第107話 ターゲット
学園にはびこる闇を一掃するため、騎士団長のゾイロさんや、元騎士で現在は学園内に教会のシスターをしているセイナさんたちと協力体制を取ることにした。
ちなみに、ソフィはシスター見習いとして、セスは教会の裏方作業をこなしつつ、学園内で不穏な動きがないか偵察する斥候兵の役割を果たすこととなった。
一方、俺たち学生側はというと、
「好きに動いてくれ」
――以上。
「す、好きに動いてくれって……」
「言葉のままさ。好きに動いて情報を集め、何か気づいたことがあったら私の知らせてくれたらいい」
なんともザックリとした指示……いや、そもそもこれは指示なのか?
しかし、これにはセイナさんなりの理由があった。
「さっきハーレイが教えてくれた犯人像だけど……正直、騎士団はまだそこまでの情報さえ掴んでいなかった。だから、こちらが下手に指示を出してしまえば、君はそれに縛られて思い切った調査ができないんじゃないかと思ってね」
「な、なるほど……」
一応、理解はできるな。
「そういうわけだから、好きに調べて情報を集めてくれたらいいよ」
「わ、分かりました」
やり方は今まで通りでよし。
俺たちは俺たちのやり方でこの学園を調べられるってわけか。
「こちらも、何か分かったことがあれば報告をする。情報の共有は密にやっていこう」
「はい!」
「それでは早速――ひとつ、君に接触をしてほしい学園職員がいるんだが」
厩舎の馬たちから聞きだした情報のお返しということで、シスター・セイナはここまで騎士団が掴んでいる情報を公開。そのうえで、俺に調べてほしいことがあるという。
シスターは学園職員の名簿を持ってきて、テーブルの上に置く。
その中に記載されている、ひとりの職員名を指さした。
「ガステン・ドーマン……昨年限りで騎士団を退団し、現在はこの学園の清掃員として働いている男だ」
「騎士団を辞めた?」
「厳しい訓練に嫌気がさしたんだろうね。常に己を高めることが求められるのが騎士団という場所だから、それについていけずに挫折する者も少なくはないんだ」
一瞬だけ、シスター・セイナの表情が曇る。
そういえば、シスターも元々は騎士団の人間だったな。大怪我の後遺症が原因となり、不本意な形で退団した彼女にとって、健康体でありながら騎士団を辞める者がいることを歯がゆく思っているのかもしれない。
……気を取り直して。
「そのガステンという人はどんな役割を担っていると?」
「彼は連絡役ではないかという疑惑が浮上している」
「連絡役?」
「貴族たちから、『自分の子どもをなんとかしてほしい』という依頼を受け、それを学園側に伝えている……いわば橋渡しってことだ」
まあ、貴族が直接教職員に依頼するのは何かとまずいから、第三者を経由しているってわけか。
迂闊にボロを出そうとすれば暗殺される運命にある汚れ役……この辺も、何か裏がありそうだな。
「あんたの言語スキルなら……情報をかすめ取れるんじゃない?」
「やってみます」
こうして、俺は騎士団がマークしている学園職員のガステンさんに接触することとなった。
果たして……何が出てくるやら。
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