第108話 食堂でのひと時

 翌日。

 俺たちはそれぞれのクラスに散り、昼間は普通に授業を受ける。


 その間も、俺は標的との接触及び情報収集の方法について考えていた。

 ターゲットの名前はガステン・ドーマン。

 数年前から清掃員としてこの学園に勤めているが、前職は騎士団である。彼の役割は、貴族たちからの依頼を彼らの息のかかった教職員たちへ伝える、いわば連絡要員である疑惑がもたれている。


 もし、ガステン・ドーマンが貴族たちとつながっているとしたら、俺の言語スキルで何とか情報を吸い上げたいところだ。

 問題はそれをどうやって実現するか。

 恐らく、向こうもこちらのスキルについては知っているだろう。

 ――とはいえ、そのすべてを知っているかといえば疑問符がつく。


 なぜなら、スキルを覚えてから、この学園ではほとんど戦闘用にしかスキルを発動していなかった。

 ゆえに、ロバート・シャルトランもアーニー・ライローズもしっかり対策を練ってきていたのだ。


 しかし、それ以外のスキルであれば、まだその全容を掴み切れていないのではないか。

 そう考えた時、真っ先に使用を検討したが【嘘看破】である。


 なんとかこいつを利用できないか。 

 そんなことを考えているうちに昼休みとなる。


「なるほど……確かにそれは利用できそうね」


 俺とサーシャにエルシー、さらにはポルフィとマイロを加えた五人は学生食堂に集まって作戦会議を開いていた。


 とはいえ、もちろんバレないように細心の注意は払っている。そのうえで、ガステン・ドーマンにどうやって接触しようか話し合っていた。


「まあ、普通に話しかけるのが手っ取り早いんじゃない?」 


 あまり細かいことを気にしないタイプのポルフィから出たのは、なんともあっさりとした提案であった。


「それはさすがに――」

「意外とその手はありかもしれないわね」

「小細工を要せず真っ向からぶつかる……実に私向きの作戦です!」


 サーシャとエルシーからは絶賛されていた。

 というか、この作戦は言語スキル持ちの俺がやるんだから、エルシー好みかどうかは関係ないんだよなぁ。

 ともかく、この方向で詰めていこうとなった――その時、


「うん? なんだか騒がしくなった?」


 マイロが異変を感じると、その後で俺たちも周囲の学生たちの視線が一部の方向に注がれていることに気がついた。


「何かあったのかしら?」

「みなさん、食堂の入口を見ていますが……」

「あら? 誰かいるみたいよ」


 どうやら、食堂の入口付近に誰かいるらしく、それに全員が視線を奪われているということらしい。

 ――で、その視線を集めていた存在だが……俺たちの良く知る子だった。


「えっ? ソフィ?」


 そこにいたのは修道服を身にまとうソフィだった。


「め、めちゃくちゃ可愛い子じゃないか?」

「修道服を着ているということは新しいシスターなのか?」

「髪も肌も凄く綺麗……」

「あの耳はエルフ族?」


 あっという間に学生食堂の話題をかっさらうソフィ。

 そんなソフィは俺たちを見つけると小走りに近づいてきた。

 本人的には作戦会議へ参加しに来たのだろうけど……これは場所を変えないとダメそうだな。







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