガステンさんの証言だけでは弱いということか。……まあ、もしかしたら金目当てでありもしない嘘を伝えたって見られる可能性もあるからな。
彼の証言は確たる証拠を掴むためのきっかけ。
言い逃れできないほどの決定的な事実が明るみとなるまでは、あまり事を大きくせずってわけか。
……だけど、そうなると、しばらくは学園の環境に劇的な変化は起きなさそうだな。
――と、思っていたのだが、そんな俺の予想はいい方向で外れることとなる。
次に行われた昇格試験。
俺はポルフィとマイロの昇格を待とうと、Bクラスへ挑む試験はしばらく休むことにした。
その代わり、ふたりがしっかりと昇格できるよう、サーシャやエルシーとも協力して特訓に励んだ。
問題は、俺がロバートやアーニーと戦った時のように不正が行われないかという点のみ。
だが、これは呆気なく解決した。
――そう。
不正はまったく行われなかったのです。
至って公平に、フェアな勝負で昇格試験は実施され、ふたりは順当に勝利を重ねた。
ポルフィは俺と同じCクラスに。
マイロはひとつ上がってDクラスとなった。
ふたりの昇格が決まった日は、みんなでささやかながら祝勝会を開く。
会場はシスター・セイナが教会の一部を貸し出してくれることとなり、ソフィやセスも参加して盛大に行われた。
何もかもが順調に進んだこの一ヶ月。
――だが、俺たちの知らないところで、事態は着実に進行していたのだった。
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